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脳死オクタンよ、立ち止まれ

APEXは反省が命だ。

ちょっと前の記事にも書いたけれど、僕はゲームが趣味で、ここ2年くらいのプレイタイトルは、もっぱらAPEX LEGENDSだ。
APEXはいわゆるバトロワFPSと呼ばれる種類のゲームで、ただプレイするだけでももちろん楽しいのだけれど、戦績やプレイスキルを向上させる為には、新たな知識を取り入れたり、試合内容の反省を行う必要があって、これがまた楽しい。反省した内容を次からの試合に取り組んで行くことで、今まで敵わなかったレベルの敵を倒せた瞬間が、一番生を実感する。
反省、という行為は日常生活においても欠かせないものだ。仕事でミスをしてしまった時、なぜそのミスが起こったのかを反省し、同じミスを犯さないように注意する。試験で間違った箇所は見直し、復習する事で知識を定着させる。18世紀の思想家・ルソーは、その著作『人間不平等起原論』で、人間を自然状態(動物性)から区別するのは、自由と「自己を完成(改善)する能力」にあるとしている。反省がまさにこの能力を指すのならば、反省をしている時の僕たちはいっそう人間らしく生を営めているのかもしれない。

反省には、意識的なレベルで行うものと、無意識的なレベルにまで落とし込むものがある。
意識的な反省。例えば、車であのドーナツ屋さんに行こうとした時に、右折しなければならない交差点を、誤って直進したとする。本来は右折すべきだったんだと分かって、後日また同じドーナツ屋さんに行く際、今度は前回の反省を活かし、しっかり右折して目的地に向かう。この時、交差点に差し掛かるときに「右折」という声が意識に上るだろう。これが意識的な反省だ。
対して、無意識的な反省。同じ例で、交差点に差し掛かるたびに何度も「右折」の声を聴いたとする。何度目かには、もはや「右折」の声は聴こえなくなり、ドーナツ屋さんに向かおうとする時、既に脳裏に「右折」が定着しており、特に意識せずとも右折を選択できる。手が勝手に、ウィンカーを操作していると言ってもいい。これが無意識的な反省だ。
この例から分かるように、反省のレベルは無意識的な方が、より深く自己に刻まれると言える。

僕らは、仕事や日常生活において、よく同じ動作を繰り返す。特定の道を右折したり、決まった順番やトーンで言葉を喋ったり、ゲーム内の同じ場所・同じ武器・同じキャラで戦ったり。最初は、それらを行う為には強く意識をしなければならなかったのが、次第に無意識的なものになる。そう、先程の「無意識的な反省」というのは、つまり「習慣」の事だ。
行動・反省・習慣化。このサイクルによって僕らの仕事や生活は成り立っている。もちろん、どれが欠けてもいけないのだけれど、なぜか人は次第に反省をしなくなっていく。

実力でエラくなった会社人がいる。彼は入社してからずっと、先輩の顔を立てながら仕事を学び、能力を身に付けていった。やがて先輩たちが異動したり昇進していく中で、課内で彼が一番エラくなった。すると、どうだろう。先輩たちに対してはあれほど謙虚だった彼が、俺のやり方がすべて正解だ、と言わんばかりに振る舞い始めた。それなりの意味があって続けている、慣れ親しんだやり方を無理矢理新しく変更したり、省くと混乱を招きやすい事務的な処理を省いたり、ぜんぜん計画されてない工程を、残業強制で無理やり何とかしたり。他の人がついていけないようなやり方を、「自分はできるから」部下に強いる。一応、部の全体から見える業績自体はとりあえず維持できているので、一見問題無さそうに見えてしまうのだ。
なぜ彼は、急に横暴になってしまったのか。それは、行動・反省・習慣化というサイクルのうち、反省の機会を失ってしまったからだ。かつては、先輩たちが「それはいけない」という事を注意したりしていたので、彼も反省をし、行動を変化させていた。けれどエラくなった事により、課内で彼に口を出せる人がいなくなってしまった。結果、周囲に迷惑がかかってしまうような自分の行動をまったく反省せず、それを習慣化させてしまっているのだ。
APEXでもそうで、特定のランク帯において、ある程度余裕を持って勝てるようになると、だんだん脳死で敵に向かって特攻してしまう。何も考えず即降り・初動落ちを繰り返し、勝てない自分にイライラする。反省した内容を反映した行動を取っていないから、いつまで経っても上手くならないし、味方にも迷惑をかける。

反省は、人間を自然状態から区別する重要な能力だ。反省することを忘れてしまったとき、人は動物と化す。APEXだけならまだいいけれど、僕は、現実の生活でも反省を忘れたりしてないだろうか。
少し人より勉強ができたり、仕事などの処理能力が高かったりする人は特に、自分の立場が変わったとしても、反省する事をどうか忘れないでほしい。自分の行動が間違っていないか、時々でいいから自問自答してみてほしい。動物を上司に持つ部下は、知らないうちにあなたの元から離れていってしまうだろうから。

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