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当たり前がなくなる前に

昨晩の出来事だ.いつも通り勉強を終えて家に帰宅すると母がベットで寝ていた.母はここ数年の間にずっと続けていた陶器の仕事を辞め,派遣会社に努め始めた.そのため,ここ数年で母の生活スタイルは変化し,9時頃には就寝して,朝早く起きるという習慣になっていた.

ついこの間,母と雑談をした.「最近の仕事はどんな感じなん?」と聞くと,「仕事でいっぱい動けるからすごく運動ができて楽しいよ」と答えた.そう,母は体力系の仕事をしているのである.人生100年時代だとは言え,普通に考えればもうすぐ50歳間際の人間が再度就職できる場所は少ないであろう.

ある日の夜の出来事である.自分が勉強を終えて,30分ほど電車に乗って帰宅したため,9時過ぎに家に到着した.

自分が帰宅した物音で起きたのか,自分に向かって話かけてくる.しかし,いつもと違う違和感があった.なにやらいつもより声が小さい.その違和感に気が付いた僕はすぐに「風邪引いたん?」と聞いた.すると母は「うん」と返事だけした.

普段から人一倍元気で,動いていないと気が済まないような母だ.そんな母が風邪を引いて弱っている姿をちゃんと見たのは久しぶりだった.とは言っても,ここ1年で3回も風邪を引いたらしい.自分のことで精一杯だった僕は,そんなことも気づいておらず,母からその言葉を聞いて初めて知った.

かといって,母に関心がない訳ではない.自分の勝手なイメージであるが,母は超健康体であると思っているからである.それこそ,自分が高校生くらいのときは,ここ何年と風邪を引いていないと言っていた.

なのに,いつからこんなに弱くなってしまったのだろう.別にボケ始めた訳でも,顔が老けた訳でもないのに.ただ,あの時から時間だけが経過したのは分かる.母はいまの仕事に満足していると言っているのに,満足した状態でこんなにも風邪を引くようになってしまったのだ.

こんな光景を見たからなのか,ふと頭によぎってきた.母はいつまで生きているのだろうと.

こんなことを想像するのは不謹慎でしかないが,風邪を引いている母を見ていついなくなるか分からないなと思ってしまった.

それこそ,現在の地球では戦争が起こっている.平和ボケした日本にいるだけでは,戦争のことなど関心がない人が多いかもしれない.

だが,テレビを付ければ連日戦争で壊された建物や家族を失って泣いている人の様子などを目撃する.きっと戦争をしている両国の国民たちも,戦争が始まるまではいつまでも普段通りの「当たり前」が続くと思っていただろう.しかし,それは一瞬で変わってしまった.

そんな出来事が起きているからこそ,人間は儚く,ふとした瞬間にいなくなってしまうのではないかと感じた.

そう思うとゾッとするが,だからこそ今できることをする必要があると感じる.母に対してもそうだ.いつか立派になってから「親孝行」をすればよいと考えていても,その「いつか」はいつ来るのだろうか.

はたまた,今こうやって普通に暮らせている「当たり前」はいつまで続くだろうか.だから,今すぐ行動する必要があると感じる.

自分たちにとっての「当たり前」がいつなくなるかは誰にも分からない.きっと神様だって分からない.だからこそ,「当たり前」がなくなる前に今自分にできることを始める.それが後悔をしない生き方なのではないかと感じた.


だから,今日という1日1日をもっと大事にしたいし,大それた親孝行はできないかもしれないけど,せめて普段からケンカをしないでニコニコと笑っていられるような生活をさせてあげたい.

最後に,言葉では照れくさくてなかなか伝えられないから文面で感謝を綴る.

「本当にいつもありがとう.」


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