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「方法序説」を自己解釈も交えてご紹介② ~4つの規則~
今回の記事では、「方法序説」の第1部・第2部の内容を紹介していきたいと思います。
世界という書物のなかで学ぶ
「方法序説」というタイトルについて、前回も紹介しましたが、解説にはこう書かれています。
(本の)正確なタイトルは「理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の話(序説)。・・・
すべての人が理性(良識)を働かせて、真理を見出すための方法を紹介するのが、この本の主なテーマです。
デカルトは様々な学問を学ぶなかで、文字(書物)による学問だけではいけないと考えたようです。そして世界という大きな書物のうちに見つかるかもしれない学問だけを、探求しようと決心しました。
それから、旅をして宮廷や軍隊を見たり、さまざまな人たちと交わって経験を積んでいきます。また自分自身にも試練を課し、目の前に現れる事柄について反省を加え、そこから利点をひきだす作業を行いました。
これらのことにより書物だけから学ぶよりも、はるかに多くの真理を見つけ出せると思ったそうです。なぜなら、
各人が自分に重大な関わりのあることについてなす推論では、判断を誤ればたちまちその結果によって罰を受けるはずなので・・・
というふうに述べています。確かに自分の生活や人生に大きく関係する判断は、より慎重により真剣になることでしょう。
そして様々な考察と格率により、理性を働かせて真理を見出すための方法をつくりあげた、と書いてあります。
「格率」について
ここで「格率」という言葉が出てきたので、少し調べてみました。私は「確率」の間違いではないかと思いましたが、調べてみると違いました。「格率」は、哲学者のカントによって提唱された哲学用語だそうです。
コトバンクのデジタル大辞泉には、
① 世間で広く認められている行為の基準。また、それを簡潔に表した言葉。格言。金言。処世訓。
② カント哲学で、行為の普遍的な道徳法則に対して、主観的にのみ妥当する実践的原則(規則)。
と説明されていました。少し難しいですね。
主には②の内容を指すそうで、個人が自分で守ろうと決めている「規則」「掟」「基準」のようなものをいう、とも説明されていました。例えば早起きすると決めている人がいれば、その人にとっては早起きすることが「格率」になるそうです。
4つの規則
それではデカルトが考え出した「4つの規則」を紹介しますが、これについて、
わたしの目的は、自分の理性を正しく導くために従うべき万人向けの方法をここで教えることではなく、どのように自分の理性を導こうと努力したかを見せるだけなのである。
と述べています。あくまで参考になれば、というスタンスのようです。
さて、その4つの規則は次のようなものです。
第1の規則は、
わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないこと。言い換えれば、注意深く速断と偏見を避けること・・・
疑いをさしはさむ余地のまったくないほど判明なもの以外は、判断のなかに含めないこと。
「注意深く速断(はやまった判断)と偏見を避けること」というのは、とても納得できると思いました。
ただ「疑いをさしはさむ余地のないほど判明なもの」だけを認めるというのは、条件が厳しいようにも思います。しかしそれぐらい自分の感覚や感じ方を大事にして、よくよく考えてみようということでしょうか。
第2の規則は、
わたしが検討する難問の1つ1つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。
問題を小さな要素に分けて考えよう、ということだと思います。この「小部分に分割すること」ついて、何かで読んだある話を思い出しました。
ある外国のとても雪の多い寒い冬が大嫌い、という人がいたそうです。しかし一方で、ウインタースポーツが楽しめるその冬こそが大好き、という人も少なくなかったそうです。
そこで、次のような推測をされていました。
冬が嫌いなその人も、もしかしたら冬全体が嫌いなのではなく、「重い防寒具」を着るのが嫌いなだけかもしれません。それなら軽くて暖かい防寒具があれば、同じ冬を好きになる可能性があります。
嫌いなことでも細かく具体的に見ていくことで、解決策が見つかることもある、といった内容の話です。
この話が「第2の規則」の例として合うように思ったので、紹介してみました。
第3の規則は、
わたしの思考を順序に従って導くこと。そこではもっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識にまで昇っていく・・・
この規則については、学校の先生から「テストを解く順番」としてよく言われた覚えがあります。「まず簡単な問題から解いていって、残った時間で難しい問題を解いていくように」との説明でした。内容は、よく似ていると思います。
また「順序に従う」ことについては、一発逆転ホームランを狙わないというふうに解釈してみました。野球でいえば、まずランナーを出して塁を進めていき、1点ずつ返していこう、という考えが当てはまるように思います。
第4の規則は、
完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。
こちらは、テストの解答を何度も見直している時を思い出します。また少し高い買い物をする際にも、自然と行っていることだと思いました。
ちなみに「枚挙」とは、「1つ1つ数え上げること」という意味です。
最後にデカルトは、これら「4つの規則」を用いることについて、
この方法でわたしがいちばん満足したのは、この方法によって、自分の理性をどんなことにおいても、完全ではないまでも、少なくとも自分の力の及ぶかぎり最もよく用いているという確信を得たことだ。
というふうに述べています。
こうして4つの規則を読んでみると、よく考えれば当たり前のことを言っているように思えます。しかしこうした規則を、はっきりと言葉にして人に提示するのは、なかなか難しいことだと思いました。
4つの規則の紹介でした
デカルトが考えた、理性を働かせて真理を見出すための「4つの規則」を紹介しました。
次回の最後の記事では、「人の意見を参考にする際の基準」などが書かれている、第3部からを紹介したいと思います。
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