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【DCFのキホン②】利益とキャッシュフローの違い(感覚編)

キャッシュフローと利益の違い

おそらくほとんどの読者の方は、キャッシュフロー(以下、CF)より利益のほうがなじみがあると思います。でも多分わかってしまえば、CFのほうが簡単です。感覚的にはこんな感じです。

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利益は、売上からコストを引いて計算します。でも、売上もコストも実は結構計算難しいです。ある意味非常に恣意的な数字だからです。

たとえば、複数年にまたがる建設プロジェクトでまだお金をもらってないケース。売上はいくらなんでしょうか。最終的にもらえるお金が売上なんでしょうが、まだわかりません。でも売上としていくらか立てないと赤字企業みたいですよね。たとえば、今年パソコンとソフトウェアを買ったけど、このうちどれくらいが今年のコストなのか、、、全額??それとも1/3?

このように利益はある意味で恣意的です。こういうときはシンプルな時代に戻りましょう。みなさんは子供のころどうやって収支を管理していましたか?わたしには、最強のツールがありました。そう、財布です。財布だけみてれば、儲かっているかそうではないか分かりましたよね。こんなに公平で透明な指標はありません。

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お金が入ってきたらプラス。でていったらマイナス。これが一番簡単なんです。財布の動きだけみていれば、正確に取引を把握できます。
工事の例では、完成してお金もらうまで、ゼロ。入ってきたらドカッとプラス。PCとソフトを買ったら、その場でマイナスです。それだけ。

なぜキャッシュフローなのか

これだけ会計が発達して、なぜ財布(または家計簿)に戻るのか。これは真っ当な指摘ですね。私が思う答えは以下の3つです。

①そもそも人はキャッシュバックに投資の価値を見出すから
②賢いお金の使い方がサステナビリティを生むから
③キャッシュに注目することで、利益に対する理解も深まるから

①キャッシュが返ってこない投資の価値はゼロ

みなさんは、現金化できない投資をしますか?

もちろん、モノを保有するときには、お金以外が理由になることがあります。お気に入りの、サンセバスチャンで買った真っ赤なペンケースもそうです。先祖代々受け継がれている懐中電灯もそうです。そういうものには、夏のスペインの海やおいしいピンチョス、戦前から刻まれた想いの歴史、そういった「お金以外の価値」があります。

でも、金融資産の場合そうはいきません。画面上にきらめく、80円で買った、お宝のドル円。でも換金できなかったら?満室の投資マンション。でも家賃がもらえなかったら?実は当たり前すぎて忘れていますが、投資商品・金融商品は換金できることが前提になっており、「キャッシュが返ってこないなら価値はゼロ」、といえます。「金融資産の価値は、いかに現金を生むか」これだけなんです。「いつ現金が返ってくるか」も非常に重要です。投資商品は最終的に換金して手元にキャッシュとして戻ってこないと意味がない。これは自分でビジネスをするときもそうです。キャッシュは入ってこないけど、黒字なだけのビジネスに何の意味があるのでしょうか。キャッシュがなければ配当もだせないし、経費で高級車を買うこともできません。借金すればできるけど、キャッシュがでないビジネスに通常投資はしてもらえません。みんな投資先のキャッシュを見てるからです。

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株式会社Alphaに投資するということは、その会社がなにかのビジネスに長けていて、平均的な投資機会と比べ資産を効率的に増やせるので、その会社に代わりに働いてもらうということです。

普段株価とかビジネスの話をするときは、上の図の長方形の中が極めてややこしいので、「利益」をみてしまいます。なぜなら「利益」は実態を把握・管理するために調整された数字なので、ビジネスの状態を診断するには使いやすいからです。ここにトラップがあります。

株式投資家は、会社の持ち分を保有して、ビジネスを代行してもらってるわけです。「投資家はキャッシュの見返りを期待して株式に投資⇒企業もキャッシュの見返りを期待してビジネスに投資」。これが大原則です。あくまで、株主の代理でビジネスをしているわけですから、株主の興味がないことはしてはいけません。株価を評価するときに、企業が生み出すキャッシュを見ることが重要な理由がお分かりいただけたでしょうか。

②お金の使い道こそが企業のサステナビリティを示す

経営者は、今年や来年の利益をほとんどコントロールできません。売上はお客さんがいないと増えませんし、景気は操れません。利益は、短期的には外部的な要因で決まっていることが多いです。しかし、「お金の使い方は企業の裁量にゆだねられています」。たとえば、主なお金の使い方として以下のものがあります。そして以下のような葛藤(選択肢)があります。

①設備投資  最新の工場を建てよう! vs 古いけどまだ使えるでしょ
②企業買収  とりあえずM& Aや!   vs 今は高いから待とう
③株主還元  ばんばん配当しよう!  vs 国債でもかっちゃおっか

実際はこんなひどい2択ではなくて、無数の選択肢からリターンが高くなると思うものを選んでキャッシュを使うわけですが、重要なことは、これは経営陣の判断でコントロールができるということです。本当の意味で、コーポレートガバナンスがしっかりしている会社は、この判断に対するルール設定や、意思決定プロセスのモニタリング、結果の分析、こういったものが優れています。

企業は生き物なので、間違いを犯します。また外部の環境もめまぐるしく変わります。外圧や政治的な軋轢に負けて、企業がおかしなお金の使い方をしないか監督することが、株主の重要な仕事だと思います。
また、今日使ったお金に対する結果が将来的に利益として返ってくるので、使ってしまう前に、ちゃんと考えて使ったのか確認する必要があります。この積み重ねが、永続的で安定的な企業の繁栄(サステナビリティ)につながるのです。

③キャッシュフローがわかると、利益がわかる

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上記のように、キャッシュフローは利益の先行指標です。人より早く正確に利益を予想したかったら、キャッシュフロー(とくに支出面)を見るべきです。逆に、今出ている利益の質を理解するには、過去に行った投資をみるべきです。


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