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住まいの断熱・省エネのルールはこう変わる!建ててから後悔しないために知ってほしいポイントも解説<連載・SDGsと断熱>【断熱先生のダンネツノートvol.12】

今年6月、改正建築物省エネ法が交付され、2025年度以降、原則すべての新築建物に「省エネ基準」への“適合が義務”付けられることになりました。現在、日本の新築住宅の省エネルギー性能についてのルールは、“説明義務”のみでした。それにより日本の住まいはどのように変わるのでしょうか、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

断熱に関するルールが大きく変わる!気をつけたいポイントは、義務化される基準ライン。

これまでも何度か触れてきていますが、2022年は、断熱基準が段階的に義務化されたり、10月から断熱等級6、7が施行されたりと、住まいの断熱や省エネルギー化に携わっている私たちからすると、大きな節目の年なんです。みなさんが気になるのは、ルールが変わることで、住まいの選び方など、何がどう変わるのかだと思います。順を追って説明していきましょう!

そもそも、日本の住まいにおける省エネの取り組みは、1970年代のオイルショックにはじまります。石油不足への不安からトイレットペーパーや洗剤の買いだめ・買い占めが起きていた様子を写真などで見たことがあるかもしれません。

それと同じころに、家庭や会社、工場のエネルギーの無駄づかいを減らして、石油依存度を下げようと、1980年に「住まいの省エネ基準」(旧基準)が作られました。きっかけとしては、カーボンニュートラル/脱炭素化や電力ひっ迫のなかで、省エネに関する新たなルールが出来ている現代とも通じる部分がありますね。

その後、1992(平成4)年の改正で「新省エネ基準」ができ、1999(平成11)年で「次世代省エネ基準」ができ、2013(平成25)年に改正されてきたという歴史があります。

断熱等級は現在、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(通称「品確法」)にて定められていて、断熱に関わる指標として使われています。

上記の歩みからも分かるのとおり、年々、断熱等級が強化されてきました。ですが、断熱等級についてはずっと「推奨基準」で、「義務」ではありませんでした(つまり、住まいを立てる際に必ずしも断熱性能を強化する必要がなかった)。

出典:社会資本整備審議会 建築分科会 資料(2021年国土交通省)

「よかった、じゃあこれから家を建てるなら断熱性能も安心だ」と思われるかもしれませんが、実はそうではないということを私はいつも、住まいStudioにお越しになる皆さまにご説明しています。

2025年から適合義務化を予定している「断熱等級4」ですが、これは世界的にみると、先進国の中でもかなり低い水準の断熱性能です。

ですから、大切なのはそれよりも上の断熱性能を取り入れることなのです。では、新しく新設された断熱等級6や7に相当する「これからの家」がどんなものなのか見ていきましょう。


「これからの家」どのくらいあたたかいのかをサーモグラフィーで比較してみると

より断熱性能の高い住宅の普及に向けて、民間企業や研究者が連携し、よりハイグレードな「これからの住まい」のための断熱規格を提案しました。それが、「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」(通称HEAT20)によるG1/G2という規格です。

民間基準ではありますが、G1とG2は各国の最低基準レベル、G3なら世界に引けを取らない省エネ基準にあたります。この数年、断熱性能を高めようという流れが進み、このG1/G2/G3を達成した住まいが、日本各地でも建てられるようになっています。

と言いつつも、専門用語では『つまりどういうこと?』と分かりにくいと思います。そこで、この画像を見ていただきたいです。

私がいる「住まいStudio」で昔の家(1980年・旧基準)と今の家(1999年・次世代基準、2025年からのルールでの最低基準です)、これからの家(HEAT20 G2グレード)における表面温度をサーモグラフィーで測定したものです。

窓付近と壁や床とでかなりの温度差があることが分かります。ちなみに、すべての部屋が外気温0℃、暖房設定温度20℃になっていますので、断熱性能だけで、どのくらい室温への影響に差が出るかお分かりいただけるかと思います。

また、これは室内における上下(足もとと身体近く)の温度差を比較したものです。暖かい空気は上にたまりやすいことや、断熱されていない部分から熱が逃げていくため、窓や床がかなり冷えていることがわかります。

どうでしたでしょうか?どのくらい断熱性能に違いがあるのか、少しでもお分かりいただけましたでしょうか。とはいいつつも、断熱や寒さは目に見えないものですので、言葉や画像で説明されても、まだ『本当なの?』と感じる方もいらっしゃるかと思います。ですので、ぜひ「住まいStudio」にお越しいただきたいです!3水準の断熱性能の部屋を比較できるコーナーもあり、実際にその違いを体感いただけますので、より効果が実感いただけると思います。


環境にも人にもやさしい住まいが、当たり前に選ばれるように

わかりやすく解説といったものの、見たことない言葉が並ぶと、ちょっと混乱してしまいますよね。

なので、解説をさせていただいた住まいの断熱性能は2025年から義務化されること。それから、この流れはこの先、変わらないということだけ、覚えてもらえるとうれしいです。

なぜなら、「2030年度以降、新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」、さらに「2050年に、住宅・建築物のストック平均で ZEH・ZEB 基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す」といった方針が発表されているからです。

将来的に、建築物の省エネ性能は、より高いものが求められる時代へとなっていきます。それは新築だけでなく、今ある建物についてもです。断熱リフォームやリノベーションが普及し、今ある住まい(現行省エネ基準に満たない住まいが約5000万棟もあります!)も、よりかんたんに断熱改修ができるようになることでしょう。

住まい断熱性能を向上させて地球環境への負荷を減らしつつ、私たちもより快適・健康に暮らす。そんな、未来の住まいを、みなさんといっしょに広めていけたらと思います。

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