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同接数にライブ配信の人気は指標化できるのか

 インターネット上でのライブ動画配信においては、視聴ユーザーの同時接続数(以下、同接数と称す)を実質の基準として、個々の配信を評価する傾向がある。外部から容易に観測できるため、人気や注目の度合いを見るものとしてはわかりやすく伝えやすい数字である。
 一方で、この同接数を根拠に配信者の人気を語ったり、他の配信者が行った類似内容の配信と比較して良し悪しを決めようとする者も少なからず存在している。
「同接数の多い配信者は面白く、逆に少ない配信者はつまらない」
というのが彼らの言い分だ。
 規模感や抱え込んでいるファンの年齢層、配信の時間帯や配信時間等によってさまざまなユーザーを、あくまでその時表示されているだけの数字で一辺倒に評価してしまうことには、承服しがたい方も多いことだろう。僕個人としても、一配信者の配信を時系列で比較するならともかく、異なる配信者を比べる指標とするには難しいという意見である。
 今回は、同接数から予想できるライブ配信の特徴と、同接数から見ることができない情報について、それぞれ語っていく。あくまで素人意見のため、学術的なものとしてではなく「こういった見方ができるのだ」という理解に留めて読んでいただきたい。

配信の同接数を構成するのは何か

 まず第一に、「同接数はどのようなパラメータから構成されているか」という話をしなければならない。ここでは例としてYouTubeでのライブ配信を考えてみよう。

 最初に、同接数を示す最も大きなパラメータとして、『ユーザーの訪問数』『ユーザーの離脱数』の2つの項目を考える。前者はライブ配信のページを開いたユーザーの数、後者はライブ配信のページを閉じたユーザーの数である。これらを使って、同接数は以下の形で表されることになる。

『同接数』=『ユーザーの訪問数』ー『ユーザーの離脱数』

 配信枠のすぐ下に表示される『〇〇人が視聴中』という情報が示すのは、端的に言えば上の式で導かれる数値である。勿論、内部的にはアプリケーションの呼び出し数やら何やらで表現されているため、ここでの説明と等価ではないが、配信ページを開き続けているユーザー数が同接数と考えれば良いだろう。

 次に、上で示した2つのパラメータを分解してみよう。
 まず、『ユーザーの訪問数』は『チャンネル登録済みのユーザー』と『チャンネル未登録のユーザー』に分けることができる。さらに、『通知をオンにしたユーザー』と『通知をオフにしたユーザー』にも分類できる。

『ユーザーの訪問数』=『チャンネル登録済み』+『チャンネル未登録』
  = 『通知オン』+『通知オフ』  

 『ユーザーの離脱数』もまた、『配信トラブルによる離脱』『ユーザーの事情による離脱』『配信への不満・嫌悪による離脱』『本配信終了に伴う離脱』などといった理由別の離脱の合計で構成されている。

『ユーザーの離脱数』=『配信トラブル』+『ユーザー事情』    
         +『不満・嫌悪』+『本配信の終了』+…

 このように、ユーザーの同接数というものは単純な数値の大小ではなく、さまざまなパラメータが組み合わさった数字として構成されている。すなわち、
「配信者ごとに異なる事情や配信ごとの状況を分析し考慮しない限り、同接数という指標だけで評価や比較を行うことはできない」
ということである。
 チャンネル登録者数が10万人規模と千人規模の配信者を比較して多寡を語ったところで、前者がより多くユーザーを配信に引き込めるのは当たり前のことでしかない。また、同程度の規模を持ったチャンネルでも、通知登録したユーザーの数が違えばその分だけ同接数には差が生まれる。配信の時間帯や巷の話題との関連性なども、パラメータの係数となって同接数を変化させるだろう。
 つまるところ、同接数だけを持ってきたところで「この配信者の配信を今見ているのは〇〇人」以上の情報にはならないのである。では、どのようにして分析していけば有効な情報として活用できるのだろうか。

同接数を使って配信を分析するには

 ユーザー側から見える同接数はあくまで瞬間的な値である。一方、配信者からは開始時から終了までの数値が連続した形で表現され、変化を図示したグラフを見ることが可能である。
 この情報を用いて分析する場合、重要なのは数値変化の極端な場所を探し出し、そこにある要因を導くことである。増えたにせよ減ったにせよ、一気に数が変わった箇所を調べるのが重要なことにかわりはない。良い変化は狙って引き出し、悪い変化は避ける工夫をする。そのための分析である。

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