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【DCFのキホン⑤】ここまでの復習

ここまでのおさらい

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キホンシリーズ①-④の知識でこの図が分かるようになっています。基本的には、PLの世界では「今年はどれくらい経済価値を生んだか」ということをいろいろなテクニックを使って示すのですが、1点問題がありました。

Point①キャッシュ以外価値なくない?利益って食べられるの?

という投資における1丁目1番地ともいえる大原則に、PLは完全に答えることができません

Point②PLからCFの世界に数字を変換しよう

というまた至極シンプルな解決策がでてきたのでした。それが上図のPL⇒CFへ調整という部分です。ここの橋渡しはCFA試験などでも散々でてくるのですが、最初はたしかにかなり抵抗感があります。少し違う方法で見てみましょう。下の図は、PLとCFのずれと重なりを表しています。左のPLの世界から、CFの世界にいきたいので、重なっているところを残して、左を削除して右をくっつけます。⇒の後に例を載せています。すべて既に取り扱った内容です。

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左のエリアは、キャッシュフローじゃないのにPLに入ってしまっている部分なので、すべてキャンセルします。例えば減価償却はコストとしてPLに計上したものの、キャッシュアウトを伴わないので、キャンセルして利益に足し戻します。
右のエリアは、PLに入っていないけどキャッシュフローに影響があるので、新たに追加します。例えば在庫投資は、キャッシュを使いますが、直接貸借対照表(バランスシート、BS)にいくのでPLを通りません。キャッシュフローを理解すれば、PL⇔CF⇔BSの相互の動き方をイメージできるようになります。ただし必要なことはもう抑えましたし、BSの動きが影響する営業キャッシュフローの計算も、企業がやってくれているので、多少あいまいでも実際は問題ありません。これで、PLの世界の儲けをCFの世界の儲けに翻訳することができました。具体的には、「本業からのキャッシュ・インフロー」=「営業CF」がわかりました。

厳密には、例えば金融業が子会社に入っていると、数字がノイズだらけになってきます。たとえば短期金融市場からの資金調達(コールローン)が、営業キャッシュフローに入ってきたりします。コールローンはただ同然で市場から調達できるのでこういう増減が入ってくると、企業の「お金を稼ぐ力」を誤認することになります。したがって、業態によってはしっかり調整してあげる必要があります。とりあえず、金融業には注意しましょう。いつか詳細な記事を書きます。

Point③減価償却を戻したけど、投資はどこいった?

減価償却を戻したのはいいですが、そもそもの投資は考えなくていいのでしょうか。例えば100億円の工場を建てて、5年で償却するとします。

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すると毎年、減価償却が20億円でるので、毎年20億円だけCF>PLになります。これは得した感じしますね。
でも、この20億円がそもそもどこから出てきたかというと、100億円の工場を買ったせいでした。たしかに、20億円×5年=100億円の分、営業CFはPLより大きくなります。しかし、その対価として最初に「投資CF」として▲100億円を計上しているのです。こうした投資に関するもののうち、本業のために必要なものはすべて営業キャッシュフローから差し引く必要があります。そうすることで、ビジネスに関係する財布を経由する取引を全部捉えることができます。結果として、現金の動きに注目した企業分析ができるようになります。

営業CFから投資CFを差し引くと、「本業から現金を稼ぐ力」=「フリー・キャッシュフロー(FCF)」を計算できるようになります。FCFは、その名の通り自由に使えるお金です。もちろん材料費や人件費を払ったあとの数字ですし、工場などの設備投資も終わっています。当然、税金も払い終わっています(重要)。

Point④余ったFCFを何に使うか

では、一般的にこのお金はどのように配分されるのでしょうか。
選択肢は、株主還元(配当/自社株買い) / (非恒常的な)投資 / 貯金 / 借金返済、などになります。通常、一定の配当支出があります。あとは、銀行預金において置こうが借金返済に使おうが、M&Aに使おうが自由です。

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実際のCF計算書との違いについては、こちらのエントリーをみてください。

まとめ

上記の順番でFCFを計算することで、「標準化された」+「現金を稼ぐ力」を"見える化"することができます。いよいよDCFの計算方法に入ります。キホンシリーズはここまで。実践編にうつりましょう。やっと面白くなります。ここまでお疲れ様です!

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