本当に三人寄れば文殊の知恵なのか?
心理学者のアレックス・オズボーンのアイデアを募る実験において、集団Aには「全員で考えて」、集団Bには「各人が別々考えて最後に合算して」と依頼したところ、数の面・アイデアの独創性の面でも集団Bが勝ったと言います。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
3種の協働作業
この事を理解するには、集団での仕事の仕方にはいくつか種類があることを理解する必要があります。
加算的協働:メンバーの貢献が単純に加算される場合(多くのアイデアを出す、募金を集める)
連接的協働:全員が達成しなければ、集団として達成したことにならない場合(スポーツ、合唱、綱引き)
離接的協働:メンバーの誰かが達成すれば、それが集団の成果になる場合(集団で問題の正解を出すなど)
協働作業を低下させる3つの問題
組織行動論の研究知見の中で、協働作業を低下する有名な3つの問題について紹介します
集団圧力:個人に対して、集団の規範や意見に同調するよう圧力のかかる現象。私たちは、根源的に集団に受け入れられたいという欲求があることに起因していると言われています。
集団浅慮:1人ひとりは優秀であっても、集団で決定することによって、愚かな決断を下してしますこと。メンバーが自信過剰になり、異質な意見が排除されます。その結果、深く考えないまま決定がなされ、しかもそれが訂正されにくくなります。1986年のスペースシャトルチャレンジャー号の惨事がこの集団浅慮によるものと言われています。
社会的手抜き:個人が本来できるはずの努力をしていない、もしくは発揮していないために、集団のパフォーマンスが本来あるべき水準を下回る現象です。これは、集団で行うことによる1人ひとりの動機づけの低下やメンバー間での調整ミスによる低下が原因となると言われています。
人々が複数集まることで、私たちが1人1人で活動するときには、起きないような、さまざまな問題が発生します。これをグループ・ダイナミクスと言います。
集団の問題の克服
では具体的にどうすれば、グループ・ダイナミクスをポジティブな方向へと向け、諺のように「三人寄れば文殊の知恵」と集団を活性化できるのでしょうか?社会心理学者のアービング・ジャニスは、集団圧力や集団浅慮に陥る理由を5つあげています。
1、集団の孤立化:集団が独立していて、他から影響を受けにくい
2、手続きについて模範の欠如:意思決定のルールが存在しない
3、凝縮性が高い:メンバーの相互愛着が強い
4、メンバーのバックグラウンドの同一性:似ているため衝突しない
5、リーダーシップの欠如:議論が勝手な方向に流れる
1、2は組織マネジメントの方針に係る問題です。集団が物理的にも心理的にも外部から隔離されている場合、集団浅慮が発生してもそのことを冷静にとらえて是正することは難しいでしょう。
3、4はメンバーの多様性の問題です。「異なる考え方、教育的背景、価値観、知識、スキル」を持った人々の組み合わせと相互刺激が集団に新たなアイデアの創出や成果の向上をもたらします。
5は、リーダーシップの問題と言えます。メンバーが優秀で、モチベーションが高くとも、メンバーを束ねるパワーを持ち合わせていなければ、集団は機能しません。
「三人寄れば文殊の知恵」を実現するためには
1人ひとりの能力やスキル、努力などが相互補完的に結合して相乗効果を生むことによって、集団としての成果が、個人の貢献の総和を超えたとき、その集まりはチームになります。ただ人を集めたり、多様な人を取り込んだりするだけでは、全体の成果が個人の総和を超えないということです。組織マネジメントとリーダーシップの組み合わせにより、実現に近づくのではないでしょうか?
最後までお読みくださりありがとうございました!
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