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【DCF計算編⑤】2段階モデル ユニクロの分析

予測の変更と目標株価再計算

前回からの続きです。全体的にベア(弱気)すぎましたね。中国景気減速と円高の影響からは抜け出せるっていうのが、まず前提。そして、アジアの成長と、アメリカのリストラがうまくいって、ECが乗ってくる。多少設備投資はかかり気味になるけど、成長フェーズが続くって感じですね。特に海外は、アジアの景気回復局面での利益伸長が期待できそうです。上記の条件変更を反映します。赤太字が変更点です。

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利益率改善を織り込んだものの、設備投資の加速も同時にインプットしているので、FCFマージンの改善は限定的です。海外成長を評価してターミナルの永久成長率を強化しました。どうでるでしょうか。計算してみましょう。

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Y22,000からY28,000へ目標株価があがりましたが、当時の株価であるY33,000とくらべると低いですね。いくつかシナリオを試してみます。

複数のシナリオの検討

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太字は株価上昇を示唆するシナリオです。以前から示している基準で、日本の標準はDR 7-8%、gが3%です。標準的なシナリオ選択だと、25000-28000円というだいぶ控えめな目標株価になります。たしかにユニクロは消費循環の中では景気変動の影響は受けにくそうです。実績の安定感も申し分ない。しかし海外売上比率がこれからどんどん上がっていくユニクロのDRをどこまで下げられますか(どこまでの要求リターン低下をのみ込みますか)?将来的には新興国や、南米にもガンガン出店していくでしょう。ということは成長余地を探る展開になるでしょうか?永久成長率4-5%が高いか低いかは、基本的にはバリュエーションの数をこなしていく中で、相対感として自分なりの居所を掴んでいくしかありません。長期的な成長力のエンジンを何個積んでいるか。個人的には、小売業、しかもアパレルの世界でこの数字を織り込ませるのはかなり大変だと思います。栄枯盛衰、ファッションの世界は移り気です。

アップサイドが出てくる可能性

DCFモデリングの目的は、恣意的にアップサイドを作ることではありません。モデリングとは、将来を当てるためだけにするものではなく、複数のシナリオを試して、目標株価への感応度を探るためにも使えます。また、足元の相場が何を織り込んでいるのか理解するための、逆算ツールとしても大きな武器になります。その観点から、もしアップサイドがあるとしたら、どういうシナリオか、ということを考えてみたいと思います。

1)成長が予定以上に加速…中国の景気再拡大、海外の予想以上の出店、ECの急激な伸び
2)利益率が想定以上に上昇…海外の赤字オペレーションのリストラクチャリング加速、円安による為替差益、在庫管理の適正化やロジスティクスコストの低下(自動化投資の成果等)
3)運転資本や税金コストの節約…PLの利益率以外のCF項目に改善がみられる場合
4)ディスカウントレートの低下…事業の見通しの改善、市場の楽観による相場上昇

まとめ

いかがでしたでしょうか。疑問点等あれば、是非コメントをください。お答えします。というかユニクロはカバーしていないので、もしお詳しい人がいたら当時の状況など教えてください。

ところで、3年の変動フェーズではあきらかに、ユニクロの成長余力を評価しきれません。これをモデル上解決するために、変動期に10年を設定し、フルモデルに発展させます。これで計算編は完結(する予定)です。

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