言葉を真に受けるのは真面目で素直だから…発達障害の困りごと
発達障害がある人のなかには、相手の言葉を真に受けるクセがあって、困っている人がいます。私もわりとその傾向が強いです。
人の言葉に裏表があるなんて1ミリも思わずに、そのまま受け取ってしまうのは、ある意味とても真面目です。でも、真面目であればあるほど、複雑な世の中で生きていくのが難しくなります。
ここでは、自閉症スペクトラム(ASD)当事者の私が、言葉を額面通りに受け取ってしまう特性について語っていきます。
でらためな言葉をスルーできない
発達障害を持つ人が誰かの言葉をそのまま受け取るとき、脳の中はどのような感じなのか。まずはそれを体感していただきたいので、ちょっとした実験を用意しました。
ためしに以下の文章を読んでみてください。
どうですか?ちゃんと読めましたか?人間の脳は、文字の最初と最後さえ合っていれば、間の文字の順番がめちゃくちゃでも読めてしまうそうです。これはタイポグリセミア現象と呼ばれています。
この文章は、2003年9月にインターネット上で出回りました。ケンブリッジ大学でこのような研究が行われたことはありません。いわゆる都市伝説です。
正しい文章は、以下の通りになります。
私は発達障害児の親の会を見学させていただいたときに、主催者の方からこの文章を見せてもらいました。
「定型発達者は文字の順番がでたらめでも、ちゃんと読めてしまうでしょう?でも、発達障害のある子どものなかには、文字が書かれている通りに、そのまま読んでしまう子もいるんです」
主催者の方が、そう紹介してくださったのが印象的でした。
普通の人の脳ならスルーしてしまいそうな、でたらめな言葉を、スルーできなくて困っている人もいます。この脳の感覚、何となく想像できたでしょうか?
発達障害ゆえに言葉の意味をそのまま受け取ってしまう?
さて、話を本題に戻しますね。発達障害がある人のなかには、相手の言葉を脳で都合よくスルーすることができずに、問題を抱えてしまう人がいます。
たとえば、誰かが話した言葉に表と裏があった場合、ふつうの人は「あー、建前ではこう言っているけれど、本音ではこう思っているのね」と、何となく察知できます。
ところが、当事者は言葉に表と裏があることに、なかなか気づけません。「この人はこう思っているんだ!」と、言葉をそのままストレートに受け止めてしまいます。
それはあたかも、言葉の順番がめちゃくちゃな文章を見ても、脳で正しい意味に変換できずに、そのまま読んでしまうのと似ています。
発達障害のある人が言葉を額面通りに受け取ってしまうことから、周りの人や当事者自身がストレスを感じてしまうこともあります。それぞれのケースを例示してみますね。
1.周りの人がストレスを感じるケース
ASD当事者のAさんに、職場の同僚のBさんが笑顔で話しかけます。
「Aさんはのんびり仕事ができていいよね」と。
Bさんは「Aさんに早く仕事を片づけてほしい」と本音では思っていて、決して「Aさんはのんびりできて素晴らしい」とは感じていません。
ところがAさんが「はい!のんびりできていいです!」と、真顔で答えてしまったら……Bさんのイライラがさらに募るのは、言うまでもありません。
2.当事者がストレスを感じるケース
ASD当事者のCさんに、職場の同僚のDさんがイライラしながら話しかけます。
「忙しくて本当に嫌になる」と。
Dさんが忙しいのは単純に業務量が多いからであって、決してCさんの責任ではありません。
ところがCさんは自分が話しかけられたことから、「私のせいで忙しいんだ!」と勘違いしてしまいます。
まとめ
発達障害がある人のなかには、相手の言葉の意味をそのまま受け取ってしまい、悩みを抱え込んでしまう人がいます。
これは真面目すぎるゆえに起こること!
決して悪気はありません!
このことは声を大にして主張したいです。
当事者に対して周りの人は、なるべくオブラートに包んだ言葉は使わず、より具体的な言葉をかけるといいでしょう。
当事者自身は、人の言葉には表と裏があることを知っておいただけでも、楽になるかもしれません。
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