グリーン愛

今日の昼飯はグリーンカレーを食うと決めている
エスニック料理屋は女性客が多く
少々入りづらいのが難点だが
俺のグリーン愛はそんなものにひるんだりはしない
部屋には何十種類も食ってやっと辿り着いた
本場の味を再現したレトルトが常備されている
都内でもあらゆるタイ料理屋を食べ尽くしてきたが
俺の目をいや舌を誤魔化せないのは3軒のみだった
そのうちの一軒のタイ人のシェフが
本国に帰ろうかと思っていると打ち明けてくれた時には
足にしがみついてでも止めたかったが
大人として彼の意志を尊重した
だけどその晩部屋に帰ってちょっと泣いた
とどまることを知らぬ俺のグリーンカレー愛
これを分かってくれる女性が現れたら
すぐさまプロポーズできるように
こぶみかんの葉を持ち歩いてる
これ無くしてあの独特の辛みは出ない
俺の将来の嫁なら理解するはずだ
もちろん後で指輪も買う
その足でグリーンカレーを食べに行こう
薬指に光る指輪より額に光る汗のほうが
美しいと思う俺は少しだけおかしい
自分でもわかっている
だがそれが何だ
愛とは強ければ強いほど歪みを呼び寄せる
しかしこれほど健全な愛もまた他にはないだろう
未来の嫁に求める条件がもう一つある
まだ俺の未開拓のレトルトグリーンを
もたらしてくれたなら
もう一生離さないぞ

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