見出し画像

データの力でエコーチェンバーは克服できるのか

エコーチェンバーという言葉を知っていますか?今、私たちがデータで解決したいと考えている、大きな問題です。エコーチェンバー(エコーチャンバー現象、Echo chamber)とは、「反響室」のように、狭いコミュニティで同じような意見を何回も見聞きすることで、自分の意見が増幅・強化されていく現象を指します。

エコーチェンバーが起こる構造的な原因は大きく2つあります。

・SNSが「自分の興味のある情報」を集める仕組みであること
・メディアのマネタイズ方法の変化

デジタル時代全盛期の中では、情報へアクセスする動機が「自分の興味のあるもの」「興味をそそられるもの」という能動的な行動になっています。

SNSは自分の興味の範囲をフォローしていくメディアであり、SNS全盛期の中でメディアのマネタイズ方法も、「興味をそそるセンセーショナルな見だし」をつけてアクセス数を集めるマネタイズモデルに変化しています。

これにより「自分の意見と近しい人」「自分の主張に近しいニュース」ばかりを集めるようになり、自分の主張こそが正しいのだという極端な考え方が助長されてしまいます。

(例えばこちらの記事でも言われています)

エコーチェンバーに陥らないために必要な視点

構造要因を把握した上で、どうエコーチェンバーを避けていくべきか?を考えた時に、私が高校〜大学時代に行っていた英語ディベート活動がヒントとなるのではと考えています。(実は、大学時代に英語ディベート全国大会で優勝したことがあります。遠い昔・・・)

あまりイメージがないかもしれませんが、私が行なっていた(そしていまも全国で行われている)「競技ディベート」では、自分の主義主張に関係なく、命題に対する賛成、反対のどちらかに無作為に役割を割り振られ、その試合中は賛成・反対の割り振られた役割に立って主張をするルールとなっています。例えば、「死刑廃止」という命題があれば、自分の主義主張はさておき、ある試合では賛成を、ある試合では反対を主張するルールになっており、賛成/反対どちらに割り当てられるかは試合の直前まで分かりません。そして同じ命題で違う相手と試合を繰り返すので、賛成/反対どちらの主張も準備する必要があります。

ここでは「自分の意思とは関係なく」という点が重要なポイントです。どちらのサイドにたったとしても説得的な議論をするためには、両サイドそれぞれの寄って立つ根拠を知ることが重要です。それによって、直感的には「絶対にAだ!」という強い気持ちがあっても、「Bという立場の人は、なぜBだと考えるのだろうか?」に興味関心を持ち、多角的に判断するための情報集めをする癖ができ、「他者の立場、視点を考える」ことに繋がります。


「強い根拠」を知る

他の意見を知る上で重要なのが、「強い根拠」について知ることです。しばしば起こるのが、異なる立場の主張を持った相手の主張のうち、相手側の「弱い根拠」を叩き、単に自説に対する確信を深めたり、ある種の優越感・使命感を充足させてしまうことです。

例えば、新型コロナワクチンが話題です。コロナワクチンの接種に関して、大きく2つの意見や立場があります。

①ワクチンのひどい副反応が起きているから怖い、ワクチンは打ちたくない
②統計的に見てインフルエンザワクチンよりも副反応が起こる確率が少ない

①と②の主張は、科学的かどうかはさておき、どちらも一つの事実としては間違ってはいません。しかし、ただ事実を吸い上げるだけではなく、なぜその言説が広まっているのかを理解することも必要です。例えば①の「ワクチンを打ちたくない」という人々の根底にあるのは合理や数値を超えた「なんだかよくわからない薬を打つのは怖い」という心理的抵抗感や不安感から発生するものです。

その時に正しいから、といって「統計的に」「事実で考えれば」などのファクトを突き付けても、おそらく説得されないでしょう。

自然言語処理で「説得」の仕組みを可視化する

エコーチェンバー問題をより深く理解するためには、「何によって人々が説得されているのか」を明らかにすることが重要です。そのため、「自分の立場と別の人間の観点を考える」体験をデータを使って擬似的に作り出すチャレンジを考えています。

先に触れたディベートのように「テーマに対して賛成の人は反対の人の意見を、反対の人は賛成の人の意見を見る」仕組みを通じ、逆の立場を見ることで思想を柔軟化することが狙いです。そのため、自然言語処理技術を用いて、特定の社会問題や製品サービスに関連する書き込みデータから「特に行動の変化につながっているもの」を抽出、学習することで、あらゆるトピックの「説得」が起こる仕組みを表現することを構想しています。

現在、大学研究室との共同研究を準備しており、特に自然言語処理技術をバックグラウンドに持った方で、このプロジェクトの企画や技術検証を相談させて頂ける方を探しています。BERTなどの深層学習モデルを使った自然言語処理の経験がある方、データや分析技術を活用して社会問題を解決したい方、是非お気軽にご連絡いただければと思います。

まだ検証がスタートしたばかりですが、事業としてのマネタイズも見据えているので、新規事業を初期の段階から検討・開発していく機会を得られると思います。カジュアル面談などを含め、弊社は基本フルリモートスタイルですので、時間場所問わずです!ご興味が少しでもありましたら、Twitter もしくは Facebook の DM か、メール info@datastrategy.jp でご連絡頂ければと思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?