性病

俺はお前としかやってないんだから
お前が他の男からもらってきたんだろ
私だってあなたとしかしてない
どうせ隠れて風俗にでも行ったんでしょ
私のせいにするなんてひどい
ひどすぎる
わあああんと泣き崩れる彼女を前に
俺は途方に暮れる
滅茶苦茶だ議論にもなりゃしない
彼女に論理的思考は通用しない
彼女は感情だけで生きている
もういいから泣くな
お決まりのパターンで俺が折れると
ちーんと鼻をかんだかと思えば
おなかが空いたなんて言い始める
なんで付き合ってるんだろうな
そうやって頭を抱えたのは一度や二度ではない
段々慣れてく自分も怖い
しゃべるけどしゃべらない動物を飼ってる気分
それとも飼われてるのは俺のほうか
明日病院行こうな
そう言ってキッチンに立つ俺は
間違いなく極楽行きで神様に褒めてもらえるだろう
彼女の好きなキムチチャーハンを炒めながら
死後にしか希望がないなんてあんまりだと思い付いて笑った
可愛いとこもあるんだよ
何よりほっとけないし
そうほっとけない一人で放り出す事なんてできない
男にそう思わせるのが彼女の作戦だとしても
引っかかる幸福というものもある
出来たよ
テーブルに湯気のたつチャーハンを置くと
彼女は両手を合わせて一瞬神妙な顔つきになり
頂きますと唱えてから食べ始める
不思議な子だな
しかもうまそうに食うな
しばらく離れられそうにない
しばらくは
他の男に渡すことを考えると
二日酔いみたいに胃がムカムカする
だからってもうもらってくるなよ
ホトケの顔も何とやらっていうだろ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?