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私は望まれて生まれた子だったか

父は公務員、母は事務員。
結婚と同時に新築した家に祖父母と同居する、
昭和のごくごく一般的な家庭に生まれた。
いちばん小さい頃の記憶が3歳なので、それ以前のことを私は知らない。
知りたかった時期もあるが、聞きたくても聞いてはいけない気がした。
物心ついた頃には、私はすっかりおばあちゃん子に育っていた。
昭和の公務員という職業は、一生を保証された仕事だったので、
私たち姉妹は金銭的には何不自由なく育ててもらった。
とはいえ、好きなものを買ってもらえたか、
行きたいところに連れて行ってもらえたか、といえば
それはまた別の話である。

時代が一気に飛んでしまうが、私は若いうちに母親になった。
生まれたのは男の子。
私は自分が姉妹だったのもあり、男の子を育ててみたいと思っていたし、
男の子だと分かった時は嬉しかった。
もちろん女の子でも同じ気持ちだったとは思う。

「祖母」となった母が私にこう言った。
「男の子産んでくれて安心したわ」

母は長男で跡取りの父のもとに嫁ぎ、生まれたのは娘ばかり。
「お前は長女で跡取りだ」と祖父に言われて私は育った。
(それなのに長男に嫁いだ私を祝ってくれた祖父には感謝しかない)


自分と同じプレッシャーを感じてほしくないという母心だろう。
私が母としっかりとした愛着関係を築けていれば、
そう感じて母の心配を素直に受け入れることができたのだと思うが、
歪みに歪んだ私の思考ではそうはいかない。

私が生まれた頃はエコーは普及していなかった。
私が女の子だと知った時、お母さんはどう思ったのですか?
嬉しかったですか?残念でしたか?次は男の子を…と思いましたか?
男の子を産んだ私を本当はどんな気持ちで見ていたのですか?


母は常に私を自分の理想のレールに乗せたがる人だ。
私は生まれた瞬間から、脱輪した人生なのかもしれない。
自分が望まれて生まれた子だったのか、未だによく分からないでいる。


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