パストラミサンド

秋晴れの土曜日
待ち合わせは芝生のフカフカな近所の公園
もうすぐ君がやって来る
僕の好物のパストラミサンドを持って
君が作ってくれるやつが一番美味しいんだ
お世辞じゃないよ
けっこうお高いのも食べたんだけど
なんでだろう
秘密のスパイスが入ってるのかな
僕の為だけに調合される恋の味
大きな魔法瓶にスクリュードライバーを入れて
二人で昼から酔っ払おう
バーテンダーをやってた頃
これでも腕は良かったんだ
今は二人の為にしか作らないカクテル
酔うと一層よく笑ってくれる
君に捧げるお酒だよ
ちょっと早く着きすぎてしまった
花壇のあるほうへ歩いて行く
まあ後でもう一度見るんだけどね
君は花が大好きだから
コスモスが風に揺れてる
君が来たら花言葉を教えてもらおう
部屋のベランダが花だらけで驚いたっけ
手をかけた分だけ応えてくれるのよ
人間と違って
その時ふと翳った君の横顔が忘れられない
花を愛でる人が皆幸福なわけではないと
ぼんやりとそう学んだ
遅くなってごめんなさい
いや僕がせっかちなだけだから
おなか空いたでしょ今日のは特製よ
魔法瓶のカクテルで乾杯して
僕はパストラミサンドにかぶりつく
やっぱりこれに限るなあ
あっという間に平らげる僕を
子どもみたいと君は笑う
カクテルでほんのり頬を染めて
フカフカの芝生に寝転ぶと
君はすうすう寝息をたてる
風邪ひいちゃうよ秋風はもう冷たい
自分の上着を君にかけて
その整った寝顔をつまみに手酌をする
君が起きたらコスモスを見に行こう
色とりどりでとてもきれいだったよ
青空にはひつじ雲
幸福な人生の切り取りに乾杯
ひつじの群れに向けて
少しコップを傾けた

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