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あの時彼が言った「知らんけど」

当方、出身は関西ではない。が、学生時代数年関西で暮らした経験を経て、外から見た関西人の性質みたいなところを少しは勉強してきたつもりでいる。


関西に暮らしたことがない頃、私にとって"関西弁"はなんだかかっこいいものだった。関東の人からしたら私のしゃべる言葉も少し関西っぽく聞こえるらしいのだが、実際にはまったくそうではなくて、はぎれもよくてテンポもいい言葉が、私には新鮮でかっこよくて仕方がなかった。


高校生の時、関西に行ったら関西弁の彼氏と付き合う!なんて意気込んでいた私だけど、最初に出来た彼氏は広島出身だったし、その後は思いもよらずアメリカ人と恋愛したりなんかして、やっと関西人と付き合ったのは大学生になって3年たってからだった。生まれも育ちも大阪というコテコテの関西人だった。彼は世の中の出来事を斜めからみて切っているような鋭いタイプの人で、どちらかというとのほほんとした人とばかり付き合ってきた私にとっては、新鮮なひとだった。


彼に限らず関西人には広く言える事だけど、彼らは会話の最後に「知らんけど」を付けることが多々ある。

当時の私はそれを、会話を少し"面白おかしくする要素"であったり、"責任回避"みたいな意味でどこかとらえていた。例えば「レポートの提出早めにした方がいいらしいで。」っていう言葉に「知らんけど」をつけて"責任回避"してみたり、それに対して「知らんのかい!」というツッコミを待って面白おかしく会話をしめてみたり。


もう5年以上前のことになるから思い出せないけど、思えば私はこの"知らんけど"に何回も騙され、ごまかされ続けた気がする。

就職後3年ほどしたら結婚しようと彼は言っていたけど、その前にすると言っていた一人暮らしをする気配が全くなく、いつからするのか聞いたら「1年後くらいちゃう。知らんけど」と言われたり、前述通り思い出せは出来ないけど、他にもたくさん言われてきた気がする。

20代も半ばに差し掛かってきた私はそんな彼の知らんけどな状況に嫌気がさして、その他にもいろいろと原因があったんだけど、お別れする道を選んだ。


今、その恋愛の渦中にいない私が冷静に分析してみると、多分"知らんけど"の中には照れ隠しみたいな要素もあると思う。真面目なはなしをして空気が重くなった時、会話や空気のチャーミングさやオチを重んじる関西人にとってその"知らんけど"が、照れ隠し兼オチとしての重要な要素となることもあるように感じる。

たぶんきっと大阪の彼も、本当に私との将来を"知らん"と思っていたはずではないと思う。その証拠に別れる時はめちゃくちゃにごねられたし、別れた後友達を通して彼が後悔していることを何度も聞いた。

彼が知らんけどという言葉を使っても使わなくても、きっと私たちが夫婦になることはなかったんだろうけど、もっとあの時の私が"それ"を照れ隠しなんだととらえてあげることが出来たら、恋の寿命はもう少し延びていたのかもしれないと、今になってみてそう思う。知らんけど。


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