見出し画像

「逆張小僧」〔コイネージ【新造語の試み】19〕

「逆張り」とは、株式投資用語で

「市場で、市場人気に逆らって売買すること。株価が上がっているときに売り、値下がりしているときに買い付けること」(精選版日本語大辞典より)

をいい、そこからネットスラングに転じて

「俗に、大勢や時流に逆らう言動をすること」(デジタル大辞泉より)

をも意味するようになった。

そして、「大勢や時流」ばかりでなく、「目の前の人間」に対しても、"あえて"逆らうような言動をする者はたびたび存在する。いわゆる「天邪鬼」な者。

このような「相手の主張や世間一般の価値観に対し、"ひねくれありき"で反対の言動をする者」

これを「逆張小僧」と呼んでみる。

例えば、会話の相手が「結婚するには金が必要」といえば、脊髄反射的に「愛があればいいじゃん」と被せたり。

最近(2022年10月現在)だと、信者じゃないのに「〇〇教会は素晴らしい団体だよ」と心にもないことを言ったり。

このように「相手や世間に対し、反対の言動をする」。

これが、「最終的にジンテーゼを目指すためのアンチテーゼ」ならなんの問題もない

その主張・価値観の至らない点や顕著なデメリットを、反対意見を示すことで指摘し、「より良い答え」を導きだすための下地を作ろうとする。

これならば、通常の「建設的な議論」である。

しかし、「逆張小僧」の"反対の言動"は、いわば「イチャモンづけ」。

「相手に正しさで勝ちたい」。
「世間一般の潮流に逆らう私、他とは何かが違うと思いたい」。


そういう"気分"に浸るのが目的である。

当然、反対意見を裏付ける深淵な知識・考察、「それを主張したい!」という確固たる信念など伴っておらず、極めて皮相的。

レベルの高い再反論にはまず耐えられず、スルーするか、稚拙な論点ずらしをしてわめくか、人格攻撃をしだすかが関の山である。

ところで、RPGゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズには、「〇〇こぞう」というネーミングの敵キャラがたびたび登場する。

「おにこぞう」〔ドラクエⅣ〕「ともしびこぞう」〔ドラクエⅤ〕「きりかぶこぞう」「シールドこぞう」〔ドラクエⅥ〕など。

「逆張小僧」の「小僧」部分は、このイメージから来ている。

これら「〇〇こぞう」のほとんどは序盤の敵キャラで、苦戦することはほぼない。こちらのレベルが上がれば、戦っても得るものが少なく、"時間節約で"「逃げる」のが得策となる。

「逆張小僧」もしかり。

「正しさで勝ったつもりになって、いい気分に浸る」のが目的なので、"攻撃力"の高い有効な反論はしてこず、都合の悪い意見はスルーし、ときに人格攻撃までしだす。

こうなっては、知的かつ建設的な議論など到底期待できず、「より良い答え」を導くのに使うべき時間と知性と精神を浪費するだけだ。

現実世界の「逆張小僧」も、"エンカウント"したら「逃げ」の一手である。

なお、既存の同意義語に「天邪鬼」がある。

これについて調べてみると、語源である妖怪「天邪鬼」は、「他人の心中を察することが巧み」(ニッポニカより)とのこと。つまり、天邪鬼は「洞察力」に長けているということだ。

「『洞察力』という超高度な知性を持つ者が、『ただイチャモンづけしたい人』と同等ではないだろう」。

筆者はこう考え、(RPGゲームでいう)天邪鬼のカラバリ下位種をイメージしたく、「逆張小僧」を設定してみた次第。

「逆張小僧」なら、攻撃手段が逆張りに特化している感じがある。

(関連記事)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?