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メディア/コンテンツの美学について_DataTailor_気になるNEWS_2020908

DataTailorにてメディア運営・コンテンツ作成に関連した気になるNEWSを毎週更新!!!と言いつつ、長らく三日坊主になっておりました。今回号は、何とかかんとか、1週間とちょっとぶりで更新が出来ました。

■人を傷つける広告は必要なのか?

ネット広告の闇をクローズアップ現代で特集し続けたNHKが、非常に重要な点を提起していました。メディアパーソン/広告人として、見過ごせない内容が多分に含まれていると思いますので、是非ともご覧下さい。

外見によって、「異性から嫌われる」「不幸になる」などと、危機感をあおって商品の購入を誘導するような表現も目立ち、中には、「太った体型を否定された女性が自殺を図る」といった描写のものもあります。

人を不快にさせたり、傷つけたり、ともすれば騙したりしているものが「広告」を装って跋扈しています。このような過度なものが跋扈するのは、不安・危機を訴求したものの方が、「CTRやCVRが高い」という(運用型広告としての)結果が出ているからです。(不快になって嫌いになった/傷ついた人がいることや、冷静な判断が妨げられて、ある種騙されて購入してしまった人がいるかも知れないという事実は無視されています。)

私の個人的な意見ではありますが、広告としてあり得ないものだと思いますし、そもそも「商品」の「売り方」としてもあってはならない(私の美学や志には大きく反する)ものだと感じています。

人はそれぞれ多様な特徴を持っており、身体的な特徴もその一つです。その特徴は多様性であり、正しく理解することが大切です。一部の身体的特徴をコンプレックスであるとして表現することは、差別意識を温存、助長するものであり、決して許さるべきものではないと考えています。そのため、この様な広告表現については、広告掲載基準に抵触すると判断し、今後該当する広告については広告掲載をお断りいたします。

Yahoo!は、いち早く、上記のような「コンプレックスに関する表現の広告審査について」という方針を打ち出されました。「コンプレックスとは、具体的にどこまでを指すのか?」というところは、考査の運用で若干幅も出るところかと思いますが、上記のような「広告の仮面」を付けたものが跋扈することに対しての危機/課題意識の現れとして方針発表されたのでしょう。この範を、私たちも参考にし、考査の最適解は求めて行きたいと思います。(読者の皆様からも各種ご意見は頂戴したく存じます。)

なお、この問題を考えて行く中で、2016年に問題が顕在化したWELQなどの問題からの学びを広告/メディア業界は活かしきれていないな。と反省しました。

■キュレーションメディアの迷惑なコンテンツ

WELQなどの何が問題だったのか?が風化しているのかも知れないので、当時の記事で振り返ってみたいと思います。

16年8月に公開された「肩こりがひどいのは病気が原因?気になる怖い病気とセルフ対処法」に、「肩の痛みや肩こりなどは、例えば動物霊などがエネルギーを搾取するために憑いた場合など、霊的なトラブルを抱えた方に起こりやすい」との記述がみられる。
別の記事では、特定の成分について、ガンやインフルエンザ、放射能障害にも効果があると明記されていた。

今から見れば、「馬鹿げた記事」「そんなことないでしょ?」というものが多く並んでいるかと思います。だけども、なぜこのような記事が量産されたのでしょうか?それは、世の中の人達の「検索ニーズ」があり、「検索上位」になり、多くのユーザーが流入すれば、「アドネットワークで収益化」できるからです。

「医療情報を扱うWELQであっても、KPIの『来訪ユーザー数』さえ達成すればよいような状況です」(DeNA社員Bさん)。SEOとクラウドソーシングを掛け合わせ、信頼性が低いが検索上位に来る記事を大量に、組織的に生産する。

「収益化する」ことと、そのための「KPI」だけを見て、読者と誠実に向き合わなかった(記事を見た読者に迷惑を掛けようが知ったことではない)という姿勢でのメディア運営が為されていたからだと推察されます。(WELQを例としていますが、WELQ以外にもあったという事実も申し添えます。)

なぜ、人の迷惑を鑑みず、収益が立つ事業を進めようとするのでしょうか?

■理念や美学や志の必要性

「収益」が全てを潤すとでも言わんがばかりに、「他人様への迷惑」を無視して、上記のような広告やコンテンツが流通しているのは、何故なのでしょうか?

ここも完全に私見ではありますが、「なぜ、その事業/商品を為すのか?ということの理念・信念・美学・志」というものが無いからではないかと考えています。「儲かればOK!That’sALL」という価値観しかないからではないでしょうか?

私も聖人君子ではないので、偉そうなことを申し上げられませんが、世の中のサービスや商品(メディアも、サービス/商品の一類型です。)というものは、「誰か」の「何か課題」を解決したいという起点(理念・信念・志)から始まっているものなはずです。

事業責任者なら、誰しも自分のサービスが多くの人の支持を受けて、事業成長 ≒ 「売上や収益の拡大」を追い求めるかと思います。ただ、「売上や収益の拡大」という数値が一人歩きして、サービスを「お金儲けのための道具」と捉えた時に、前述のようなモラルハザードが起こるのではないでしょうか?

常に原点の、「理念・信念・志・美学」に立ち返って、これから逸脱した広告やコンテンツを行っていないか?を見つめ直したいと思いました。

ということで、今回の記事は、いつもの業界時事ニュースと少し色を異にしましたが、私の個人的な思いも混ぜて、コラムとして書かせて頂きました。

なお、私たちも広告における健全化は、まだまだ道半ばなのも事実としてございます。私たちがご提供するサービスにおいて、「不適切ではないか?」「もっと改善をして欲しい!」という忌憚の無いご意見もどんどんお聞かせ頂けますと幸いです。この記事で申し述べましたように、志を持ち、美学に反しないよう、取り組んで行く所存でございます。

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最後に、編集後記的な話を一つ。ご縁があり、境治氏とお話をさせて頂き、改めて著書も読み直させて頂きまして、「志」ということについて、考え直す機会を頂戴しました。このため、今回の記事については、「志」というキーワードが多く登場します。(私の名前にも「志」が入っているので、大好きな大切な言葉です。)

※境氏の著書リンクを張らせて頂きましたが、ステマではございませんw
(アフィリエイトリンクも仕込んでいませんw)

<<執筆>>原 直志


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