異世界：Bleach Cantabile

訪問先は大家族らしい。
そこのおじいさんの訪問だ。
彼とは会話があまり成立しない。
年齢相応の認知障害なのだろう。

バイタルサインを細長い黒い手帳に記入する。
家族から渡されたものだ。
見ると前回の訪問時のバイタルサインは男性の名前で記入されていた。
知らない名前。というか、前回訪問したのもわたしだった筈なのに。
先週の訪問時のことを思い出そうとするが、なかなか難しい。
「これはこの人たちの覚え書きみたいなものなのよ」と、同行訪問した副主任が知った風に言う。
わたしは、なんとなく腑に落ちないまま、その日の値を手帳に記入した。　　

　　　　
おじいさんとは相変わらず会話が成立しない。
それどころか、今日は特にわからない。
きっとこの人はまったく別の世界に住んでいるのだ、と妙に確信する。

そんなとき、家族がめいめい楽器を手にし始めた。
いろんな楽器。ギター、トランペット、バイオリン、ｅｔｃ。
わたしたちは外へ行こうということになり、部屋を出るとそこは大きなホールのようになっていた。
人々は思い思いのまま、音をとっているように見える。（でも、滅茶苦茶な音階にしか聴こえない）
いつの間に、わたしは副主任とはぐれてしまった。
そして、おじいさんも、家族もいない。


周囲は男女入り混じっていて、どこか精神科病棟のような感じがする。
そのうち演奏があちこちからなされるが、そろっている風でもない。
わたしは、大きな廊下を走りながら副主任を探す。
だんだん、恐怖感の混じった違和感がつきまとう。
何かがおかしい。

と、いきなり、誰かに手をわしづかみにされた。
大きなおおきな、怪物のような女だ。
わたしは目を開いてその怪物を見返し「わたしはこれを拒絶する！」と叫ぶ。
が、あまり効かない。
何度もなんども繰り返す。
少し効き目があったように感じる。
すぐさま「去りなさい！」と大声で叫ぶ。
すると徐々に怪物の腕がくずれはじめ、ずどどどど、と倒れこんでしまった。

怖ろしくなり、後ずさる。
怪物はその容貌を人間のものに変えながら、死んでいった。
そのとき、なぜかわたしはそれが「マリア」なのだと気付く。
マリアの名前を呼ぶと、彼女は苦しそうに起き上がり、わたしに数珠のようなロザリオのようなものをくれた。
「けっして離さずに持っていなさい」と言って、彼女は死んでしまった。

今度はなぜかわたしの隣に、別の同僚ナースがいる。
彼女は何も知らなず、わたしも彼女に何も言わない。
訪問を終え、大きな廊下のようなホールへ出ると、彼女とはぐれてしまった。
はぐれた途端、わたしは急に怖ろしくなって彼女の名前を叫びながら探した。
でも、完全にはぐれてしまった。どうしても見つけられない。



彼女を探しながら、当て所なくどこかの田舎道を歩いている。
潮風を感じるので、ちいさな島のようだ。
辺りはすっかり薄暗くなっていた。

島に滞在中の軍隊が総動員で何かを演奏するらしい。　　　
村人たちはそれを見ようと家々から出てきている。
島の人間よりも軍人の数のほうが多い。
島の人たちにわたしはおずおずと挨拶をするのだが、誰もわたしに返さない。


遠くに家の灯りが見えた。
わたしは走ってそこへ行き、一晩ここに泊めて欲しい、とお願いすることにした。
玄関を開けるとそこは土間になっていて、古びた障子の向こうの部屋に、時代錯誤な着物を着た男ふたりと女ふたりがいた。
彼らはわたしを見下ろしている。わたしを見て、あまり良い顔をしない。
このままじゃ泊めてもらえない。ひどく悲しい気持ちになった。

「わたしは訪問看護師です！」と叫ぶ。
なんとか泊めてもらいたい、信用してもらいたい、その一心で。
すると、「県外のだろう？」と、ひとりの女が冷ややかに言った。
彼らはよそ者は信用ならん、というようなことを言い合っている。
結局、そこへ泊めてはもらえなかった。



とぼとぼと暗い道を歩いていくと遠くに教会らしき建物が見えた。
駆け出して中へ入ると、ちょうどミサが始まろうとしている。
中には、姉3と従姉妹、それにわたしの娘と女の子ふたりがいた。
ひとりは、幼かった頃の姉と驚くほどそっくりだ。
わたしの気持ちを察したのか、娘が「これね、シオちゃんだよ！」と笑顔で言う。
わたしは、信じられない・・・と安堵しながら、ポロポロと涙が出た。
シオちゃん、何年か前に会ったときはまだあんなに小さかったのに。
あぁ良かった。これでもう大丈夫。

ーもうすぐミサが始まる。

　　

　・・・・

（マンガの「ブリーチ」と「のだめカンタービレ」が混じったらしい。
　影響されやすいというか単純というか。
　翌日、娘にこの夢を話したら大笑いされてしまった。10/18/2006）