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本当にはじめての人が読むDCF入門。

どうもはじめましてDCF_Masterです。思い切った名前をつけてしまったのですが、わたしもまだまだ修行中で毎日学びや改善点があります。

とはいえそろそろかな?と思い(?)noteを書いています。

なにがそろそろか。

「日本の個人投資家の反撃のタイミング」がそろそろ来るかなと思うのです。

機関投資家は窮地に陥っています。インデックス化、運用制約、オールドエコノミー的な残存ファンドの管理、人材の枯渇、安定組織体制構築の副作用としての運用裁量権の低下。

一方で、個人投資家の方のレベルは年々上がっており、かなり専門的な知識や長い経験を持ってらっしゃると感じます。プロがつまらないので、元プロでプロ以上に活躍される方もいると承知しています。
ここから、日本の株式市場が世界に伍していくには拡大しつつある個人投資家層のさらなる底上げがキーだと思います。

日本という国にオーナーシップを持って、真のバリュークリエーターに資金投下する個人マネーが必要です。

そのための鍵がバリュエーションというステップであり、DCFだと考えています。

ーーーお願いーーーーーーーーーーーーー
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株式投資の3つのステップ

1.業績予想(インプット)
2.バリュエーション(アウトプット)
3.投資行動(パフォーマンス/リスクマネジメント)

バリュエーションは2ステップ目です。全プロセスの要なのですが、ここにかける時間は全体の10%以下ではないでしょうか。なんとプロのセルサイドアナリストでもそんなものです。
長々と翌期の業績予想を書いて最後に3行くらいちょろっとバリュエーションの説明があります

私はバリュエーションに特化して記事をかきます。それもDCFモデルという聴き慣れないモデルだけに特化した超ニッチ戦略を取ります。

なぜわたしが「DCF」を「個人投資家」に推すか

1.インプットではなく目標株価が重要なのでは?
アウトプット重視の仕事哲学を持っています。インプット調査→モデル化→アウトプット検討という過程全体をバランスよく取り組むことで、劇的にリスクリターンが上がると思います。
これは自分の苦い経験から学んだことです。昔はとにかく会社を調べまくって、マクロ指標と連動した予測モデルとかをつくってめちゃくちゃインプットしていました。それで時間がなくなって、ミーティング前日の夜に1時間くらいで目標株価をチャチャっと出して、、、モデルの意味も理解してない、、、といった感じでした。
勉強しすぎて試験自体を欠席してしまった感じです。頑張ったけど結果がでないなんて嫌じゃないですか。
 
2.すべての道はDCFに通ず
DCFモデルを1度理解すれば、すべてのバリュエーション手法の癖やリスクが分かります。DCFは全財務項目を使い、リスクの観点もカバーする優れものです。ラーメンでいえば全部乗せなのでここから、チャーシューを抜いて、野菜抜いて、、、とやればノーマルラーメンにもなります。大は小を兼ねるってやつです。とはいえ「大」きすぎないように私が頑張ってガイドします。

3.長期志向の投資家にベストフィット
DCFの目標株価は比較的安定しており、毎日相場を見れない人や長期志向の個人投資家に最適です。

4.先行者メリットがある
欧米ではすでに常識なのに日本では機関投資家やセルサイドなどのいわゆる「プロ」も使いこなしていない。いままさに学ぶべきです。

DCF = 未来の儲けを全部足す!

DCFとは「企業が将来生み出す儲けを全部合計すれば企業価値になるんじゃないか」という誰でも思いつきそうなことを1つの工夫で実現したものです。

ちょっとやってみましょう。企業Aの将来の儲けはこんな感じかなと予想しました。どんどん成長します!毎年5%利益が増えます。

では全部足してみましょう。

むちゃくちゃデカイ!というかこれ永遠に増えていくんじゃ、、、

そうです、この方法には致命的な欠点があります。株価が無限大になってしまうことです。

値切りは投資の美学

突然ですが私がみなさまに、

1年後に100万円返すのでお金かしてください!」

っていったらどうしますか?選択肢はいくつかあります。

①知り合いだし、80万円わたして20万円差額狙い
②誰だか知らんけど、10万円わたして10倍になる可能性にベット
③意味わからんから出さない

これ実はどれも正解です。唯一やっちゃいけないのは、100万円以上渡すことです。この状況でやっちゃう人は投資はむいていません。

なぜ100万円以上渡してはいけないかは明らかでしょう。

それは、「ネコババリスクを負ったのに絶対にリターンがないから」です。わざわざリスクを負って、必ず損する取引はしてはいけません。「リスクを負う分以上にリターンを求めるのが投資」です。

①を選んだ方は、まあ知り合いだし、1年で25%のリターンならあり
②を選んだ方は、見ず知らずのやつだがリターン900%ならワンチャンあり
③を選んだ方は、絶対返ってこないなら、寄付した方が税金対策としてまし

ちゃんとリスクを見極めてリターンを要求しています。素晴らしい!これが投資です。リスクを負う代わりにリターンを得る。なるべく多く!

ディスカウント率=希望リターン率

リターンの金額が決まっている場合、リスクに応じたリターンを作るには、リターンの金額から値切るしかありません。金利をつける代わりに額面をカット=ディスカウントするのです。そうすることで、リスクを調整しても儲けがでるように将来のキャッシュフローに価格を付けるのです。

①を選んだ方は、割引率25%(100/(1+25%)=80)
②を選んだ方は、割引率900%(100/(1+900%)=10)
③を選んだ方は、割引率無限大(100/(1+∞%)=0)

となり、見事に希望リターン率で1年後のキャッシュフロー100をわることで価格に変換できました。

これでもうDCFが完了しました。、、、え???終わり?と思うかもしれませんが、これで重要なことは一通り終わりました。期間1年のDCFはこれで終わりです。


やっぱり2年後に100万円返すとなったら?

やっぱり1年は厳しいから2年後でいい?って言われたらいくらだしますか?

①を選んだ方は、1年で25%儲からんとリスクに見合わん!と思っているので、100÷1.25÷1.25=64しか貸してはいけません。

やっぱ3年で頼むわって言われたら?

100÷1.25÷1.25÷1.25=51.2しか貸してはいけません。51.2なら平均リターン率が25%なのでOKですね。51.2×1.25×1.25×1.25=100です!

これでディスカウントのイメージが伝わったらいいなと思います。

つまるところディスカウントは、リターンの要求なのです。投資家としてここだけは妥協してはいけません。リスク対比しょぼいリターンで投資をしていればいつか退場することになります。

ディスカウントにさらに興味が湧いたら【DCFの基本①】をチェックしてください。

先のほうはいっぱい値切る=複利の逆

1年返済期間がのびるごとに、どんどん渡す金額が減りました。

806451.2→ …

というふうに将来にいけばいくほど、返ってくる100円の価格は小さくなります。これは、年率で25%のリターンを確保するにはしかたがないことです。3年後に返ってくる100万円に「今」投資するなら51.2万円しか出せません。これは25%という希望リターン率=期待収益率を達成するためにはマストの値切りです。

したがって有名な複利効果の逆で、遠くのリターンほど価値がなくなっていきます。グラフにするとこんな感じです。

将来予想の無限増殖を克服 ー 足せるようになった!

では、期待収益率25%を達成するために、毎年の儲けのあるべき価格をそれぞれ分けて考えてみましょう。

・1年目の儲けに対する価格=1年目の想定儲け金額を1回分、1.25で割る
・2年目の儲けに対する価格=2年目の想定儲け金額を2回分、1.25で割る
・3年目の儲けに対する価格=3年目の想定儲け金額を3回分、1.25で割る

ってやっていきます。それぞれが独立したモノだと考えるといいかもしれません。

これで、すべての年の儲けに対して一律、年率換算で25%のリターンを要求したことになります。この結果をチャートにしてみます。

なんか値切り後の儲けって、0に近づいてないですか?

やりました。これなら足しきれそうです。やってみます。オレンジのバーを全部足していきます。これが到達した点が、すべての年の儲けを足しあげたものになります。

なにやら一定のところで止まっています。
覚えていますか?さっきはこれがうなぎのぼりで無限に増えていきました。

ちゃんと値切ったバージョンの将来の儲けを合計すると497ちょいです。なんか500になりそうですが、、、

ということで、企業Aの儲けを「リスクを加味してもリターンが出るように値切ってから」足した結果、497ちょいになりました!

ーーーDCFの結果:企業Aの企業価値は497円ちょい

もうDCFができました。DCFはこれだけです。

DCF法のやり方
①将来の儲けを予測
②儲け額はきまってる⇒それでもリターンがでるようにディスカウント!
③将来の先のほうの儲けはほぼ価値ゼロ=無限にならない!足せた!
④その合計額が企業価値

「ちょい」が気持ち悪いとき ー 無限等比級数の和

さすがにちょいをちょいのまま放置しておくのもあれなので、どうにかして497を500にしたい!と思うはずです。そんなとき中学生で習った無限投資級数の和の公式を使います。証明は興味があればこちら

結論だけいうと、最初の年の儲けXが、成長率gで増えていくとき、割引率rでディスカウントした合計は、

となります。きれいな三角形の公式がでてきました。さっそくさっきの企業Aの価値を求めてみましょう。

最初の年の儲けX:100
成長率g:5%
割引率r:25%

100/(25%-5%)=500!!

ということできれいに500になりました。そんな気はしていましたがスッキリしました。

DCFの公式を使ったバリュエーションの例

さっきの公式は超強力で、分子に入れる「儲け」の種類を変えるだけでいろいろなバリエーションのバリュエーションが作れます。分子には、「自分が信じる企業価値の源泉」をいれてください。

配当割引モデル(別名ゴードンモデル)…価値の源泉は配当という人向け

有名なモデルです。Dividend Discount ModelでDDMです。名前がかっこいい。毎回DDRを思い出します。

DCF(ディスカウント・フリー・キャッシュフロー法)…CFが大事な人向け

私が推しているDCFというのはこれです。分子にフリー・キャッシュフロー(FCF)を取ります。FCFとはキャッシュで手元に残る儲け、のことです。PERで使う当期利益との違いはキャッシュの利益か会計上の利益かということです。

PER法(Price to Earnings Ratio)…利益が大事な人向け

上の式は、企業価値(EV)をEarnings/(r-g)で算出してから、それをEarningsで割った形になっています。PERは時価総額を利益(Earnings)で割ったもの(株価を1株当たり利益EPSで割ったもの)なので、両辺をEarningsで割ることで、PERにすることができます。結果的に公式からEarningsは消えてしまいました。

他の割引系モデルは企業価値をゴールにしていましたが、こっちはPERマルチプルにしてみました。馴染みがあるはずなので。

ためしに日本の平均値(だとDCF_Masterが推計した)
・r=7.5%
・g=3.0%
を入れてみましょう。負債などは全くない前提です。

1/4.5%=22倍になります。まあまあそれっぽいです。すこし興味が湧いてきましたか?

これから学ぶこと ー step by stepで中級者へ!

これまでの流れでうっすらと、お分かりのとおり、DCFをやろう!となるにはいくつかハードルがあります。

ハードル①分子に何を使うか問題
企業価値の源泉はFCFなのか?利益や配当じゃだめなん?という疑問には答える必要がありますよね。【DCFの基本②】を参考にしてください。いろいろな考え方があると思いますが。

リンク先の記事のポイントは、キャッシュが返ってこなきゃ投資じゃないということです。自分だったらキャッシュが回収できない投資なんてしませんよね?株式投資は代理投資スキームです。投資家の代理で企業が得意分野に投資をします。工場だったり買収だったり人間だったり。投資対象はいろいろです。でも、株式会社は最後はかならずキャッシュを儲けないとダメです。なぜなら投資家にとっては利益よりキャッシュリターンが重要だからです。

ハードル②DCFってそんなに使えると信じられない問題
DCFってインプットに左右されるんでしょ?教科書的だけど使えないよね。机上の空論だよね。というお叱り?を何度も受けました。それこそ本業のお客さまや仲間内からも。

しかし決してそんなことはありません。統計的な根拠に基づいて、正確に処理すればDCFはかなりフィットのいい中長期目標株価導出モデルになります。もちろん、なにも知らずに適当にインプットすればアウトプットは信用できません。

そもそもこのnoteは、そういうめんどくさいテクニカルな研究は私にまかせてもらい、そのエッセンス+それを理解するための最低限の知識を学べるように作りました。使ってもらえればそのパワーに驚くはずです。

慣れれば、20分-30分程度で分析が終わり、株価の座りのいい居場所がわかるようになります。マルチプル法になれている方にもわかりやすいように、適正マルチプルをDCF理論から計算して表示しています。(理論解説用のnoteやマガジンがありますが、中級者以上向けになっています。)

ぜひ、ご自身の持っている相場観の比較ツールとしても使ってください。DCFツールを手にすることで、頼りになるアドバイザーが常に隣にいるような感覚になるでしょう!いつものプロセスにDCFモデルを加えることで、目標株価に新しい角度から検証を加えることができます!

ハードル③成長率とか、r-gが何%か分からない問題
成長率や利益率の予測改善については、私なんかより上手な人がいますので、力になれる部分は少ないと思います。もちろんアナリストとして予測能力は重要です。高い方がいいに決まっています。しかし、このnoteは冒頭に宣言したように、

・バリュエーションに重きを置き徹底的にこだわるニッチ戦略をとっている
・そして、1企業人として自分の予想を提示することは投資推奨につながるおそれがある

ということで、私は目標株価を指定しませんし、特定の将来シナリオを推奨したりしません。過去の分析を公表情報に基づいて評価することにとどまります。そのかわり、考え方のフレームワークを提示し、ガイドできるところまで一緒に登っていこうと思います。

ちなみに、r-gは高い精度で推定可能です。具体的な答えは他のnoteにいっぱい書いてあります。

ハードル④DCFなんて見たことも聞いたこともない問題

たしかに、DCFって聞く機会すらないから、始めるのなんてすごい遠い話ですよね、、、。しかもDCFモデルは、超ハイスペックな一方でスイッチやレバーがやたらいっぱい付いていて使うのに慣れが必要なことです。キャッシュフローの世界には、PLもBSも全部でてきます。この異次元をまたぐ感じに慣れると、財務諸表なんて透けて見えるようになります。これはマジです。

PERの運用は簡単です。来年の利益に数字を1つ掛け算するだけです。しかしそれは同時に問題点にもなります。1つしかスイッチがないので、あらゆる機能が1つの数字に入ってしまっていてブラックボックス化します。解釈ができません。

一方DCFなら、最もシンプルな公式ですら3つの数字が意味ありげに並んでいます。実際、3つの変数にはビジネスモデルの効率性評価/リスク/長期競争力+インフレ(金融政策)というおおよそ考えられるすべての要素が詰まっています。株価を出す過程で負債の量などもしっかり取り込みます。

”ビジネスモデルの効率性”を計算するためには、PLとCF計算書を読む知識が必要になります。私が提供している”超実践的DCFモデル”は、最低限のインプットで正確でダイナミックな目標株価を得るために開発されました。しかし、やはり訓練をせずに車に乗れば事故ります。一定程度のCFの知識は正確なバリュエーションには欠かせません。

しかし安心してください、「帰り道は常に行きより短い」という経験則があるように、分かってしまえばむしろキャッシュフローのほうが簡単じゃん、となります。

なぜなら、キャッシュフローを記録するための単式簿記は、現在の複雑な複式簿記ができるはるか前、もっと言えば人類が財布をもったときからあるわけです。キャッシュフローは家計簿と同じ、シンプルな指標です。

しっかり、ステップを踏んで理解できるようにnoteを用意しました。

【DCFの基本③】…利益の世界からキャッシュの世界へ
【DCFの基本④】…使う側のキャッシュフローもある=投資CF
【DCFの基本⑤】…ちょっと休憩・復習・補講
【DCFの基本⑥】…フリーキャッシュフローを割り引く(成長なし)
【DCFの基本⑦】…フリーキャッシュフローを割り引く(成長あり)

③と④に比較的こまかいノウハウがあり、他の部分で考え方などを補強する感じになります。

この先は、【DCF計算編】としてユニクロのキャッシュフローを実際に計算して、バリュエーションしています。すこしづつ実際のモデルに近づくようにあえて試行錯誤しています。ミスしやすいポイントにも触れています。実際、適当に予想したところをしっかり見直したら目標株価がだいぶ変わりました。

ここまでくれば、【スターターパック】が余裕で使えます。ユニクロを飛ばしてこっちに行っても全然大丈夫です。むしろこっちで慣れてから、ユニクロみないと分けわかんなくなるリスクあります(私の文章力・構成力の問題)。

スターターパックはIR BANKさんが無料で提供するEDINETのデータをコピペすればあらゆる企業に対応できる”超実践的DCFモデル”です。かなり機能が拡充されたので有料にさせていただいてます。

そのあとは、【銘柄分析】+【モデリング】の2シリーズで一緒に腕をみがきましょう。1つの銘柄につき2つのnoteが発行されます。
1)ビジネスモデルがどのようにキャッシュフローに影響している理解するための【銘柄分析】編と、
2)プリセットされたデータを使って実際の目標株価を求める【モデリング】編を毎週1-2銘柄を目標にアップしていきます。

ファンダメンタルズからモデリングまでの包括的なケーススタディができるので、お気に入りの銘柄があればラッキーですし、そうでなくても実際の例を見ながらDCFのいろはを学ぶことができます。

おわりに&お願い

すごい長文になってしまいました。企画の趣旨や、DCFはバリュエーションのお供として強力なツールだと、ご理解いただけたら本当にうれしいです。もし質問等あれば、是非是非twitterのほうにメッセージください。

twitterのフォロー/リツイートやフォロワーさんへのリコメンド、noteのフォローなどが励みになります。1人でも多くの個人投資家がDCFを使いこなす世界にするために、ご協力いただけると助かります。

おわり

サポートしてもらえたら週5でアップできるかも!