Darkhorse.Pub

キックボクサーとして闘っていました。 今は広告会社で働いています。

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最近の記事

東西日本のはじまり

米露の緊張に挟まれ、経済的にも地理的にも危険極まりない日本。 モノ言えぬ政府は、新たなカリスマの登場を渇望していた。 とはいえ、国内で程度の低いいざこざを繰り返す政治家たち。 どの党がカリスマを排出できるのか? そんな中で(他よりは)柔軟な思想を持つ党は、弁がたち、得意分野を持ち、熱烈なファンを持つYoutuberに目を付けた。 お経を聞くかのような退屈な政見放送。 中学生さえ失笑する滑稽なヤジや牛歩戦術。 危険極まりないうえに、それほどの意味のない街頭演説。 脂ぎった

    • サブスクリプ婚

      恋愛相手を定期契約するサービスが誕生した。 少子高齢化に悩む政府は、”婚活協議会”を立ち上げ、若者が恋愛しない理由を調査。定番の「経済的負担」や「メリットの少なさ」に加えて、課題が浮き彫りにされた。 “出会いの少なさ” この課題を踏まえた上で目標を「少子化対策」に置く政府は、議論の末に新たな法案を可決した。その名も、 “サブスクリプ婚” 具体的には、 「恋愛関係を予め選んだ契約期間とし、適時延長を協議すること」。 これにより適齢期の国民は多くの異性との出会いを創出さ

      • ミサイル

        夜7時、テレビを囲む一家。 ペナントレースの最中、父は推し球団の不振に機嫌が悪い。 なら見なきゃいいのに、打たれた投手にやれ「バカたれ」など威勢がいい。 二死満塁で主砲が登場。一打逆転! という瞬間、飛び込むニュース速報。 野球に飽きていた息子が画面を見やる。 その顔には台風の時と同じような、不安とワクワクが同居する。 「日本海に弾道ミサイルが発射されました。N国のものとみられます」。 ほのかな期待を裏切られ、「またか」とばかりに面白くない息子。 いっさい気に留めない父

        • ビジネス

          昼は企業の部長と派遣デスク。 夜はおっパブ嬢と常連客という間柄の二人。 その関係は、次世代のビジネススタイルだった。 <本文> 新たなビジネスを生み出そうと模索する企業、A社での話。 派遣女子社員B と、やり手のC部長。 オフィスでは平然と業務にあたる。 業務内容は、上役に部内の営業収支と改善策を報告する資料の作成。 親会社でお役御免となり、天下った役員連中からの、暇つぶしがてらの難癖を回避するために作業を繰り返す。地雷除去のように。 Bは二年半の経験でツボをおさ

        東西日本のはじまり

          パスワード

          不用意な発言や言葉の暴力による事件の多発。コンプライアンスの高まりを受けて、会話にパスワード入力が義務付けられた。 <本文> PW入力:0801 「・・・ってことで、・・したんですわ。」 PW入力:1067 「なんでやねん。」 PW入力:0801 1067 「どぅも、ありがとうございましたー。」 義務付けられた「発言のPWロック制度」により、ボケとツッコミの間を遮られ、漫才のライブ鑑賞は激減した。 饒舌な政治家が不用意な発言で顰蹙を買い、リポーターに追い回される。 人

          パスワード

          リング・リング

          昼は会社員、夜はキックボクサーの男 「手ぇだせ!」「ビビんじゃねぇよ。」 客席から、セコンドから、容赦ないヤジが飛ぶ。 「うるせぇ、お前がやれよ。」 息があがる。体の酸素が薄まり、力が入らない。 回る回る、リングを回る。 リーチのある奴は、中央に陣取って圧をかける。 真正面から前に出ると、長いパンチを食らう。 動いて、ジャブで切り込むタイミングを探る。 ロープを背にすると疲れる。自分の呼吸を忘れ、相手に呑まれる。 回る回る、社会を回る。 金を回して食い扶持をつくり、社

          リング・リング

          エコバック

          高層マンションの5階に、私は妻と住んでいる。 医師という職業のわりには高尚とも言い難い我が家だが、勤務医の私にしては奮発したはずだ。それでも、高層階と低層階という比較対象があると、ヒエラルキーをめぐるマウントの取り合いが生じるのも、人の心理として否めない。 ジェンダーレスが叫ばれる昨今だが、未だ「妻は家で家庭を守る」という観念が払しょくできていない。別の視点で見ると、いわゆる富裕層ほど妻は家庭に入ることを望み、雇用機会均等を叫ぶのは中間層に多いように思える。 妻とは飲み会

          エコバック

          ドライブ

          “貧乏旅行”すら想像できない学生なので、休日はだいたいアルバイト。割のいいのは日当の出る現場仕事で、引っ越しの助手がおいらの“定職”だった。 朝6時半に事務所に行くと、仕事前のドライバー達が円卓を囲んでワイワイと、「昨日のパチンコはどうだった」だのなんだの。 体で稼ぐ彼らは揃って体格がよく、作業服がよく似合う。その片隅でおいらを含めたバイト連中が肩身狭そうに作業服に着替え、今日どのドライバーにつくかシフトを見ては、安堵したり落胆したり。 この組み合わせがその一日を決める。

          スカイ・ハイ

          世間の目が冷たいのが、ウチの会社の定番。 サラリーマンには上々の待遇と、国をも動かす(?)とされる謎の政治力。 芸能人との交友や、政財界のボンボンのコネ入社。 24時間働くアグレッシブ、裏返すとブラックなイメージの実態は、そのほとんどが下請けの苦行によって成り立っている。 その子会社ともなると、プライドと劣等感がブレンドされる。似たような環境に育ち、学校も同じだった者が、片や一流・片や二流の人生を約束された何とも言えない闇に包まれている。 田舎から、勉強もせずにアルバイト

          スカイ・ハイ

          クラウド

          クリック一つで買い物ができる 初対面でも、共通の趣味を楽しめる。 外出しなくても、料理を届けてくれる。 個人情報を入力せずに、コミュニティに入れる。 若者に負けるかと、変なダンスを世界に披露できる。 怪しい集団が、「オレオレ詐欺」で、進化に遅れた老人を食い物にした。 善良たる企業が、老眼には見えず、現役世代には見る暇のない長い約款を 「次へ進む」でパスさせて罠にはめ、骨までしゃぶりつくす。 パスワードは随時更新を求められ、1人につき、3つも5つもあり、 加入した覚えのない

          Chat GPT

          「〇〇が▲▲と□□したら?」 〇〇 (スペース) ▲▲ (スペース) □□ (スペース) ? 「って、検索しただけで ? の部分が出てくればいいのにな…」 「それじゃ俺たちのいる意味がねぇだろ。ものごとを多角的に分析し、予測するのが我々の存在意義だ」 国内最先端のコンサルティングファーム「MSM(モ・シ・モ)」の研究室。まだ少年の面影が残るエリート研究員AとBは、リテラシーの高さを誇りながらも、しばしば予測通りにいかない未来に辛酸を舐める日々を送っていた。 世界中の情

          確定申告

          今朝も妻と小競り合い。 理由は特に無い。寝起きが悪いとネガティブな方に目が行く。 長い二人暮らし。他にあたるところも無く、結果、妻のアラを探す。 「朝はパンがいい」だの「最近太ったな」だの。 「行ってきます」の挨拶もここ10年無く、無言で会社に向かう。 “なんでアイツと一緒になったんだろう?” 電車に揺られながら、つらつらと考える。 よくよく思い出しても、理由が見つからない。 出社すると、ショートカットで若くて可愛い後輩や、最近メイクを変えて美貌の増した同期の独身社員が。