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2020年秋、ビルドトラップに浸かりました。

こんにちは。電通デジタルでEMをしている河内です。

電通デジタルアドベントカレンダー2020の23日目の記事になります。前回の記事は「ECS Fargate 楽々構築テンプレート」でした。

今回は初日の記事でもありますが、我々の開発組織にはプロダクトを開発するチームがあります。このチームのスクラム開発でスクラムマスターという立場から今年学んだ失敗・課題をお伝えしたいと思います。

背景となるチームコンディション

弊社でエンジニアの組織が立ち上がって2年ほどでほぼ中途のエンジニアで構成されています。組成してから内製で初めてのチームによるプロダクト開発を行い、途中からスクラムを導入して1年が経過しています。スクラムのプラクティスはほぼ全て実施。ベロシティは増加傾向。
スクラム導入初期はチャレンジングで概ねチームは上手く回りました。ただ1年も経つと課題は積もるものです。

課題

見えてきた課題として、

1. 開発チームが淡々とプロダクトバックログを100本ノック状態で消化
 (数をこなすことに必死になる)
2. 適切なプレッシャーを感じない
 (今の開発物がどれくらいの業務インパクトがあるのか分からない)
3. リファインメントが盛り上がらない
 (実装方法で頭がいっぱい)
4. プロダクトバックログ名が開発用語化=開発TODOリスト
 (プロダクトオーナーそっちのけ)

といった症状が出てきました。

学びと仮説

これは何に起因したものなのかを考えると、今年10月にオライリー社から出版された『プロダクトマネジメント』で見事にビルドトラップという名前で表現されていました。
ビルドトラップとは一言で言うと

組織がアウトカムではなくアウトプットで成功を計測しようとして、行き詰まっている状況のことです。
─『プロダクトマネジメント』第一部 ビルドトラップ 冒頭

という問題です。詳しくは書籍を読んだ頂くとして、ここからは、この書籍がまさに「おっしゃる通りでした」という事例を学びと共に記載していきます。

前述した課題の原因はいくつかあるのですが、ここでは私たちが生み出してしまった、
 KPI不整合
とさらにその原因となった
 スクラムロール間の情報の非対称性
という2つに分けて整理してみます。

KPI不整合

私たちのチームは作ったプロダクトが
・どれだけ利用されているか
・何を作ったか
・いつまでに作れたか
といったことが主要なKPIとなっていました。これ自体が悪いのではないのですが、チームの達成感とチームのユーザへの貢献度が必ずしも比例していないという合成の誤謬のような課題意識が生まれていました。

確かに、私を含め開発チームの評価をする側はそれが一番分かり易いしそうなりがちですが、もっと重要なポイントとして、開発チーム側(これも私含め)もそれが一番報告し易い、ということがこのトラップに陥り易い点です。ウォーターフォール型開発においても、計画通りに実装が完了することが主要なKPIとなることと類似しています。

カイゼン方針1
これはまだ実行していませんが、ひとつは、使われているんだっけ?ではなく、喜んで貰っているんだっけ?というマインドチェンジが必要なことです。具体的には、リッカート尺度などを使って、「私たちは貴方の●●という課題解決のためのプロダクト成長を行っています。現時点でこの課題は解決されていますか?」といったフィードバック機能をプロダクトに入れるか、ベタにアンケートを取るというコミュニケーションが考えられます。これはユーザが社内だと比較的現実的にできるのではないかと思います。

カイゼン方針2
シンプルにユーザともっと距離を縮めることです。私たちの様な内製の開発組織なら、使っている人ともっと一緒に仕事をする、です。これは当たり前の様で業務ドメインが異なるので案外難しいです。ただ、やれることはあります。
何が欲しいですか?ではなく、どんな業務をしているんだっけ?何で困っているんだっけ?という形で聞き方を変えることや、ユーザーストリーマップを一緒に作るということです。これは比較的ハードルが低く、行動に移しやすいのです。

『プロダクトマネジメント』で述べているアウトプットではなくアウトカムで計測することを推奨しているように、私たちはリッカート尺度やユーザーストーリーマップ上の課題解決度合いで計測できる様に来年は取り組んでみたいと思います。それぞれ、ちょっとコミュニケーションの仕方を変えるだけです。この取り組みの計測結果は来年にご紹介できればと思います。

ドメイン間の情報の非対称性

そして前述のKPI不整合の原因となる文化、スクラムロール間の情報の非対称性についてですが、記事が長くなるので、来年のはじめにもお伝えできればと思います。

まとめ

今年を振り返ってスクラム開発で学んだ課題をご紹介し、来年への宣言とさせて頂きました。

・2020年、ビルドトラップにはまりました。
・アウトプット計測の功罪は開発チームの妥協にも起因する。
・アウトプットではなくアウトカムで計測するための来期への仮説を宣言しました。
・スクラムロール間の情報の非対称性は次回の記事へ

アドベントカレンダー24日目の記事は「電通デジタルが考えるデータ系職種のあれこれ」です。次回も宜しくお願い致します。