ドライフラワー

ドライフラワーにして飾ってあるよ
風が吹き込んでくる度カサカサ揺れるんだ
そうすると思わずそっちを見ちゃう
あなたからもらって干乾びた愛の形見
目薬が怖くてさせなかったことも
猫が好きすぎてよく集まるお寺に通ってたことも
目玉焼きを半熟に仕上げるのが上手だったことも
本当は恥ずかしがり屋で花屋なんかに入れなかったことも
全部覚えてるけどこの思い出に涙は似合わない
だからね不思議とあなたを失ってから一度も泣いていないんだ
二人で育ててたパキラは私が譲り受けて
今も元気に生い茂ってるよ
これだけはドライフラワーにするわけにいかないからね
アパートのせいで飼えない猫の代わりに
あなたが心から大切にしてたちっちゃなジャングル
どんどん立派になってゆくから
こないだ大きな鉢に植え替えたんだよ
そうしたらなんだか威風堂々
かっこよくなっちゃってあなたにも見せたいなあ
必ず幸せを掴める力を持ってる人だとわかってるから
心配なんてしていない
今もどこかで笑ってるあなたの声が聞こえてきそう
友達にも戻れたけど
そうしなかったのは
あなたが私なしでも充分幸せになれると確信したから
まだ好きだったしまだ好かれてた
それでも恋の物語を閉じなければならない理由が
大人には山ほどある
ありがとうって最後に笑って言えた自分に
ご褒美をあげなくちゃ
でも忘れないことだけは許してね
だって幸せだったんだ
ドライフラワーが風に揺れる
あなたの笑い声に似ている

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