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【読書記録】「〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学―」ミケーレ・ボルドリン

知財という考え方がイノベーションを阻害するという主張の本です。
こういった書籍は、特に知財に関係する仕事に携わっている人にとってはアレルギーのある話題であると思います。 ですが、本書における主張は極力公平に見ても強い論理を展開しており、否定する側のおおよその主張は印象論に寄っていると感じています。

今回特には例を挙げませんが、この本の主張と対をなす書物として「繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史」という本もございます。この本は科学のイノベーションがどれだけ人類に多く貢献してきたかということを挙げている書籍で、経済崩壊、貧困拡大、環境汚染、人口爆発のような悲観的な論調に対する反証として数多くの例を挙げており、リソースは知財権として管理するよりも解放した方がより大きなリターンを得られるという思いになります。

実際に、ことの良し悪しはともかく、中国やロシアのような大国も技術をパクることにより急激な発達を実現しており、それでいてさらにパクった技術を発展させて、オリジナリティを持つまでに至っているので、果たして知財という考え方は本当にイノベーションに寄与しているのか?は疑問に思えてきます。

結局、問題点を論うというのは、リソースを独占するための格好の手段だ。という側面もあると思います。 とはいえ、この本の主張に全面的に倣うには、現状では些かドラスティックに過ぎるとは思いますし、知財権にしたって、著者に還元するにしても独占的なやり方を用いない方法に変えればいいなど、色々ソフトランディングしていい感じの着地点に落ち着ける方法も出てくると思います。(実際そう主張してますし)

近年、知財や個人情報保護など、情報を管理する傾向がますます強くなっていく一方で、技術の融合はさらに速いスピードで為されていくことでしょう。 そうした状況を踏まえると、10年以上前の本ですが改めて知的財産管理を見直す方向に焦点が向く機会もあると考えます。


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