見出し画像

「演劇の稽古」と「時間効率」の話

所属劇団「BQMAP」が本当に久々の有観客公演を来月に行います。

私自身も有観客の舞台は1年半ぶりです。

まだ時世は落ち着いてないとはいえ、大手を振ってというタイミングではないとはいえ、本当に長い間待っていました。

無観客での配信公演がほぼ1年前。そこから1年ぶりに合うメンバー。

でも会ってもすぐいつもの感じに戻れる、これは長年続いている劇団だからなのかもしれません。

「ああ、本当にホームって素敵だなあ」

なんて思っていたらウォーミングアップで滑舌がエグいくらい悪くなっていました。

ここ最近よく思う。「継続は力なり」。マジで。


さて、BQMAPの稽古ですが、だいたい稽古期間前半の方はウォーミングアップに1時間くらいかけます。

体操20分、発声20分、体を動かすゲーム・レクリエーション20分が大体の内容です。

感染対策もあってあまり激しい運動は出来ませんが、少しずつ体を演劇の体に向けていきいます。

で、そこから稽古が始まるのですが、進むペースはとてもゆっくりです。

昨日の稽古は役者3人だけ稽古場に来て、2シーン合計3分足らずの場面を2時間ずっとやってました。

で、これだけやって改善されるところって本当に「ちょびっと」なんです。

この稽古の時間の使い方は、今の社会での効率的な考えすると全く反する非効率的なやり方です。

でもそれが、演劇の稽古だなと思うことが最近よくあります。


一般社会における「二・八の法則」というのはこと演劇に関しても当てはまります。

演劇の稽古って、トータル稽古時間の2割で全体の8割くらいのクオリティはもうできるんです。

逆に残りの8割の時間を使って出来上がるのが2割のクオリティ。

これ、効率から考えると超非効率です。

だって、最初のうちは総稽古時間の1割で上がるクオリティは40%あるのに対し、

後半の総稽古時間の1割で上がるクオリティはたった2.5%しかないのです。

一般のビジネスであれば同じ時間をかけてこれだけの差があるなら後半は切ってしまいます。

で、残りの8割の時間を使って別のプロジェクトを始めたりクリエイトを始めたりするわけです。まあ当たり前っちゃあ当たり前。

その方がより多くの物事が進むし、ビジネス・経営から考えれば2割の時間を使って8割クオリティのものが5つできた方がいいに決まってます。


でも、演劇は違います。

演劇は残りの2割を埋めて初めて作品が完成するからです。

人の心を動かすのが芸術であるならば、そこを疎かにしては絶対にいけません。

芸術のジャンルは多岐にわたりますが、絵画・音楽・歌・演劇・映画・写真など、拘りにこだわりぬいたものが初めて「人の心を揺さぶる挑戦権」を得るものだと思っています。

これは断言していいのですが、

8割の芸術で人の心は動きません。


勿論演劇は興行ですから間に合わなければ意味がないですが、最近よくある何でもかんでも効率を考えて、というのを演劇の分野に入れるのにはちょっと考えてしまいます。

(※あ、時間をかけて「ムダな」稽古をするのを省みて稽古効率をアップするのは賛成です)


数年前のBQのとある公演での稽古。

稽古日数もいよいよ残り10日を切る中で、台本・演出・役者が完全にぶつかったときがありました。(喧嘩ではなく、伸びが止まったという意味です)

そこで稽古スタートである昼の時間から主宰と先輩役者が台本の考察。

私ではついていけない深いところで絡まっている紐をゆっくり解く緻密な作業。

で、考察が終わったときには退館時間でした

この日芝居をした役者はゼロです。


これ、普通に考えたら超非効率ですね。でも文句ないんです。

だって翌日、紐解かれ改訂された台本は確実に面白くなり、皆一気に進んだからです。


BQMAPは、1割で2.5%を上げることに一切の躊躇いはありません。

ここが、私がBQMAPで芝居をする大きな理由の一つです。

先輩方にはまだまだ差があるし、後輩たちを引っ張れる存在になっているかというとそれも疑問ですが、それでも人の心を揺さぶる挑戦権を得るために今日も台本を読み、稽古で模索します。


10月、シアター風姿花伝で、心を揺さぶられてみませんか?

メンバー一同、心よりお待ちしています。


公演詳細は↓から



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?