マガジンのカバー画像

DCF完全攻略マニュアル【入門編】

13
外資系アセマネの現役ファンドマネージャ兼アナリスト,CFA/MBAが、DCFモデルの作り方をstep -by-stepでサポートします。このマガジンは入門編です。必要な講義を順番…
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

【DCFのキホン③】利益とキャッシュの違い(理論編)

はじめに読んでほしいこと今回は、実際の財務諸表を参照しながら、利益とキャッシュの違いを理解していきます。ちょっと大変ですが、CFの世界を理解するのには必要な知識です。でも裏技があって、今日の説明内容から得られる数字(営業活動によるキャッシュ・フロー)は、実は答えが直接キャッシュフロー計算書に書いてあります(23,997百万円)。 よって、中身が多少あいまいでも、実際は株価計算が支障なくできます。より深い分析をするときに戻ってきて読んでいただいても全く問題ありません。 3つ

【DCFのキホン④】投資キャッシュフロー

さて今日はいよいよ投資CFについて解説します。その前に、”DCFのキホン③営業キャッシュフロー”はスキップ可でしたので、簡単に議論を整理します。下図の通り、営業キャッシュフローはPLの利益の中からキャッシュ項目だけを抜き出して少し調整すれば計算できるのでした。しかし、なんと!CF計算書に”営業活動によるキャッシュ・フロー”ということで答えが書いてあります。これが③をスキップしても問題ない理由です。途中経過は省略可ってことです。 ところで、前述の通り営業CFも、そして今回説明

【DCFのキホン⑤】ここまでの復習

ここまでのおさらい キホンシリーズ①-④の知識でこの図が分かるようになっています。基本的には、PLの世界では「今年はどれくらい経済価値を生んだか」ということをいろいろなテクニックを使って示すのですが、1点問題がありました。 Point①キャッシュ以外価値なくない?利益って食べられるの?という投資における1丁目1番地ともいえる大原則に、PLは完全に答えることができません。 Point②PLからCFの世界に数字を変換しようというまた至極シンプルな解決策がでてきたのでした。そ

【DCFのキホン⑥】成長がない場合のディスカウント計算

1年先の100円の価値まずこちらの内容を思い出しましょう。最初にディスカウントを取り上げたことを猛烈に後悔しています。結構しっかり書いちゃったから、、、改めて内容を整理すると、 ①将来のフリーキャッシュフローには「リスク」がある ②したがって、リスクに見合うリターンを要求する必要がある ③その際、金利を高く設定するか、(リターン金額が固定される場合)安く投資する、の2通りのリスクの反映方法がある ④適正株価の算出には後者の方法をとる(将来のFCF予想を、固定されたリターンと

【DCFのキホン⑦】成長がある場合のディスカウント計算

成長がない場合の復習 毎年100円のFCFを生み出す会社を想定します。成長はなしです。ずっと一定です。未来永劫FCFを生みだすのに、なぜ未来のFCFの価値を合計すると1つの値に決まるのでしょうか。無限になりそうなものです。そのヒントはディスカウントにあります。未来のFCFの価値を「今いくらで評価するか」ということを考えると、「値切り」=「ディスカウント」をしないと割に合いません。なぜなら、未来の100円は、あくまで想定(または予想)であり、本当にそうなるかは分からないからで

【DCF計算編①】1段階モデル ユニクロの分析

とりあえずやってみよう道具は使わないと使い方を覚えることはできません。 キホン編では以下の内容について学びました。 ①PLから営業CFへの変換 ②(恒常的)投資CFの抜き出し ③フリーキャッシュフロー(FCF)の計算 ④成長のあるFCFの現在価値の計算 1つだけ抜けているのは、③と④の間の、「過去から将来を予測する」技術です。ちょっとそこは横において、今回は①から③までを一気にやってみましょう。 (注意点) 私は、FCFを使ってDCFで目標株価を決める技術を公開します。

【DCF計算編②】1段階モデル ユニクロの分析

将来予測と株価への換算方法ガチの目標株価を計算するのが目的ではないので、過去5年のFCFと常識的な仮定を用いて、DCFを進めていきます。今日のメニューは、 ①過去から未来を予測する ②売上成長率×FCFマージンの上昇率 ③EV(企業価値)と株式時価総額(株式価値) ④DCFを使ってEVを求める の4本建てです。タフですが、刺激的な内容になると思います。なにしろ、ここまで長い長い理論編が終わり、ようやく株価の話ができるのですから!!それでは今日も頑張っていきましょう。 ①

【DCF計算編③】2段階モデル イントロ

1段階モデルのイメージ これはユニクロの例でみたモデルです。いきなり永久成長率を使うので、まったく凸凹がありません。スムーズに増加していきます。 2段階モデルのイメージEVの公式はこちらで解説したとおり、成長率が一定かつDRより小さい状態でしか使用できません。そこで、定常状態に入るまでの業績予想をもっと柔軟に反映する方法が必要となります。そこで、①変動フェーズと、②安定フェーズ、に分けます。 2段階モデルの計算方法 ①変動フェーズ…力技で計算。5年分なら5回割引計算し

【DCF計算編④】2段階モデル ユニクロの分析

ユニクロモデルを発展させよう前回は、パート1とパート2に分けて、ユニクロのバリュエーションを1段階モデルで算出しました。今回は、以下の設定で2段階モデルを使って、より正確に算出してみましょう。例のことながら、このnoteシリーズでは銘柄推奨はしません。したがって、過去のデータを使って2段階モデルの計算方法を見ていきましょう。 状況設定と参考データ現在 : 2016/8の決算発表直後 株価 : 36,000 予想対象期間 : 2019/8まで 当時の経営環境 : 当時の決算

【DCF計算編⑤】2段階モデル ユニクロの分析

予測の変更と目標株価再計算前回からの続きです。全体的にベア(弱気)すぎましたね。中国景気減速と円高の影響からは抜け出せるっていうのが、まず前提。そして、アジアの成長と、アメリカのリストラがうまくいって、ECが乗ってくる。多少設備投資はかかり気味になるけど、成長フェーズが続くって感じですね。特に海外は、アジアの景気回復局面での利益伸長が期待できそうです。上記の条件変更を反映します。赤太字が変更点です。 利益率改善を織り込んだものの、設備投資の加速も同時にインプットしているので

【DCF計算編⑥】【ダウンロード可能】2段階モデルを作ってみよう!

予測期間を10年にした2段階DCFモデルを作る!これまでカバーした内容を総動員してモデルを実際に作ってみます。ずいぶんと長旅になりましたが、実際にモデルを作りながら復習していくことでさらに理解が深まると思います!以下リンク集も参考にしてください。末尾にこの記事で作ったモデルを添付しています。 ①PLからCFへの変換 参考1 利益とキャッシュフローの違い(感覚編) 参考2 利益とキャッシュフローの違い(理論編) 参考3 NI・EBIT・EBITDA・営業CFの関係 ②投資C