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そして、みんなクレイジーになっていく

ガルシアマルケスの「百年の孤独」が文庫化されて大騒ぎになってるけど、そんなことよりビルブリュースター「そして、みんなクレイジーになっていく」を文庫化、しなくてもいいから再販して欲しいぞ。とんでもない値段で取引されててまったく手が出ない。という訳でまた無性に読みたくなってしまったので、このレアな書籍を所有している好事家の友人から再び(2度目)貸してもらった。
DJの歴史をそれこそラジオ草創期から丁寧に紐解くこの書籍の素晴らしさは、人づてに聞いた話や参考文献を著者の直感や憶測で繋ぎ合わせたような出鱈目なものではなく、当事者や関係者に直接問い合わせた凄まじい量のインタビューを元にしている点にある。いわばDJという文化を人類学的に調査し考察した対象を未開民族からDJに置き換えたDJ版「野生の思考」とも言える。ついでに「野生の思考」も文庫化して欲しいぞ。ちなみに難解な構造主義は一切出てこないので安心して欲しい。
というのも前読んだ時の感動や記憶が印象としては残ってるんだけど、内容をさっぱり覚えてなくて初めて読んだ時のようなワクワクを今回も楽しんでいる。この休みの間にちょろっとだけ読み進めてようやく初めて人前で2台のレコードプレーヤーを使って演奏するDJの章まで到達した次第。
この本の著者ビルブリュースターは作家でもあり、自らDJを行う凄腕のDJでもある。そのため界隈への親和性・理解力の高さも筆致に表れていて、現場の空気感や臨場感がいちいち生々しい。またさすがDJだけあって人々の記録(レコード)を素材として物語を紡いでいく(ミックス)構成力には目を見張るものがある。

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