私たちは私たちを知っているようで私たちを知らない。
何かに渇望し、わからない何かを必死に探る。その中で生まれる悩みは他の誰とも分かち合うことができない。どうしたら幸せになれるのか、何が幸せなのか。それは自分自身で感じ、決めなければならない。
大学一年生、人生で一番自由で時間のあるこのタイミングに入学直後から主人公はそのわからない何かに悩まされていた。
そんな時、同じような目をした二人(先輩と黒服)とそれぞれ違う形で出会うことになる。
主人公はまた違った意味で二人を愛していた。
あなたも好きだけど、彼も好きなの。この気持ちは事実であり真実だ。また、何が好意で何が愛かがわからない。悩んでも悩んでも答えは出ない。でも、自分の気持ちに嘘はつくことは良くない。かといって、それは誰かを傷つけることになる。
作中で先輩が主人公に述べたこの言葉がとても響いた。いわゆる共感の念だ。
解決はしないことでも、同じ悩みを持つ人間を知っていること。
それだけで私たちは私たちの在り方を肯定することができる。
それだけで救われる人はこの世界にはたくさんいると思う。
言葉を通して、私もいつかそんなものを書きたい。