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日本政策投資銀行(DBJ)の実績と出資

高橋ダンのダイアリー
令和2年4月24日

日本政策投資銀行(DBJ)の実績と出資

令和2年4月22日に衆議院で開会された財務金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。そこで日本政策投資銀行(DBJ)に関する質疑応答から気になった2点をピックアップし、最後に私の所見を述べたいと思います。

第1に、DBJの実績に関しての質疑が行われました。
「昨年9月末に株式等による損失が181億円。また鬼怒川ゴム工業株式会社に対する出資が焦げ付いているという記事も報道されている(『選択』https://www.sentaku.co.jp/articles/view/19776)。DBJの鬼怒川ゴム工業への累計出資額についてのほか、同社への出資を今後増やすのか。損失がさらに拡大するのではないか 」といった質問に加え、 「鬼怒川ゴム工業への追加出資が約270億円との情報を得ており、このようなリスクが高い案件は気をつけて対応してほしい。ぜひ、この記事の問題についても調べてもらいたい 」 と強く要求する発言がありました。
  これに対してDBJ社長・渡辺氏は「個社については守秘義務があり答弁できない」と返答。麻生財務大臣も「全体としては答えられるが、個別の内容に詳しいいわけではない」と答えられました。

第2に、DBJの出資規模への質疑が行われました。
「去年の9月末時点で累計約5,400億円だった特定投資融資業務決定額が、3月末現在では約7,100億円になっている。元々、来年3月までに約5,000億円とする予定が急激に増えており、審査やリスク管理が本当に追いついているのか疑問だ」との指摘がありました。
また、これに関しては「投資融資業務は今後(政府の出資とDBJ自己資金出資で半々として)、今年の9月末までに7,100億円から8,480億円に増額。これに今年度本予算で政府とDBJが1,000億円ずつ、さらに補正予算で1,000億円ずつ、それぞれ追加出資を実施予定。一方、まだ出資されていない金額が1,300億円も残っている」と公表。結果「全部合わせると約5,300億円が追加投資されることになる。そのうちの半分(約2,650億円)が政府の出資だが、あまりに巨額で審査がおざなりになっているのではないか。性急すぎて損失が高まるリスクもあるのではないか」との疑念が述べられました。
  これらに対して、麻生大臣は次のように答弁しました。「追加出資のスピードが速すぎるとの意見だが、各年度における追加資金について、令和2年度は前年と比べると300億円の減少。以前は各年度1,300億円の追加出資を政府側で行っていたものを1,000億円に減らしている」と説明。「今はコロナウイルス問題でスピードも必要と思っている。しかし、もちろんご指摘のように赤字をできる限り出さないよう、しっかりと対応していきたい。スピードと適切な調査のバランスが重要だと理解している」と主張しました。

以上の点について私の意見を述べたいと思います。 
  DBJの実績に関して、鬼怒川ゴム工業への現状の出資は問題だと考えます。雑誌『選択』の記事情報によると、DBJは2016年に500億円を出資して鬼怒川ゴム工業を買収。その後さらに200億円を超える追加出資を実行しているようです。合計約770億円の出資ですので、現在までの特定投資融資業務決定額の累計7,100億円の約10.9%に相当します。一つの出資が全体の10%を上回るという偏った比重を持つポートフォリオに、私としては疑問を抱きます。ポートフォリオがあまり多様化されてない恐れがあり、一つの会社に投資をこれほど集中させるのは、リスクが高すぎると思います。しかも、DBJ社長と麻生財務大臣の両方とも、この問題についての答弁を果たしておらず、個別出資の状態を把握していないことに危機感を覚えます。組織のトップがこういう質問に答弁しないのは国民を不安にさせるだけであり、DBJに関する次回の質疑では、鬼怒川ゴム工業や他の大きな出資に対して個別情報の説明を要求してもいいかもしれません。
続くDBJの出資規模についても、1,300億円がまだ余っているにもかかわらず5,300億円を追加出資するプランは、投資プロセスが制御不能である表れだと思います。コロナウイルスの影響で投資や融資が必要な企業は多数あるはずです。しかし、去年9月末時点の累計額5,400億円と比べて、追加出資予定の5,300億円を現在の7,100億円と合わせれば1兆2,400億円となり、1年以内に累計額が2倍以上に増加する可能性があります。私の経験では、まだ残っている金額があるのに出資のスピードをこれほど上げるのは極端な投資戦略に思えます。重要なのは、出資のスピードについていける規律あるリスク管理を行うこと。今後の質疑では、DBJに限らず政府関係の投資機関すべてにおける具体的な各リスク管理方法についての質問も改めて必要ではないでしょうか。

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