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SaaSのプロダクトグロースサイクル設計の勘どころ

この記事は、「freeeデータに関わる人たち Advent Calendar 2020」の20日目のエントリーです。

NewsPicks愛好家オジサンこと、freee Analyticsチームの岡田です。

今回は、SaaSプロダクトの進化や健全性を計測するために、どのような視点が必要か?どんなKPIが良いのか?について、実際にSaaSのプロダクトグロースサイクルを作って整理してみました。

きっかけ

freeeでもグロースサイクルを作ろうと思ったのは、深津さんと樫田さんのnoteを読んだことがきっかけです。

最初見た時は、「なんかカッコイイな〜、作ってみたいな〜😍」という完全にミーハー気分だったのですがw、考えているうちにコンセプト自体は今のfreeeにマッチすると思いました。

グロースサイクルへの2つの期待

1. プロダクト全体の進化や健康状態を把握できる

freeeでは意思決定プロセスにおいて、データによるエビデンスを重視する文化が根付いてます。そのため、日頃からプロダクトの各機能がどれほど利用されているか、どういうセグメントに良く使われているのかなど、様々な切り口でデータ分析やモニタリングが行われてます。

一方、KPIが細分化されていくにつれ、「プロダクト全体として良い状態に向かっているのか?」分かりづらい課題感がありました。

2. プロダクトモジュールごとのKPIの繋がりを把握できる

freeeではプロダクトの成長に合わせて、プロダクト全体のビジョンからモジュールごとの理想な姿を考えてKPIに落とし込んでいます。

同じプロダクトビジョンをベースとしたKPIなので、それぞれが強い負の相関関係になるとは考えにくいですが、各KPIがバランスの取れた状態になっているか、繋がりを把握したいと考えていました。

SaaSのプロダクトグロースサイクルの基本構造

SaaSのプロダクトグロースサイクルの基本構造を、①使う・使いこなす、②サクセス、③信用・継続、④認知、のパートで考えました。

アドベントカレンダー2020 analytics FY21Q2 (3)

1. 使う・使いこなす

ユーザーがプロダクトに対して「こりゃ、いいわ」となり、使い続ける状態のパートです。

使い続けることで効果が出ると言われても、専門知識が必要、初期設定が面倒、日々の入力作業が多い、などの障壁があると、ユーザーが効果を実感し始める前に使うのをやめてしまいます。

そのため、SaaSプロダクトでは、チュートリアルやヘルプ機能を充実させる、初期設定や既存データの取り込みを必要最小限にとどめて簡単にする、UIを使いやすく親しみやすいものにする、ゲーミフィケーションの仕組みを取り入れる、などの改善が日々行われているのではないでしょうか。

2. サクセス

ユーザーがプロダクトを使い続けることで、ユーザー自身のビジネスがサクセスしているパートです。つまり、ユーザーの売上、コスト、利益が改善している状態です。

SaaS業界でカスタマーサクセスと言うと、Churn Rate(解約率)を下げる、アップセル・クロスセルを増やす、などの結果指標(サービス提供側の視点が強めな指標)で語られることが多いような気がします。しかし、それらの指標はユーザー自身のサクセスがあった結果であるため、プロダクトの健全性を測るには、ユーザー自身のサクセス状態をウォッチする必要があると思います。

3. 信用・継続

ユーザーが「これがないとビジネスが上手くいかん(must haveの状態)」とプロダクトを信用し、契約継続する状態のパートです。

前述の通り、信用はユーザーがプロダクトを使い、サクセスした結果、生まれるものだと思います。そのため、サクセスパートが良くないのに信用・継続パートが良い状態になっている場合は、ユーザーサクセスの定義がズレていたり、無理に継続してもらっている可能性があるため、一度見直してみた方が良いかもしれません。

4. 認知

プロダクトの信用が高まることで、口コミや紹介などで認知が広がっていくパートです。

実際はWEB広告なども組み合わせながら認知度を高めていくケースがほとんどだと思います。ただ、プロダクトの健康状態を見る上では、そのような資金投入に極力依存しない認知度を評価できるのが望ましいと思います。

基本構造の要素分解とKPI

グロースサイクルの基本構造を要素分解した図が以下になります。実際に作ったグロースサイクルの要素はもう少し細かいですが、汎用性を考えて、この図でKPIの話を進めます。

アドベントカレンダー2020 analytics FY21Q2 (4)

1. 正しく使い始めるユーザーが増える

KPIの例としては、初期設定完了率、チュートリアル完了率、ある機能を**回以上使ったユーザーの割合(マジックナンバーと言われるもので、例えば、Slackなら2000件のメッセージをやり取りしたか、Dropboxならファイルを1つ以上置いたか、Facebookなら10日以内に7人以上と友達になるか、という継続利用を左右する閾値です。)などが候補として挙げられます。

また、初期設定などは正しい状態で設定されているかを見ることで、より精緻な状態を把握することができます。

2. 正しく使い続けるユーザーが増える

プロダクトのコア機能の継続利用率やコアとなる情報の入力率などがKPI例として考えられます。ここでも単なる機能利用率だけでなく、正しく使いこなせているかを定義した方が良いです。

3. データを活用した意思決定が増える

ユーザーが使い続けることで、ユーザー自身のデータがプロダクト上に蓄積していくと思いますが、それらがどれほど有効活用されているかを測ります。例としては、レポートの活用度、業務フローの循環速度などが挙げられます。

4. 経営が良くなるユーザーが増える

前述のユーザーサクセスパートですが、ダイレクトに売上、受注数・率、削減工数・コストなどを計測しても良いと思いますし、難しい場合は、間接的にユーザーがある行動を取る回数あたりの削減工数やコストダウン額を定義しても良いと思います。

5. 良い評価が増える

契約継続率、NPSが候補として挙げられます。信用が増すことで、ユーザー企業内でプロダクトの全社展開が促進されるのであれば、ARPUやアップセル率を置いても良いかもしれません。

6. 認知が増える

WEB広告などに依存しないサイト流入数、登録数、トライアル開始数などがKPI候補として考えられます。

以上のKPI同士の関係性をBIツールを活用しながらモニタリングすることで、SaaSプロダクトの健全性を把握できると思いますので、少しでもご参考になれば幸いです(色々な事例を聞いてみたい。。)

参考note

深津さんと樫田さんのnoteはもちろんのこと、以下の國光さんのnoteも大変参考にさせていただきました。

さいごに感謝

SaaSのプロダクトグロースサイクルを作る上で、必要な観点やKPI例を整理してみました。

これらは同じ課題感やゴールを持つ弊社のPM(プロダクトマネージャー)とディスカッションしたり、フィードバックをもらったことをベースにまとめたものです。私一人では考え付かなかったような視点や気づきをたくさんもらうことができました。

この場をお借りして感謝申し上げます。

ありがとうございましたmm

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