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【アドベントカレンダー2023:9日目】意思決定を支援するということ

みなさま、こんにちは!
2023年アドベントカレンダー ラストとなる9日目を務めます、株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー(以下データアドベンチャー) サービス開発室室長兼データサイエンティストの吉川です。

データアドベンチャー初の試みであるアドベントカレンダー。
有志で集まったメンバーが、それぞれ
・今年の漢字一文字
・自由に書きたいことを書く
・来年の目標・抱負
という構成で書いていきますので、よろしくお願いいたします。


今年の漢字一文字

今年の漢字は、「覚」です。

仏教において覚悟とは真理に目覚めることで、覚は不覚に悟は迷にそれぞれ対応しているそうです。不覚とは煩悩に覆われ妄念にとらわれている状態です。
私は不覚とは世界を好き嫌いのような自分の都合によって解釈してしまうような状態を指すのかなと考えています。好き嫌いは執着に変わり、執着は多くの場合誤った判断につながります。
この不覚を退け、覚に至るために私たちは多くの先人の教えを学べます。
仏教以外にも不知の自覚罪を憎んで人を憎まず、仕事において事実と意見を分けるといったような教えや方法論は枚挙に暇がありません。問題の切り分けは人類普遍の問題のように思います。
データサイエンスはデータから世界についての洞察を得るための方法論であることから、不確実性の高いビジネスにおいて問題の切り分けや問題解決にあたって有用であることは間違いありません。

しかしながら、私たちはなぜデータから洞察を得たりインテリジェンスに変換したりするのでしょうか。この問いを常に認識しておかなければ、私たちはデータサイエンスに執着した不覚の状態に陥ってしまうのではないかと思います。より良い意思決定のためにデータがあるだけで、データがあることは意思決定の必要条件でも十分条件でもありません。

そこで今回は、新規サービス責任者として駆け抜けた1年を元にデータによる意思決定の支援について考えてみたいと思います。

◾️部門責任者のお仕事

データアドベンチャーでは、2023年4月よりお客様への提供価値をさらに高めるためにサービス開発室という部署を立ち上げました。私はその責任者をしております。振り返ってみると今年は意思決定の連続でした。意思決定は文字通り意思を決めることです。自分が何をするのかを決めることは容易なことではありません。決めることはその他の道を全て捨てることと言い換えられます。私は生来の価値観や現在の職種から何かを決める際には何かしらの実験を行いその結果を元に決定するようにしています。

では全てそうしてたのかと言われるとそんなことはありません。データで意思決定を支援している身からすると大変恥ずかしいお話ですが直感や価値観で決めることはありました。改めて意思決定者とはなんとも大変な仕事をしているんだなと感じる機会が多くありました。

◾️データによる意思決定

データを元に意思決定するいわゆるデータドリブンは状況依存的な考え方であると言えるでしょう。当然データが存在していなければ実行不可能です。私の所属する部署は立ち上げまもないためデータは存在しません。ですから成功確率を高めるための実験をし、データを集め、それを元に意思決定をしていきたいと考えます。
さて、ここで大きな問題が生まれます。それは何を実験すべきなのかという問題です。これを考えると意思決定のために実験が必要で、実験のためには何を実験するかという意思決定が必要となる。ループしてしまいます。意思決定のための意思決定が必要になる。困りました。

◾️検証可能性と手続きの保存

この問題は何を仮説として取り扱うかという問題に置き換えることができます。仮説はこれから検証するものなのでそれ自体を事前に検証する必要はありません。もちろん明らかに有用そうな仮説があればそれに取り組みたいですね。しかし多くの場合それがわからないから困ります。

実はこの問題はすでに解決されています。ビジネス用語で「決めの問題」といいます。決めの問題を丁寧に表現すると「選択肢が複数ありどれも大差ない状態で慎重に検討するよりも決定して先に進む方が良い」ということです。物事には正しく進める以外に前に進めるという考え方があります。確かな証拠などなくとも前に進むために重要なスタート地点です。大切なことは適切な意思決定と誤った意思決定から学ぶ姿勢です。学ぶためにまずは進めてみる、必ず検証可能にしておきます。これを「手続きの保存」と名付けました。

検証とは学びを得ることです。学びのために検証ができない状態なのであれば、まずは前に進んでみることです。両利きの経営というのでしょうか。そういえば弊カンパニー社長がそんなお話をしておりました。今どちらに取り組んでいるのか、常に自覚的でありたいものです。

◾️問題の所有者

ではその「決めの問題」における「決め」は誰が決めるのでしょうか。これは問題の所有者です。問題の所有者はその固有の価値観から何を問題として取り扱うかやどのような問題として取り扱うかを決定します。当然ながらその結果に責任を持ちます。最近では勤務形態について出社・リモート・ハイブリッドどれが良いかという議論がよくあり様々な指標で語られますが、どのような観点(自社利益最大化や従業員満足最適化、あるいは複数制約での最適化)から問題解決を行うかは問題の所有者に委ねられます。問題の所有者は専門家に対して「答え」を教えてほしいとは思っていないが「答え」に近づける方法を教えてほしいと考えています。

◾️意思決定スタイル

問題の所有者は固有の価値観から問題を決めると書きました。さらに人によっては問題設定と意思決定スタイルが強固に紐付き自己完結していることがあります。自分が正しいのだから自分の問題設定と意思決定は常に正しいと考える独善的な状況をイメージすると良いでしょう。この場合手法は関係ありません。誰が問題設定し誰が意思決定したかだけが重要です。
これは極端な例ですが、人は誰しも意思決定において経験や価値観から重んじるスタイルがあるそうです。データの専門家でも結局は人間でこのスタイルからくるバイアスから逃れることはできません。このバイアスは時に有用で時に有害です。意思決定スタイルもノーフリーランチということです。もしも特定のバイアスが組織全体に働いているとすれば、それは問題解決能力の一部を自ら放棄しているようなものです。個人にはバイアスがあっても集団ではそうでないことが嬉しい。私は集団的知性とはこのようなものではないかと考えています。

私は事実とデータを元に動くスタイルに偏っているため2つのことを行います。1つは同じスタイルを持つ専門家との部分的な差異を検証すること、2つ目はそれ以外の視点や専門家の意見をなるべく聞くようにすることです。1つ目は自分の考えの浅さや論理矛盾を知るため、2つ目は他のやり方考え方を取り入れるため。両方とも重要な営みです。

◾️データによる意思決定の支援

リーダー(意思決定者や問題の所有者)の責務は決めることです。決めるためには自分の意思決定スタイルを自覚しその長所はより伸ばし短所は補う。これが組織での意思決定の魅力でしょう。1人ではどちらもすぐにはできません。意思決定は常に時間制約との戦いであることを忘れてはいけません。そのように考えるとデータによる意思決定の支援はこの2つのパターンに分かれるのでしょう。1つ目はデータによる意思決定を実践しておりその能力をさらに伸ばしたいパターン、2つ目は意思決定におけるデータ活用の実践方法がわからないパターンです。

データによる意思決定の支援はパターンによってアプローチが異なります。1つ目では既にいるデータの専門家と議論・討論し意思決定者にそれを説明する、2つ目では意思決定者にデータ活用の利点と限界を説明し有効に使えるようにするような取り組みです。弊社の実際の支援はこれらが横断的に行われています。もちろん使うデータの品質を守ることもデータによる意思決定の支援です。

◾️終わりに

データサイエンティストを目指すきっかけや実際にデータによる意思決定の支援を実践ではデータによる判断を是としない意思決定者に辟易するシーンがあります。しかし意思決定はデータ以外の要素も多分に含みますしそもそも問題の所有者が最終的に実施することです。意思決定を支援したければデータに執着することは不覚であると知り、それでもなおデータが意思決定にいかに有効であるかを説明し実践するための知識やスキルを身につける必要があります。孫子曰く「彼を知り己を知れば百戦危からず」。データによる意思決定の支援をしたければデータでできることだけではなく、意思決定者や問題の所有者について深く知ることが重要です。それが覚に至る1つの方法でしょう。

◾️終わりの終わり

発起人のつぶやきから始まったアドベントカレンダーですがサクッと希望者が集まり実施までに広報の協力、カンパニー長の決定など手続きがスムーズに進みました。ご協力いただいたみなさまありがとうございます。思い返せばデータアドベンチャーの魅力の1つはこういったフォロワーシップではないかと思います。誰かがやろうぜというと応援してくれたり手伝ったりしてくれるメンバーがいます。物事はリーダーシップだけでは成り立たず、こういったフォロワーシップあってこそです。
データアドベンチャーは150人を超える規模になりました。いつまでもこの精神が浸透している組織であり続けたいです。何かしたいことがあっても誰も応えてくれないのであれば進みません。それは組織として機能不全ですし、何より楽しくありません。

せっかく働くなら、楽しい組織であり続けたい。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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