自殺成功

したてらこんなこと書いてない
してたら今こんなとこにいない
私は失敗したのだ
ものの見事にしくじったのだ
腕一杯に抱えた薔薇を浴槽に浮かべ
ありったけの薬を飲みナイフを手に入水した
風呂の湯が真っ赤に染まるほど手首を切った
外から小学生たちの元気な声が聞こえてきた
その瞬間筋の通らない憤怒の憎が湧いていた
なぜ私だけがこんなに大人しく死なねばならないのだ
逝くならお前たちも道連れだ
犯罪者の気持ちを深く理解したところで
意識はもうほとんどない
どうやって救急車を呼んだのかは覚えていない
気づくと宇宙船のような光の下に横たわっていた
足の付け根の深部まで5カ所も針を刺されて
激痛で飛び起きた
何故か笑顔の看護師たちに押さえつけられながら
手首を21カ所縫われた
それからも責め苦は続いた
鼻の穴から太いカテーテルを胃まで突っ込まれ
炭を注入され吐いた
凄まじく苦しい
さっきのリストカットの痛みの比でないではないか
それからERに入院してからも精神薬を一切与えられず
一日半苦しみ抜いた
これでは地獄に堕ちたのと変わらない
そして追い出されるようにさっさと家へと帰された
もう二度と行きたくない
心からそう思った
自傷行為で運ばれてくる奴らにそう思わせる為に
あのような仕打ちを用意しているのだろう
文字通りの生き地獄から生還する途中
新生児と死にかけた老人が
隣同士のベッドで処置を受けているのを見た
どちらも生きようと懸命な命だった
謝罪したくなって黙礼をした
刑務所の任期を終えた者のように
かすれた声で呟いた
二度と来ません
ごめんなさい

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