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家族とは

「ありがとう!」
という言葉にこんなに深く苦しい気持ちになるなんて、思ってもなかった。



恋人のご兄弟に子どもが生まれた。それはとても嬉しい。他人である私でもこれほど嬉しいので、恋人の喜びは桁違いだと思う。

写真を見せてもらう度に私は「かわいいね!」と心から思い、それを恋人に伝える。
恋人は「ありがとう!」と答える。その瞬間、私の心には靄がかかったような気持ちになってしまった。

数年一緒に過ごしてきた人で、この数年は実家の家族より濃い時間を過ごしてきた人だ。現段階では"他人"にカテゴライズされる関係ではあるが、私は彼に対して家族のような安心感と愛情を抱いている。
すっかり私と恋人は家族のようなものだと思い込んでいたが、そうではない現実を突きつけられたようだ。

恋人とご兄弟のお子さんは血縁関係にあって、私はそうではない。もし今後親戚関係になることがあったとしても、その事実は変わらない。
そうならば「ありがとう」と恋人が答えることに関しては何の間違いもないのだけれど。

私は、"私と恋人 というグループがあって、ご兄弟とそのご家族というグループがある"というような感覚をもっていた。

そのため、違和感だったり虚しさだったりを感じたのだと思う。
恋人は、私の傍にいてくれて私と同じ目線だと思っていた。私がひとりでぽつんと取り残されたようで虚しい、寂しい。

自分の心の複雑さを実感した出来事だった。

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