大河ファンタジー小説『月獅』54 第3幕:第14章「月の民」(3)
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第3幕「迷宮」第14章「月の民」(3)
イヴァンと名乗った男性は低いがよくとおる声で微笑みながら布を差しだすと、奥に消えた。シキが渡された布を手に呆然と佇んでいると、すぐに盆をもって戻って来た。壁際に暖炉がある。その前に木製の大きな卓があり、椅子が六脚ならんでいた。男は盆を卓の上に置くと、暖炉に火をくべる。シキは棒立ちのまま、イヴァンのようすを目で追った。
「捕らわれの身だか