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ある日突然もう一人の妻が現れたら...(7)

今日はクリスマスイブ。
娘が一年間で誕生日の次に楽しみにしている日だ。
娘の希望のプレゼントは贈れないけど、娘の喜ぶ顔が早く見たい。

パートの帰りにおもちゃ売り場で、赤ちゃんのお世話ができる人形を
選んだ。
髪を濡らすと色が変わる人形だ。
私も子どものとき、よくこの人形で遊んだ。

クリスマスプレゼント用のラッピングをしてもらい、それをリュックの
中に隠した。
今日の夜、娘が寝たらプレゼントを枕元に置く予定だ。
それまでは、この人形の存在を知られてはいけない。

保育園に迎えに行くと「きょうサンタさんがくるひだよ!」
「みんなのおうちにも、くるかなあ?」と先生と話していた。
「みんないい子にしてたから、お家にもサンタさんきっと来てくれるよ!」
と先生が笑顔で言った。

保育園でもクリスマス会が開かれ、娘はとても嬉しそうだった。
「エミちゃん、ジングルベルの歌がとっても上手でした!」と先生が話してくれた。
「楽しかったんだと思います。ありがとうございました。」とお礼を言い、保育園を後にした。

帰り道、「ほいくえんにサンタさんきたんだよ!」
「そうなの!?どんな感じだった?」
「おひげがはえててねー、おかしをくれたよ!」

「良かったね!どんなお菓子くれたのかな。」と言い、娘のリュックを
覗くと、袋の中に飴やラムネ、マシュマロなどが入っていた。
「おてがみかいたけど、サンタさんよんでくれてるかな?」
「読んでると思うよ!サンタさんはいっぱいいて、保育園に来たサンタ
さんとは違うサンタさんが寝てるときに来てくれるよ。」

「そうなんだ!たのしみだなあ。」と、娘の目が輝いていた。
家に着いてからはいつものように、夕飯の準備をし娘とお風呂に入った。
18時過ぎに夫が帰ってきたので、みんなで夕食を食べた。

娘が保育園のクリスマス会のことを話してくれて、楽しい夕食だった。
「明日はクリスマスだから、みんなでどこかに出掛ける?」と言うと、
夫が「ごめん、明日も仕事なんだ。」と言った。

夫は最近、大口の注文を受注したからと土曜日も出勤することが増えた。
2人目のために、夫は仕事の量を増やし頑張ってくれていた。
夫はやると決めたら、すぐに行動にうつすタイプの人間だ。

「じゃあ、明日はお母さんと2人でケーキとチキンでも買いに行こうか。」
「わーい!ケーキ、ケーキ!」と娘が喜んだ。
夫が「いいね〜!楽しみだなあ。」と言った。

夜、寝る時間になった。
娘はサンタさんが来るのが楽しみで、興奮して寝れないようだ。
「サンタさんは、寝ている子のところにしか来てくれないんだよ。」と
夫が言うと、「じゃあ、はやくねなくちゃ!」と言って羊を数え始めた。

トントンしてあげると、68匹のところで眠りについた。
「本当に寝てるかなー?」と小声で声を掛けると、娘のスースーという
寝息が聞こえた。
「興奮してたわりには、すぐ寝たね。」と夫が笑った。

娘が寝たのを確認して、私はリュックの中から人形の入った袋を取り出した。
そして、それを静かに枕元に置いた。
娘が起きてからどんな反応をするか、とても楽しみだった。

#創作大賞2023


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