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特別定額給付金と持続化給付金の課税

高橋ダンのダイアリー
令和2年5月1日

特別定額給付金と持続化給付金の課税

  令和2年4月28日に衆議院で開会された財務金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。質疑応答から気になった2点をピックアップし、最後に私の所見を述べたいと思います。

  第1に、特別定額給付金の課税制度に関しての質疑が行われました。「一律一人10万円給付の特別定額給付金について、富裕層が給付を受け取るべきかといった議論もあるが、給付金は非課税かどうか、その都度整理しているのが現状。今回については約1億2,000万人の国民全員に対して外出自粛を要請したことで、その連帯的な協力見舞金という性質上、過去の自然災害などと同様に、政府による給付金は非課税にするべきと認識している」と指摘。そのうえで「もし課税をした場合、給付金は生命保険の解約一時金や宝くじのような予期せぬ一時所得として扱われることになる。すると例えば6人家族であれば一人10万円で60万円がこのたび給付予定だが、特別控除の上限が50万円のため結果、給付金は課税されることになる。しかし現在の局面を考慮すると、課税はそぐわないはず。毎回、こういった議論が生じるため、今後は給付金課税に関して根本法を作って(非課税と)恒久化するべきではないのか。担税力のある方には株などからの短期キャピタルゲインの税率を上げ、もっと負担してもらうのも一つのアイデアである」との提言がなされました。
  これに対して財務省主税局長が次のように返答しました。「今回の特別定額給付金は家計支援のためであり、過去のリーマンショックや東日本大震災の際の給付金と同じく非課税としている。ご指摘のとおり、給付を実行した場合、50万円の特別控除はあるものの、それぞれの事情によって課税されるか、されないかについてバラツキが出てしまう」と返答。加えて「課税制度にまどろっこしい部分があると承知している。ただ、法律によってではなく予算措置による支給のため公租公課の規定がなく、個別で対応せざるを得ないのが今の限界であり、現実だ」との説明がありました。

  第2に、持続化給付金の課税制度に対して質疑が行われました。「個人業者向けの100万円給付と法人向けの200万円給付の持続化給付金はどう見ても事業所得。もしこの給付金が支給時に非課税で、経費を引いて利益が出た際にも非課税となれば、二重に非課税なので税の理屈からはあり得ない。東京都などでは、休業協力金は事業所得として課税されているが、経費化して損金にすれば結果として税金はかからないとして、経費を差し引いた課税対象制度をすでに適用している。この持続化給付金も類似な課税制度と理解していいのか」 といった質問がなされました。
  これに対する財務省主税局長の答弁は次の通りです。「事業者に持続化給付金を支給した場合、これは収入となり、ご指摘の通り。この収入の補填があっても、結果的に赤字になった場合は課税されない。逆に余剰が生じた場合は課税対象になるが、必要経費を計上後に課税されるので、事業所得が過大に減少している方には影響が少ない形である」と説明しました。

以上の点について私の意見を述べたいと思います。   
  日本の特別定額給付金に関して、この課税制度は他国の給付金制度と似ています。アメリカでも1,200ドル(約13万円)の給付金が支給されており、これはすべて非課税です。しかし、制度は似ていてもスピード感がかなり違います。アメリカの経済対策法案は3月27日には成立(CARES法案 https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-bill/748/text)。 アメリカ在住の私の友人などほとんどは、給付金の申し込みを済ませ、すでに給付を受け取っている状況です。一方、日本は元々の特別定額給付金制度(一世帯30万円給付)が変更された後に、現在の一律一人10万円給付の成立を図ったため、国民が給付金を受け取るのは5月中と政府および省庁は予定しているようです。さらに郵送申請する方々は、オンライン申請より支給に時間がかかる可能性が高く、6〜7月まで待たなければならないことも考えられます。迅速な給付金支給を行なった海外の事例をニュースで見た日本国民の中には、欲求不満を感じる方も少なくないかもしれません。
  一方、持続化給付金の課税制度に関しては、日本は他国と比べ、特にアメリカとは大きく異なっています。アメリカの事業者給付金は融資の名目で支給していますが(PPP法案https://www.sba.gov/funding-programs/loans/coronavirus-relief-options/paycheck-protection-program)、返済の必要がない Loan Forgiveness Program(債務免除プログラム)が法案に含まれているため、実際には融資ではなく給付。さらに、この債務免除プログラムの要件に従えば、全額非課税となる仕組みです。しかも、アメリカではもう2つ、この事業者対象の給付金制度が成立して、事業者は給付金をすでに受けています。そして今は第3弾の給付金制度を議論している段階です。構造とスピード感ともに日本とは極端に異なります。未来の災害や危機に準備するためには、日本の給付金制度を徹底的に分析して、スピードと効果性を優先した万全な内容に変更をすることも必要ではないでしょうか。


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