【怖い話・怪談】リモートワーク会議に突然現れた新人

はじめに

新卒で入社した私の会社が急に在宅勤務へと切り替わった。

このご時世だし、休日も家に引きこもりがちな私にとって、在宅勤務はありがたい話だ。

しかしビデオ会議だけに関しては、正直もうこりごりだと感じている。

この話は、私がリモートワークに慣れ始めた頃に体験した不思議な話です。

突然現れた新人

いつものチームで行うビデオ会議に知らない人がいる。

それが分かったのは、会議が始まって5分程度たった頃だ。

髪は決してケアが行き届いているとは言えないパサついた黒髪で、長さは腰あたりまでありそうな女性。

画面には顔を映さず、首から胸あたりまでを映している。

顔が見えないので年代などは判別できなかった。

しかしベージュでフリルのついた古臭いワンピースのような服装が、現代的な真っ白い壁と対比し印象的だったのを覚えている。

誰も気付いていない？

私の職場は人の入れ替わりが激しい。

在宅勤務になってから、私のチームだけでも2名ほど人の入れ替わりがあった。

なので新人が入る事にはなんら違和感のない話だ。

しかし今回だけは、決定的に他の新人と違う点があった。

ビデオ会議中のメンバー全員、誰もその人には触れないのだ。

しかも新人が入った際は、上司からの紹介が必ずあるはずだ。

それが今回に関しては何もない。

ひょっとして取引先の偉い人で、参加する事を私が忘れていた？

など色々考えた結果、下手に彼女に触れるのは愚策だと考え、会議中はだんまりしている彼女に触れない事にした。

会議終了後

結局、彼女には誰も触れる事なく会議が終わった。

会議が終わった瞬間、私はいてもたってもいられなくなり、すぐに同僚にチャットを飛ばした。

「今日の会議に参加してた黒い服の女性って誰だったの？」

すると友人が

「え、そんな人いなかったけど？」

と、

どうせ会議もまともに参加していなかったのだろう。

私は上司に同じ質問をした。

すると、

「今日は新人の入社や、取引先の会議参加はありません」

と。

私は一気に寒気がした。

ビデオ会議に参加していた女性は私にしか見えていなかったのだろうか。

誰かいたずらで入ってきた？

でも私にだけ見えているのは明らかにおかしい。

色々考えていると、後ろから変な声が聞こえてくるのがわかった。

新人の正体

「フ・・・・・・フ・・・・・フ・・・・」

笑っているのか、呼吸しているのかわからない。

かすかな女性の声が後ろから聞こえた。

ビデオ会議が終わり、静まり返る部屋でその声だけが聞こえていた。

私はどうしてもきになり、恐る恐る後ろを振り返ると「ヤツ」はいた。

腰あたりまで伸びた真っ黒でバサバサの髪。

ベージュのワンピースはボロボロだ。

間違いない、彼女だ。

裸足の彼女の手足は土汚れが異常についていた。

私が振り返った後も、彼女は「フ・・・フ・・・」と笑っている。

かすかに痙攣しているその顔は、目の中がちょうど空洞のように真っ黒になっていた。

後日談

気が付くと、目の前は真っ白い現代的な壁が見えた。

私はあまりの恐怖に気を失っていたのだろう、すでに朝になっていた。

彼女がいた方向に身体と椅子を向けたまま目が覚めた形になる。

あまりの恐怖で、とにかく家から飛び出したい。

とにかく近くに住んでいる友人に電話をかける事にした。

電話をかけながら、急いでカギや貴重品をかき集めているその時、ある事に気づいた。

彼女がビデオ会議に参加していたとき、背景は真っ白で現代的な壁だった。

ビデオ会議が終了し、私が振り返った瞬間、彼女がいた。

私の壁も白である。

あの背景の壁が私の家の壁と一緒なら、彼女はビデオ会議中ずっと私の背後にいた事になる。

そんな考えが頭をよぎった瞬間、友人にかけているはずの電話口から

「フ・・・・フ・・・・・フ・・・・」

と声が聞こえてきた。