「自己アピール書は、びっしり詰めて書く方が熱意が伝わる!」というのは、【消費者の眼】を忘れた、戯言に過ぎない。

レトリカ教採学院(教採塾)、学院長の川上です。

「志願書や自己アピール書は、詰めて書く方がいいのか。」というご質問がありました。

「びっしり書いた方が熱意や情熱が伝わる!」と、信じて止まない世代の面接官が読むのですから、ある意味、正しいのかもしれません。

しかし、びっしり書いた方が熱意が伝わる、教師への志を感じてもらえる・・・果たして本当にそうでしょうか。

熱意や志など、目に見えないものをどうやって測定できるというのでしょうか。字のきれいさですか、量ですか?

パソコンで入力する場合、どのように違いが表れるのでしょうか。

空いている残りのスペースが5文字以内と、残り10~15文字以内だと、どのくらい熱意や志は違うのでしょうか。

わかりませんよね。

迷信や都市伝説、根拠ない他人のアドバイスを鵜呑みにするのは自由です。


ただ、一番恐ろしいのは、皆さんは、面接官の【消費者の眼】を忘れている、ということです。


そもそも、消費者の眼というのは、非常に自己中心的でわがまま満載です。
自分に都合のよいバイアスがかかります。見たいことしか見ませんし、聞きたいことしか聞きません。自分の都合のいいものしか信じません。


例えば、今日の夕飯をすき焼きにしようと思い、スーパーに行きます。
そこで、並べられている、牛肉のパックを買うとしましょう。

牛肉本体に、なんの影響や変化、見た目の違いがなくても、ラップがくしゃっとなっていたり、緩んでいたり、中身がどちらかに偏っていたりしたら、売れ残ることが多いですよね。

皆さんも、どうでしょうか。数ある牛肉のパックから、わざわざ、ラップがヨレたもの、中身が偏ったものを選ぶでしょうか。


はたまた、牛乳を買うとして。

手前取りをお願いしているスーパーも多いですが、奥の方に期限の長い牛乳が置いてあるのを見ると、奥の方を取る人もいますよね。

物価も高騰しているし、そんなに一気に飲んで無くなるわけでもないし、短いスパンでまた重たい牛乳を買って帰るのも手間だから、できるだけ期限の長い牛乳を取る人もいます。

お店の先入先出(FIFO=First in , First out)を無視して、自分の欲しい期限の商品を取る人も、たくさんいます。

それが消費者の眼というものです。

消費者の眼は、誰もが持っているのですが、それは自分が選ぶ側のときだけです。
自分が選ばれる側になると、その眼を忘れがちです。


さて、消費者の眼がどういうものかご理解いただけたところで。

今回のご相談は、「びっしり書いた方が熱意が、志が、伝わるのか。」という話でしたね。

皆さんは、例えば、細かい文字がぎっちぎちに書かれているパンフレットを、丁寧に読みますか?丁寧に読んだところで、「この企業すごいな!」、「めっちゃ丁寧だな。わかりやすいな!」と思いますか。

ポストに投函されている広告やチラシを、全部片っ端から丁寧に読みますか?

サブスクの登録、携帯の契約などで「規約を読んで同意する」という流れがよくありますが、実際、ちゃんと読んで理解して同意をタップ(クリック)していますか?
「どうせ同意しないと次に進めないから」と一気に最後までスクロールして、同意を押していませんか?

学習指導要領をすべて丁寧に読んでいますか?理解していますか?

答申や通知を、概要版に頼ることなく、本文をちゃんと読んでいますか?

生徒指導提要のデジタル版は、リンクがたくさんあり、そのリンク先の通知や報告も非常に重要なものばかりです。それら全部に目を通しましたか?

自分の胸に手を当てて、考えてみてください。
耳が痛い話、当てはまるものが、必ずあったことでしょう。


面接官も、同様に、何かしらどれかは、当てはまる人たちです。
消費者の眼を持っているのです。

あなたが、一生懸命書かれた学習指導要領や通知、パンフレットなどを流し見するように、面接官も、読みにくいもの、びっしり書かれたものを丁寧に読むことはないでしょう。

特に教員採用試験は、朝から晩まで、立て続けに面接が続くわけですから、実際には一つ一つ丁寧に読む暇さえありません。
細かい文字、読みにくい文字なら、なおさらです。

また、

あなたが、何百ページにわたる学習指導要領や答申の本文を見て、「熱量すごいな!」と思わず、「こんなにページ数あるのかよ。だるいな。覚えきれないな。」と感じるように、面接官も、びっしり書かれたものを見ても、「熱量すごいな!」とは思わないのです。


ここまで言えば、

「びっしり詰めて書いた方が、熱意や志が伝わる!」というのが、いかに戯言で、精神論でしかないことが、よくよく、おわかりいただけたのではないでしょうか。


選ばれる側になると、どうしても忘れてしまう【消費者の眼】を、今一度、客観的に見つめなおしながら、教採の戦略を立てていってくださいね。

自分に都合のいいことばかり信じたり、自分に都合のいいことばかり聞いていたり、根拠のないアドバイスや迷信を信じていると、みすみす合格を逃すことになりますよ。

ではまた!

レトリカ教採学院(教採塾)
学院長
川上 貴裕



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