デブ
オーライオーライ
悲鳴を上げながら空から落下してくる君の
クッションになれるくらいデブでよかった
君は出来損ないの天使
せっかくの美しい翼もコントロールできずに
お飾りと化している
僕は醜いデブ
君と釣り合うわけがないのに
あの時も落ちて来た君の緩衝材になったことから
この無駄に広いボロ家に同居してる
君は翼を広げたまま歩けるから
このうちがお気に召したようで
タワマンの金持ちの慰みものになるよりは
こんな田舎のほうがずっといいと言ってくれる
人間の女と違って男の容姿を気にもせずに
僕のおなかでぽよんぽよんと楽し気に遊んでいる
君が一人前の天使になって天国まで羽ばたいて帰る日までの
儚くも美しい日々
君がいなくなったらこのうちは手放して都会へ戻ろう
僕のことをデブだと笑う人で溢れてる都会へ帰ろう
いいんだ構わないマックあるし
懐かしのビックマックを3つ食べよう
きっと泣きながら食べよう
醜いデブが鼻水を垂れ流しながらハンバーガーにかぶりつく姿は
我ながら見るに耐えないけど
だってその時もう君がいない
君の笑顔がいない
あなたが亡くなった時は私が必ず迎えに行くわ
そんな優しい約束を残して
行ってしまうのかい
きゃあああああと聞きなれた悲鳴がする
僕は慌てて庭に出る
アザラシのように寝そべって落ちて来た君をキャッチする
ねえ永遠がないことを美しいと思ったのは初めてなんだ
あどけない少女のような笑顔を忘れない
君を受け止めてた時の重みを忘れない
デブでよかったと思う日が来るなんて
夢にも思ってなくて
その夢が空から降って来るなんて
なんて素敵な人生じゃないか