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環世界について-第一章-

前回ユキュルスルという生物学者が提唱する環世界という概念について説明した。この終章においてはその考え方を人間に適用した場合に顕著となる特徴的な悩みについて考えたい。
その悩みとは退屈さである。高度な環世界移動能力を備えた人間はそれゆえに単一の環世界だけに閉じこもって過ごすことに耐えられない。一つの事柄に従時してる時ですら他のことを考えたり集中できず、現状に漠然とした退屈さを覚える。この仕事を一刻も早く終わらせて出かけたい。この用事を済ませたら食事を取ろう。食事を終えたら煙草を一服しよう。この本を読み終えたらあの本を、この女と別れたらあの女と、意識は次々移ろっていく。とにかく移住生活をベースにした生存戦略を組み立てたホモサピエンス達はそのような進化を選び取ったのだ。
退屈さに翻弄され現状に満足しないままつまみ食い的に行われる一連の行動は消費の構造にとって都合が良かった。というより資本主義に根ざした消費社会がそうした人間の習性を巧みに利用してデザインされたものなので当たり前なのだが。
考える暇も与えないほど次々に生み出される新製品や新食品、映画やドラマ、小説や音楽、漫画にアニメ、ファッション、健康、思想、トレンドチェックに夢中になる人々から巻き上げられるのはお金と時間だけではない。我々は知らずのうちに思考する自由を奪われこの消費の流れに無意識に乗っかってしまっているかもしれない。頭突く。

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