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新作映画『ザ・スーサイドスクワッド/"極"悪党、集結』レビュー

冒頭、おなじみワーナー・ブラザースのロゴマークと共に聴こえてくるのはアメリカのカントリー歌手ジョニー・キャッシュによる1955年の名曲"フォルサム・プリズン・ブルース"。フォルサム州立刑務所に投獄された男の気持ちを歌い上げた曲だ。


"列車がやってくるのが聞こえる あの角を曲がって

俺が太陽を拝めなくなってから もうどれくらい経つだろう

フォルサム刑務所に閉じ込められ 時間だけが引き延ばされる

だがあの列車は知らんぷりで走り続ける

サン・アントニオに向かって"

(以上、筆者訳)

なんという華麗な幕開けだろう。タスクフォースX、別名ザ・スーサイドスクワッドは、服役する極悪人達を減刑と引き換えに政府が好き勝手こき使うための部隊名だ。そんな彼らの獄中での思いをジョニー・キャッシュのバリトンボイスが代弁してくれている。監督・脚本のジェームズ・ガンの作家性に早くも心を掴まれるオープニングだった。

【ストーリー】

貫禄たっぷりの大女優ヴィオラ・デイヴィス演じる政府の高官アマンダ・ウォラーが、あるミッションのために獄中にいる極悪人達をリクルート。中には娘をダシにして脅されたイドリス・エリバ、じゃなくてブラッドスポートや、かの有名なハーレイ・クイン様、そしてシルベスター・スタローンの声をしたサメ男など。それぞれの個性的な戦闘能力(中にはキャラ被りもいたりするが)を生かして、彼らは命懸けのミッションを達成できるのでしょうか。


【レビュー】

ジェームズ・ガン監督、やりすぎです(褒めてます)。悪党だから何やってもいいということで、モラル無視。悪い奴だけでなく善人をも殺しまくるという潔さ。観ているこちらも、日常生活で縛られている道徳心なんていったん忘れて、とにかく笑って楽しめばいいという魂胆がニクい。でも血みどろで人間の心もない映画かと思いきや、ほっこりと心温まるシーンで泣かせにくるという意外性。これはもう好きにならずにはいられない。いつの時代も、社会が受け入れてくれないはぐれ者たちが結束して、自分達を拒む社会を助けるために命をかけるという物語には、心動かされるもの。実はそんな王道をちゃんと踏襲している、よくできた映画なのです。

ギャグや、振り切ったユーモアの数々を純粋に楽しんでもらいたいので、今回はこれ以上内容には触れないことにする(決してレビュー書くのを放棄しているわけではないのでご勘弁を)。代わりに、たくさん出てくる"極"悪党の中でもお気に入りたちをピックアップしてご紹介。

画像引用元:https://wwws.warnerbros.co.jp/thesuicidesquad/


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光る便座頭(別名もっこりパンツ)

いや、どちらも本名でも別名でもなく、ちゃんとした名前はピースメイカーです。平和の使者という名前の通り、平和のために(という名目で)誰でもかんでも躊躇なく殺しまくる筋肉の塊。頭が便座なので、おそらく脳みそはすでに流れていってしまって空っぽなのがまたいい。


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イドリス・エリバ

またもや演じている俳優名が先に出てしまったが、役名はロバート・デュボア。別名ブラッドスポート。万引きした娘を刑務所に入れると脅され、渋々部隊の隊長を務めることに。悪人のフリして、実は優しい人間の心の持ち主なのか!?ちなみにイドリス・エリバは『マイティ・ソー』シリーズのヘイムダル役でおなじみ、ということでDCとマーベル両方のユニバースに生きる貴重な俳優の一人である。


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ハーレイ・クイン

昨年に日本でも公開された『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/Birds of Prey』を観て大好きになった。とにかくその場の空気を読まない勝手気ままなおしゃべりと、やる時はやるカッコ良さ、無邪気な笑い声が魅力。今回もカオスを生み出しながら、見せ場たっぷり。


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ラットキャッチャー2

なぜ2なのかというと、1は死んだから。うん、分かりやすい。でも実は…。本作での一番の発見は、ラットキャッチャー2を演じるダニエラ・メルキオールに出会えたことだと言って間違いない。これからの注目株である。早速、Instagramもフォローしてしまった。ネタバレになるから言えないけど、この映画を観て流した涙の半分はこのキャラクターのせい。


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ダークナイトでジョーカーに心酔していた男

もはや名前でもない…、失礼。こちらのキャラクターはポルカドットマン、名前と見た目の通り水玉で攻撃する男。演じているデヴィッド・ダストマルチャンは、『ダークナイト』(08/クリストファー・ノーラン監督)にてジョーカーに心酔しゴッサム市長に銃を向け、そのせいでハービー・デントにコイントスゲームで脅される男を演じていた。あの時の顔が忘れられない。


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キング・シャーク(ナナウエ)

人間を真っ二つに裂いたり、頭から呑み込んだりするんだけど憎めないサメ男。『ロッキー』『ランボー』シリーズの伝説的俳優シルベスター・スタローンが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』に続いてジェームズ・ガン監督作に出演ということでワクワクしていたら、なんとこのサメ男の声だと聞いた時には笑った。


以上の6名は、数多く登場する"極"悪党の中でも特にお気に入り。


ちなみに『マイティ・ソー バトルロイヤル』『ジョジョ・ラビット』の監督で、現在公開中の『フリー・ガイ』に出演しているタイカ・ワイティティが、出番わずかながら全てを持っていくおいしいキャラクターで登場するのでぜひ見逃さないように。


アメリカ政府にいいようにこき使われる悪党たちが、極限状態で見せる勇気と人間性に心動かされるヒューマンドラマ。もちろん全編に渡って血が飛びまくり、人が死にまくりなんだけれども、法を犯した彼らに人として大事なことを教わった。あっぱれ、ジェームズ・ガン。そしてクセのあるキャラクターを自分のものにしたキャストたち。


【おすすめしたい人】

アメコミ映画が好き

アクション映画が好き

はぐれ者の人生を賭けた大勝負に勇気をもらいたい

ポップコーン食べながら頭を空っぽにして楽しみたい

スカッとしたい

戦う女性キャラの大活躍が見たい

イドリス・エリバのセクシーボイスに射止められたい



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