いつも隣に剣を抱け
街を歩くとき、私は自分の左側に剣を携えている。もちろんイメージだ。この剣は、「かたな」というより「けん」と呼びたくなる。私の中ではっきり設定があって、銀色の輝きと、フェンシングみたいな細さとてもきれいだ。あいにく重さや鍔、長さは日によって曖昧だ。
そして、イメージでもっともこだわっているのは、「剣を抜く音」だ。剣が鞘の中をすべる時、スラ、と涼しい良い音がする。
そして、ふと街を歩く自信がなくなりそうになったら、心の中で自分の左側からスラっと剣を抜いて正面に構える。
じろっと睨まれているように感じた時や、ふっとこれからの将来が怖くなった時に、イメージの剣を抜く音が気分を落ち着かせてくれる、そんな気がする。そして、私に敵意を向けるものは何人たりとも許さない、という気持ちになれるので、また剣を左側におさめて、背筋を伸ばして歩いていく。
そんなイメージを持つようになってから、下を向いて歩くことがずいぶん減って、胸を張って歩けるようになった、気がする。時々今でも、すれ違いざま変なこと言われやしないかびくびくすることはあるし、沈黙が流れると自分が話さなければならないような気がしてくるけれど、でも私は帯刀しているしな…と思うと、凛とした人間になろうという気持ちになるのだ。
今日の私服はワンピースである。そんな私の左側には、銀色の細くて長い剣がある。お守りを大事に、今日もカツカツ歩けている。
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