ずっと好きです、悟

―――ずっとこわかった、告白したらこの関係性が崩れちゃうんじゃないかって―――

私「さとる~~~! もう遅刻するよ!」
悟「わぁってるよ! うるせんだよ!」
 私の名前は宍戸恋。呪術高専に通う高校一年生だ。そして彼の名前は五条悟。同じく高専の一年生。私たちは幼馴染みだ。
私「あ、さとる先行かないでよ、足速いよ」
悟「恋が遅いんだろ~っ」
 足の長い彼に追い付けない私。
悟「おれなんか放っておいて先に行けっつってんだろ」
 悟はポケットに手を突っ込んで唇を尖らせる。何も分かってない。私には寝坊助の彼と一緒に登校する理由があるのに。
 それは小さい頃からずーっと彼に片思いしてるってこと。
 でも鈍感な彼はそんなことぜんぜん気付かない。
私「私が起こさないと悟はいっつも遅刻するでしょ! それにさ、今日は終業式じゃん。もうしばらく会えなくなるし……」
悟「あん? なんか言ったか?」
私「なんでもない!」
 滑り込みセーフでチャイムぎりぎり。この瞬間が幸せだってこの時私は気付いていなかったんだ。
お調子者「おっ、ごじょれんカップル今日も熱いねぇ〜!」
私&悟「カップルじゃない!」
 毎朝こうやってからかわれる。別に付き合ってないんだけど、クラス公認のカップルってやつ。呪力をたくさん持ってる彼は体育の成績かすごくて足が速い。私は鈍臭いからぜんぜんお似合いじゃないんだけど。
悟「ちっ。こいつはただの幼馴染みだっつってんだろ」
私「そうだよ、それだけの関係なんだから」
 悟のうざそうな横顔に胸がチクリと痛む。なんで気付いてくれないの。でもそれも、今日までだ。
私「悟、今日さ、放課後ちょっといい?」
 彼の目が見れない。ドキドキする。なんであんなにまつげが長いんだろう。すごくかっこいい。
悟「ああ? んでだよ。そのまま帰んねーのかよ」
私「いいでしょ別に! ちょっと話したいことがあるだけ!」
悟「はあ?」
 不思議がる悟を置いてけぼりにして席に座る。私、今日こそ告白するんだ……。

 つつがなく終業式がおわる。
「ずっと好きでした」
 何度も頭の中で口ずさむ。すきです、すきです、悟ずっとね。すきです。
 悟を好きになったのはいつだったかな。砂場遊びしていた頃だった気がする。もうあんまり覚えてないんだけど。
悟「うい」
私「さっ! いつの間に……」
 高い身長から頭を急に撫でられて私は舞い上がってびっくりする。顔が熱い、悟。なんでそんなことするの。ちょうど彼の胸元に顔がある。第二ボタンはまだある。いい匂いがして、私、なんてはしたないんだろう。
悟「何だよお前、考え事か?」
私「う、ううん。違うよ……。あ、あのさ、言いたいことがあって。ず、ずっとね、その、す、すっ」
 あと一文字、それだけが出てこない。喉につっかえてしまって、あとほんの少しなのに。ずっと好きでしたって。
悟「待てよ。その先は俺が言うぜ」
 突然、悟が遮って言う。そして頭に手が乗せられた。体温が伝わってくる。大きな手が少し震えている。
私(え、まさか悟も……?)
 熱を帯びた彼の長いまつげをじっと見つめる。私は彼の言葉を待つ。
 でもそれは長く続かなかった。
お調子者「グガワァァア!」
悟「危ない!」
私「きゃああっ」
 悟が私を突き飛ばす。
 ガブリ!
悟「ギャアアアッ」
 悟の肩をお調子者のクラスメイトが噛み千切っている。口からは真っ赤な血が滴り、目は血走っている。その姿はまるでホラー映画のゾンビみたいだった。
悟「ギョアハアアアッ!」
私「悟!」
 みるみるうちにゾンビに変化していく悟。
悟「グ、グルナ……」
私「さとる……っ」
 私のドキドキしていた胸の奥はもう、絶望に支配されていた。

次回、第二話「パニック・オブ・ゾンビ」
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