瀬戸内海芸術の秋② ~小豆島~
2020/11/12
いよいよ迎えた旅の最終日。この日は一番よく眠れたと思う。やはり布団は最高。
6時頃に起床して朝風呂に入り、朝食も頂いた後に部屋の片付けをすぐに終わらせてチェックアウト。送迎の車で昨日船を降りた土庄港(とのしょうこう)まで向かった。ここの観光センターにてまた自転車を借りようとしたのだが、店の人に坂はキツいから普通の自転車はやめた方がいいと言われ、電動自転車を借りることにした。後々振り返れば、この時店の人のいうことを素直に聞いといて良かったと思っている。
まず向かったのは土庄の中心部にある土渕海峡と迷路のまち。土渕海峡は世界一狭い海峡とされてるのだが、パッと見た感じ川にしか見えない。迷路のまちもまた狭い道が多く、地図を見なければすぐに迷子になりそうな所だが、西光寺の三重の塔が見える路地裏は京都のような奥ゆかしさがある。とても狭い道だが、ここを車で通行する人がいて、自分には到底真似できないと思った。
次は潮が引いた時だけ道が現れることで有名な「エンジェルロード」に向かったのだが、まだ満潮の時間帯で道が隠れていたので、先に小豆島オリーブ園に行くことにした。そこまでの道中にはなだらかな長~い坂道がいくつも続くため、観光目的であれば電チャリかバスなどで行かないと疲れる。
さて、オリーブ園にはその名の通りオリーブの木が数多く植えられている他、魔女キキのロケ地やデザイナー「イサム・ノグチ」が設計した個性的な遊具、ギリシャ風車と瀬戸内海が見渡せる場所もあり、行ったことはないけど地中海沿岸に来たようなファンタジーな世界観が楽しめる。脳内では「海の見える街」が鳴りっぱなしだ。風車の周りでは魔女キキの箒に跨がった若者たちが、記念写真を撮るために跳んで、跳んで、跳んでいた。さぞかし映えることだろう。イサム・ノグチの照明やインテリアが集められたアルテトラという施設には「おまえ うまそうだな」シリーズの絵本が並べられており、久しぶりに読んでみたら普通に感動した。
近くのレストランで焼き豚丼を頂いてから、今度は島中部に位置する中山千枚田へ向けて出発。ここへの道がとても難所で、前日の直島で上ったような急勾配がかなり長く続いた。幸い電チャリだったので楽々上れたのだが、もし普通の自転車で行ってたらと思うと恐ろしい。
そうこうして13時頃に中山千枚田に到着。ここでは広大な棚田と竹で造られた「小豆島の恋」というオブジェが見渡せる。田んぼにオブジェとは中々異質な組み合わせのように思えるが、小豆島の恋は秘密基地のような雰囲気があり、子供のように畦道を走って突入しに行きたくなる。昔の日本のふるさとはそんな感じだったのだろうか。
山道を駆け降りたら再びエンジェルロードへ向かった。海に浸かりそうになってるギリギリくらいが一番見映えがいいらしいが、この時は既に干潮の時間ですっかり道がむき出しになっていた。それでも砂浜が島に向かって延びている姿はまさに天使の道のようで美しい。浜辺はすっかり乾いていて歩きやすく、ついさっきまで海の下だったとは思えないほどだ。無いとは思うが、戻ろうとしたら満潮になって取り残されることのないように気を付けよう。
小豆島の行きたいところも残すところ2ヶ所。まずは西南部にある樹齢千年のオリーブ大樹を見に行った。この木は先ほどのオリーブ園で見てきた木々とは比べ物にならない程大きく、千年も生きただけの力強さを感じる。誰もいなかったが、これは見ておくべきだ。
そして最後は島の西端に位置する重岩(かさねいわ)に訪れた。途中の険しい山道を何とか登っていくと、鳥居の先に巨大な二枚の岩が積み重ねられている。地震でもきたら落ちそうだし、こんな高いところまで一体どうやって持ってきたのか気になるところだが、それにしても圧巻の光景だ。そして岩の手前で後ろを振り返ると、4日間巡り巡ってきた瀬戸内海の絶景があたり一面に広がっていた。間違いなく旅の最後に相応しい景色だ。出発の1ヶ月以上前からこの旅を計画していたが、電車や船などの移動が多く、そもそも一人で宿をとるのも初めてだったので上手く行くか不安だったが、それでもこうして最後まで何とかやってこれて本当によかった。天気も4日間ずっと晴れてくれて大満足である。海を見てそう振り返りながら、重岩を後にした。
土庄港に戻って自転車を返し、16時半の船で小豆島を出た。ヨーロッパの世界観から日本風の景色まで、本当に魅力溢れる島だったと思う。今回は行けなかったが他にも寒霞渓や映画村などがあるので、次はそちらにも寄ってみたい。
船で再び高松に戻り、高松空港で讃岐うどんを食べ、少しお土産を買った後で羽田行きの便に搭乗。この旅は終了した。
瀬戸内海には島が三千近くもあると言われているが、この4日間で行けたのはその内たったの4つ。しかしどの島もそれぞれの個性があり、違った楽しみ方や魅力があることを知れた旅だった。