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$35のショートパンツ

リアル店舗でものを売るということ。どうやったら「いい買い物したな」と思えるのか、思ってもらえるのか、その両側面から書きます。


今日Newtownという日本の下北のような古着屋、セカンドハンドショップが多い町に行きショートパンツを買った。

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(Newtownのお気に入りウォールアート)

家に帰ってルームメイトに見せると、

「おっ~~めっちゃいいじゃん!!!いくらだった??」

と聞かれたので

「$35だったよ」

と答えると、

「う~ん、いいけど、Market Cityだったら$20で買えるよ」

と言われた。


その子とはもともと、服が欲しい!だけどお金がないから安い買い物をしにいこうよ!と話していたので値段の話が出るのは他意はなくその流れでの発言だったと思う。

私も当然安いものがほしい。

だけど、$20で買える同じようなパンツをMarket Cityで見たところで買わないかもしれない、と思った。

Maket Cityはわりといつでもセールをしていて、日本のForever21(もう撤退しちゃったけど)とかユニクロ的な店もあったりする。でもそのイメージは私の中では安くて品質もまあそこそこいいいわゆる「コスパがいい服」だ。

コスパがいい服は時には必要だけど、全身コスパコーデにしてしまうと気分は上がらない。

いま私が必要としているのはコスパがよくたくさん買える服よりも自分がテンションが上がる1枚だった。

$35の価値

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(中身が見られない本とセカンドハンドで安く売っている本。普通の本屋さんにもセカンドハンドがあるの日本ではあまり見かけないかも)

今日買ったショートパンツはたくさんの同じようなものの中から4枚試着用に選び、その中で勝ち上がったオンリーワンのショートパンツだった。

私は普段ショートパンツをはかない。いいなあ、はいてみたいなあと思っても、いやでもちょっと足の太さが、、、無理だ、、やめとこうと思ってしまう。

しかし海外の人はとても不思議なことにどんなに太っていてもおなかが出たTシャツを着るし、平気で足を出すし、二の腕を見せる。

ということで日本でははくことなんて考えもしなかったショートパンツを「まあ海外だし、みんな気にしてないし、いっか!」という気持ちで買うことに決めた。

しかし試着をしてみて鏡を見てみてもやっぱり自分の足の太さが気になる。。。と思いながら鏡を見ていたら店員さんがやってきて

「どう?」

と聞いてきたので、

「うーん、形はいいしとてもかわいいんだけど自分の足が気になる、、、」

と言ってみたら

「Come on!!」(ふざけなさんな!)

といいつつ自分の足をたたいて見せながら

「気にしないの!似合ってるわ!!」と言ってきた。

結局たくさんの同じような、だけどちょっとずつ色と形とデザインが違うショートパンツを試着してみて、やっぱりこれが一番ドキドキする!という一枚を買った。

「似合ってます!かわいい!」と日本語で言ってくれた店員さんが

「このパンツがあなたに自信を与えるきっかけになるわ」

とレジの時に言ってくれて、とても買ってよかったと思った。


店に並ぶショートパンツの値段は全て$35だった。だけど、私が払った$35はショートパンツだけの価値ではない。なにに払ったのか、自分の気持ちを考えてみると、

・Newtownという古着屋が立ち並び、たくさんの服を見て散策しながらとうとう出会った自分の気持ちがアガる一枚のパンツ

・いままで自分の足じゃはけない、、、と思っていたパンツをはく挑戦

・それを勇気づけて、自信をつけてくれる店員さん

・自分の好きなものを着ることでキラキラする未来の自分

・足が見えるから痩せなければというモチベーションになる未来の自分への期待

過去と現在と未来に対して払った$35

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買った時の気持ちを振り返ってみると、私は自分の時間に対して$35を払ったことが分かった。

【過去】

みんなが着ていてはいてみたいけどはけないショートパンツ

【現在】

試着してみたはいいものの、やっぱりこれをきれいに着こなす自信がない。と思っていた時に店員さんが言ってくれた「だいじょうぶ。かわいい。似合ってる」と肯定してくれた言葉

【未来】

このパンツを買ったらこれを着こなすためにダイエットをがんばるだろうという期待。


過去は過去でしかないから、やっぱり大事なのは現在と未来。現在でいかにそのものに対してよりよい雰囲気を作り、未来へのポジティブな想像を膨らませるか、それが店舗販売で買いたいと思うかどうか、買ってもらえるかどうかなのだ。

ブランディングの仕事をやっていた時に学んだ機能的価値と情緒的価値という言葉。今回私が買ったショートパンツは割合で言うと1:9で情緒的価値の方が圧倒的に高い。(機能的価値は夏用の服、という一点だけ)


と考えていくうちにこのお店の店員さんすごいなと、尊敬の気持ちが湧いてきた。(この店員さんが意図してやっていたかどうかはちょっとわからないが)相手にそのものの未来を想像させることは情緒的価値としてかなり重要だということが分かった。

自分もマーケットでみそを売るときに意識していきたい。(かなり難しそうだけど)


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