旅行の計画
昨日旅行の計画を立てていると書いたが、
その旅行の目的地の一つに、「ナコ」という場所がある。
名前が似ているから、という単純な理由だけで訪れたいと思っているのではない。
ナコ僧院という古い僧院の壁画の一つに、
二十年前にハッとしたことがある。
古い写真集をチベット公立図書館で見て、一目で『何か見たことあるぞ』と思った。撮影場所を見ると、「ナコ僧院」と記されていた。
一緒に緑色の美しい湖の写真が掲載されていて、当時、魂的に訪れたいところを探していたスピリチュアルに燃える筆者は、『行くならここ!』と決断したのであるが、
場所を見ると全然知らない遥か彼方の地方であるように感じ、行き方すら分からなかったので、断念したのである。
しばらくの間、冬の長期休暇以外は遠出が難しい状態だったし、
冬は豪雪で行き来が断たれる地方には知人もおらず、訪れることはなかった。
ナコ村は標高三六六二メートルで、チベットとの国境近く。
夏でも寒そうな高地である。
心が惹かれた写真は、僧院の中の壁画の一つ。
ターラー母尊という女神の壁画である。
リアルな描写ではなく、楕円を描くような曲線を組み合わせて描かれた像で、古い時代の画風である。
最近久しぶりにその写真をインスタグラムで見て、自分用に写メした。
現地に行って写真を見せて、ご本人の前まで案内してもらおうという算段である。
理屈で考えれば理由は見つからないけれど、何故だか非常に惹かれる、ということは時々ある。
見たことがないはずなのに、見たことがあるような気がする、ということもあるだろう。
以前なら、そんな感覚があっても気のせいだと却下していたし、
授業や先生方との折り合いで外出を控えていたのだが、
今回の感染症イベントで『今のうちにやれることやっとこう』という気分になってきた。
別に捨て鉢になっているわけではないが、ブレーキが少し緩くなってきたのかもしれない。
地上光の少ない場所で満天の星空を見ながらUFOを探すことが一つ。
何故か惹かれるナコの女神に会いに行くことが一つ。
更に内緒のもう一つの理由があって、今回の旅行を決めた。
しかし、素晴らしいことには障害がつきもの。
今日になって、ヒマ―チャル・プラデシュ州内外で長距離移動する公共交通機関では、PCR検査陰性証明か、ワクチン接種済み証明の提示が必要になるとのお達しが出た。
州境が開いて州外の観光客が押しかけ、陽性者が増えたからだろう。
ダラムサラのあるカングラ地区から温泉町のあるマナリ、山のあるスピティ、キノール方面へ移動する場合にも、バスに乗る時には証明の提示が必要になるらしい。
検査をすれば良いだけの話であるが、自分の周りに病人がいないのに病気を怖れるという姿勢が、筆者にはどうも納得がいかない。
反骨精神溢れるわたくしなのである。
一九九九年に仕事を辞めてインドに来た時も、
『お釈迦様は二十九歳で出家したのだ』と、
当時二十九歳だった筆者は『今を逃したらもうチャンスはない』と思ってこの場所にやって来た。
世の中の情勢を見てつらつら考えるに、今回の旅行も『今を逃したらもうチャンスはない』ほどではないにしても、遠出するきっかけを得るにはしばらく待たなければならないだろう。
というわけで、行く前から情報の錯綜から波乱万丈な二十年越しの旅行の計画は、さあどうなるか。
実際のところは、頭で考えるほど難しいことは無いかもしれない。
結構何とかなるもんである。
準備はしておいて、
「考えるより行動する」
というところかな。
DECHEN
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