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#30 松田聖子×松本隆×「〇〇色」を考察してみた・・・の後半(凝り性のハマったら沼編Part③)

さて、凝り性のハマったら沼編Part③は前回の続きで、松田聖子×松本隆×「〇〇色」を考察してみた・・・の後半。

今回のテーマは、少年時代によく聴いていた松田聖子さん(以下、聖子さん)ネタで、以前から気になってしょうがなかった松本隆さんの歌詞の中にたびたび登場する独特な「色の表現」に着目して、その色を自分なりに可視化してみたいという衝動によるもの(笑)
繰り返すが、凝り性とは、本当に労力の無駄遣いである(笑)

前回の記事では、準備したCDの中で、松本隆さんが作詞した107曲を抽出し、歌詞カードをちまちま繰って「色」の表現がでてくる曲がどれくらいあって、どんな「色」が使われているのかをチェックしてみるところまでを書いた。

それでは後半となる今回は、松本隆さんの独特な「色の表現=◯◯色」を、僕の勝手なイメージの可視化する作業に入っていきたい。


歌詞を可視化する作業の方法

抽出した107曲のうち、一般的な色表現ではあまり使わない色(白とか青とか赤とかピンクなど以外の色)が登場する曲は12曲(小麦色のマーメイドには2色の表現があったので全13色)あった。
それを一つづつ、色関係の書籍と照らし合わせて、イメージと合った色を特定していく作業が第一段階。

色関係の本で色を特定し、CMYKの数値を確認していく

色の特定ができたあとは、曲のイメージに合った画像を検索し、探し出してていくのが第二段階。
今回使用した画像は「Adobe Stock」のものを使わせてもらったが、無数の画像の中から曲に合ったものを集め、色の3原色となるCMYK値をトレースした色パレットの中心に画像を置き、色とイメージを融合させていった。
こうして、色と画像ができるだけシンクロするように組みわせて、松本隆さんが描く詩の中の情景を可視化していった。

〇〇色の中でも、ちゃんと特定の色として定義されているもの

あまり聞きなれない「色」もあったが、固有の「色」として定義されているものは13色中の6色で、曲と色は以下のとおりである。

バラ色(P・R・E・S・E・N・T)
かなり鮮やかな赤系の色。実際の薔薇の花よりは少しピンクがかっている。
歌詞の中では頬の赤らみを表現しているが、金のネックレスをプレゼントしてもらった時のヒロインの心情が描かれている。

「P・R・E・S・E・N・T」に登場するバラ色

小麦色(小麦色のマーメイド)
小麦色は穂の実った小麦を表す色で、健康的な肌の色を形容する時にも使われる色。
プールサイドで裸足になっているヒロインをマーメイドに見立て、日に焼けた肌の色を小麦色と表現している。

「小麦色のマーメイド」で描かれる日に焼けた素肌

セピア色(蒼いフォトグラフ)
セピア色はイカ墨を原料とした顔料が色の由来で、イカ墨のインクは時間が経つと色が褪せ、赤茶けた色に変化することからきたようだ。
歌詞では、輝いた季節とセピア色の写真、青い青年と蒼いフォトグラフが対比のように描かれている。

「蒼いフォトグラフ」で描かれる色褪せた写真=セピア色

鳶色(時間の国のアリス)
僕は「鳶色(とびいろ)」というのは松本隆さんのオリジナル色だと思っていたが、日本の伝統色として古くから使われている色で、鳶の羽のような赤みがかった茶褐色を指す。
歌詞はディズニーを連想させるようなファンタジーな世界観で描かれていて、ほうき星の色は鳶色に着色されている。

ファンタジーやSFを連想する鳶色のほうき星は「時間の国のアリス」の世界観

瑠璃色(瑠璃色の地球)
濃い紫みの青で、仏教の七宝の一つである瑠璃のような美しい宝石の色
聖子さんの代表曲の一つでもあり、平和の願いを込めた歌として教科書などにも採用され、多くのアーティストからもカバーされている。
暗い海が朝日とともに明るくなり、光の矢により地球が瑠璃色に光っていくような情景は松本隆さんにしか描けないだろう珠玉の歌詞である。

情景が美しすぎる「瑠璃色の地球」

余談ではあるが、松本隆さんはキョンキョンへの提供曲「迷宮のアンドローラ」でも瑠璃色を登場させている。この曲は「時間の国のアリス」と同時期の1984年6月に発表されているので、こちらの方が早いということになる。

紫陽花の花の色(Kimono Beat)
紫陽花の花を指す色というのはいくつかあるようだが、今回イメージとして選んだのは「万華鏡」という品種にちなんだ青紫系の色
紫陽花と竹林の見える場所でお見合い中のヒロインが、心を寄せる人と逃げ出す情景が描かれている。

「Kimono Beat」で描かれる少し落ち着いた紫陽花の花の色

さてここからが難題、松本隆さんオリジナルの〇〇色を想像してみる

ここからが難題となるのだが、はっきりと定義された色がないので、松本隆さんがイメージしていただろう色を、曲が発表された時期、当時の聖子さんの衣装、歌詞の中のフレーズなどから想像を張り巡らし、色当てをするような感覚で選定していった。
選定した色は、元々書籍の中で名前が付けられているもので、僕が曲のイメージに一番近いと思って選んだ色である。
もちろん僕の勝手なイメージであることを先にお断りしておく。

で導き出したのが下の表で、それぞれの解説と可視化のイメージを付け加えていきたい。

松本隆さんオリジナルの色当て(つくづく労力の無駄遣いであるww)

花一色(花一色〜野菊のささやき〜)
この曲は聖子さん主演の映画「野菊の墓」の主題歌であったため、映画のストーリーと照らし合わせると、花一色=竜胆(りんどう)の色なのかなと推測される。
竜胆の色名としては、平安時代から名が付けられているようで、非常に古い日本の伝統色である。

竜胆(りんどう)の色が描かれる「花一色〜野菊のささやき〜」

春色(赤いスイートピー)
あまりにも有名な聖子さんの代表曲である「赤いスイートピー」であるが、歌詞の冒頭に「春色」が登場する。
汽車の色を歌っているが、春の色をピンク系とするか黄色系にするかで非常に悩んだが、当時の衣装が黄色だったのと、ピンク色の汽車はなかなかなさそうということで、黄色系に絞って選定。
色はその名の通り「スプリングイエロー」で、当時の衣装と同じような明るめのイエローに、黄色い汽車が走る画像を組み合わせてみた。

春色の汽車に乗って〜の歌い出し「赤いスイートピー」

ココナツ色(パイナップル・アイランド)
この色もなかなか悩ましく、ココナツ(の実)は白いが、歌詞の中では夏がイメージされていて、なおかつココナツ色の風と描かれている。
夏の海の、しかも無人島や珊瑚が出てくるので、やはりこれは青系しかないかなと思い「アクアブルー」なる色を選定。
青と緑(エメラルド)の中間のような色で、かつ少しココナツミルクを加えたような白味がかった色がピッタリハマるのではないかと考えた。

まさに南国の海をイメージしたココナツ色の「パイナップル・アイランド」

常夏色(小麦色のマーメイド)
小麦色のマーメイドからの2色目となる常夏色
この曲は海ではなくプールが描かれていて、小麦色との対比となるようなイメージが湧いてくる。
南国感やトロピアカル感が連想される「アクア・ビーチ」なる色を選定してみた。

常夏色から南国感やトロピカル感が連想される「小麦色のマーメイド」

映画色(瞳はダイアモンド)
今回テーマとしている松田聖子×松本隆×「◯◯色」で僕が一番解明したかったのがこの「映画色」である。
個人的にも聖子さんの曲の中で最も好きな曲であるが、なんといっても松本隆さんが描く失恋の情景が素晴らしい曲である。
1番2番3番のダイアモンドの変化や、幾千粒の雨の矢たち、とか珠玉のフレーズが満載で、歌詞をみただけで泣けてくる。
冒頭「映画色の街 美しい日々が 切れ切れに映る」と始まっていくが、失恋の歌であり、無彩色でも良いかなと考えたが、揺れ動く心の色を表せるような色ということで「紅消鼠(べにけしねず)」という日本の伝統色を選んでみた。
そこに、雨で滲む街の中、一人で濡れながら歩くヒロインをイメージするような画像を組み合わせてみた。

幾千粒の雨の矢に打たれながら泣く「瞳はダイアモンド」

ロマンス色(ガラス靴の魔女)
ロマンス色というのもなかなか難しい色であるが、少しスモーキーでくすんだ色を想定。
他の女の子とのロマンスを楽しむ彼氏を魔女になって邪魔するヒロインの心情が描かれていることから、少しだけピンクがかったグレー「ミスト」という色を選定。

呪文で薔薇の花も宙に消える?「ガラス靴の魔女」

花びら色(Rock'n Rouge)
さてこちらが最後の色となる「花びら色」
こちらも松本隆さんとユーミンのコラボで書かれた曲で、シティポップ感溢れる名曲中の名曲。
歌詞の中では恋のもどかしさや、恋の始まりのような情景が描かれており、発売日が2月ということなので、これから春に向かっていくようなイメージである。
ということで、満開の桜色ではなく、少し薄めの「薄桜」という色を選定し、海沿いの場所で、男女が肩を寄せ合うというより、少しだけ間が空いているような画像を組み合わせてみた。

これから満開の桜色のようになっていく「Rock'n Rouge」

最後に、松本隆さんと建築とのつながり

さて、松本隆さんの歌詞に登場してくる色当てはどうだっただろうか?
今回は普段書いている公共施設のことは全く登場することはなかったが、建築好きの僕としてはなんだか寂しい気もする(笑)

ということで、最後に余談の話を付け加えておこう。

松本隆さんは、最近のインタビューで、現在は関西方面に住んでいるとのことなので、すでに手放しているのだろうけど、1997年に発表されている妹島和世さん設計の「M-HOUSE」は実は、松本隆さんの自邸である。
そんなこともあって、妹島和世読本−1998の中では、若かりし日の松本隆さんのインタビューも掲載されていて、なかなか興味深い。

妹島和世さん設計「M-HOUSE」(1997年)
妹島和世読本に掲載されている松本隆さんのインタビュー

ちなみにこの読本・・・セジマニアを自称する僕の愛蔵書であるが、僕が作った模型も3つ掲載されているのだ(笑)

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