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(7/4)「様態それ自体は「在る」ではないが、それなしには「在る」もない」〜スピノザ『知性改善論』ゼミ(@ソトのガクエン)レポート#8

こんにちは、ソトのガクエンの小林です。
先日、7月4日(木)に、佐々木講師によるスピノザ『知性改善論』ゼミ、7月初回が実施されました。7月初回の今回は、これまで読んできた内容についての佐々木さんによるまとめ&参加者の方々からの質疑に応答する回となりました。以下に、佐々木さんの発表をもとに、これまでの簡略なまとめを記しておきます。

「導入」から「方法の第一部」まで
①通常的生や哲学的生か
通常、「bonus」(善)と呼ばれるもの(金、地位、名誉)と哲学的生(最高の善を目的とし追求する)を比べると後者が自分にとって有益だけれども、前者全てを取り除くことはできなかった(どうしよう)。

②二種類の善及び本プロジェクトの規定
(1)精神の治癒、後者を思考する限りにおいては前者(通常善)から自らを引き離すことができた。
(2)通常善は「手段」として節度を持って用いる場合は目的に大いに寄与するし、最高善へ導く「手立て」として役立つ限りで「真の善」と呼ばれる。
(3)より多くの人の人間本性と私の知性と欲望を一致させることがスピノザの幸福であり、これを達成すべく社会を形成し全学を組織立てることがスピノザの企図。
(4)この企ての背骨となる知覚様式と道を保持する論理学の構築。

③哲学的生を保持する生活規則の仮設
知性を正しい道に連れ戻すことに専心しているあいだも、生きねばならない。なので、民衆に合わせて語り、歓楽も健康を保つ程度に享受し、貨幣も同じ程度に求めましょう。

スピノザの場合、悪に見えるもの、哲学にとって「妨害物」に見えるものも、それ自体で悪ではないのだから、真の善に仕立てる努力が好ましいし、これは哲学的生一般の技術である。

私たちは、いつ哲学の探究に入ったのか、いつ出たのか分からないけれど、スピノザによれば、人が「哲学者へと生成」するためには、民衆の言葉を用いることが要求されるし、民衆の習俗(ハロウィンなど)に親しむことが要求される。そして、これらに親しむために適した身体と、その身体を作り続ける技術(医学)と、貨幣(気体と物体の交換)が必要であるとスピノザは考えます。佐々木さんは、ここでミシェル・セールの『パラジット』に言及し、最初の職業が食客であると言われるように、哲学者は言葉(気体)と貨幣(物体)を交換して生きる者であるという点が、スピノザの面白い点であると指摘されていました。

④知覚様式の分類
(1)伝聞や恣意的記号からの知覚(誕生日や両親)
(2)漠然とした経験(とその習慣)からの知覚(人は死ぬ、犬が吠える)
(3)事物の本質が別の事物から結論される場合の知覚
結果から原因が推論されたとき(この身体の感覚から魂と身体の合一を推論する。)任意の特質を伴う普遍物から結論されるとき(目の本性から太陽の大きさを推論する)。
(4)事物がその本質のみを介して、あるいはその最近原因の認識を介して知覚される場合。

⑤知覚様式の選別
⑥知的探究の道・生得の道具・真の道具
⑦最も完全な方法とその効果

⑧想定読者への応答まとめ


さて、参加者の方々からの質問から幾つかをピックアップすると、スピノザ哲学の多元性と汎神論について、真の観念があることと真の観念を持つことの違い、真の観念は各人で違うのか同じなのか、子供が物を見なくとも観念を持つとき、それは知性と言えるのかなどが疑問点として挙げられ、これに佐々木さんが、ひとつひとつ丁寧に答えられていました。


今回の最後に、様態「mudus」(様式・仕方)について、佐々木さんが考えていることについて紹介されていました。様態それ自体は「在る」ではないが、それなしには「在る」もないのが様態である。「存在は様態を纏う」。人が誰かと対立するのは「仕方」の相反であるし(話し方、聞き方、考え方etc…)、逆に、さまざまな「仕方」を学ぶと同時に、共生の「仕方」を獲得しつつ、一つの特異的な存在の仕方を身をもって洗練させていくこと(フーコー「生存の美学」)が重要だという話をされていました。

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次回は、7月11日(木)です。次回は、『知性改善論』(講談社学術文庫)48ページから読み進めていきます。
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