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ビジネスⅡ

最期にコメを食べたのは、コロナ前の5年程前だったろうか?
当時、私の体重は83㎏もあり、170程の身長には明らかに太りすぎだった。

ボディメイク雑誌の定番”ザ-タン”には、
「引き締めボディのモデルは、NO!ライス生活」やら、
お昼の情報番組では、コメを食べることの愚かさ。
「日本人の5頭身はコメ食が元凶」やら、まるで戦犯扱いであった。
ところがそれを鵜呑みにし、試してみた”感度高めの人々”に、大した変化は見られなかった。

コメ抜きブームが過ぎたころ、ライフスタイル雑誌”パポイ”では、
「意外と高い、野菜ジュースのカロリー」として特集。
飲料メーカーとのタイアップで、小太りのお笑いタレントが
♪ビックラこいた、ビックラこいーたー
と歌うCMは未だに聞き覚えのあるほど大量にオンエアされた。

野菜ジュース抜きダイエットも去りゆき、夜のバラエティ番組ではしきりに
「NASAが開発した、完全栄養食」をモノ知りげに報道。
宇宙飛行士が長期間、宇宙に滞在しても太らない最先端の成分をアピール。
もはや、ダイエットは普及のビジネスとなった。

さすがに値が張るので、もっと簡単な痩身法を生み出したのは、”ミツケン”に代表される、酢のメーカー。忙しい社会人にも、食事に酢をひとかけするだけで、痩せられる。乗せられやすい多くの人々は、
「ちょっと酸っぱすぎ。でも健康管理ってこういうことよね」。
としばらくブームは続いた。

一連のダイエット方が浸透しては消えていったあとで、近年声高に叫ばれるのが、”コメ食ダイエット”。
コメには必要な栄養素が多く含まれており、昔の飛脚たちがコメとタクアンだけで何百キロもの道のりを走破したのはこれが原因である、と、やや栄養失調気味だが確かに無駄な肉の無い飛脚たちの写真を世に出したのは、節操が無いと、普通の人なら気づくだろう。

コメに始まり、コメに帰結したダイエット&健康法。
消費者センターには、「なに試しても効かないじゃないか」!とクレームが止まないので、オペレーターの人件費削減のために、チャットポットを用いて苦情を自動処理。
「お客様、いかがされましたか」?
「結局、どんなダイエットが効果がありますか」?
「お客様、どの方法でも継続すれば効果はお約束できます」
「じゃ、その継続する方法を教えてくれ」!
「はい。そのような反響にお応えしまして、当社が開発したのが、
"体重管理アプリ"でございまして、既に全世界でご好評を頂いております」。
「それいくらすんの」?
「お客様、このお電話でご契約いただけますと、300円でインストールが可能です」。
「ほう、安いね。では一つ頂こうか?」
「かしこまりました。それではアプリショップから"エンドレスビジネス"をDL下さいませ」。
「アプリだけでダイエットできるとは、進んでいるね」。
「お客様、アプリの表示を見ながら、食生活と運動を管理するのが主な機能でございます」。
「なんだ、サギじゃねぇか」!
「いいえ、お客様。終わりのないビジネスでございます」。

おわり

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