終わりの始じまり／The Beginning of the End

ハローワークから雇用保険の給付金がもらえる
のは3ヶ月後でね。つまり7月まで収入ゼロって
ことになるんだけれど、突然無計画に辞めたもん
だから当然貯金もゼロなんだ。焦るよね実際。
なにしろ次の職場も決まってないんだぜ？

まぁでもいくら突然辞めたからって40代のいい
大人がさすがに貯金ゼロってことはないでしょ？
そう君は思うに違いないんだけれど、どっこい！
ほんとにマジで！貯金ゼロだったんだ。

実際僕だってそりゃ信じられないもんさ、
40代でまさか貯金ゼロの大人になってるなんてさ、
誰が20代の頃想像するもんか。そうでしょ？

僕はずっと貯金出来てないんだ。
20代の頃からずっとさ。
別にギャンブルやなんかが趣味でいつも使い
切ってるってわけでもないんだ。そうじゃない。
もっと単純なことなんだ。

収入に対して返済が多すぎる！

つまり借金ってやつだ。

月々の返済が大変で到底貯める事なんて、
できやしなかったわけさ。トントンでもない
んだよ。マイナスなんだぜ？返済すべき
お金がないもんだからまた他で借りて返す、
その繰り返しさ。それが今も続いてるんだ。

もう20年もだ！

なんでこんなに借金があるのか？OK！そいつを
君に話しておきたいんだ。金額は正直言いたくは
ないんだけどさ、少しばかしは君もこういう話の
方が興味あるんじゃないかと思ってね、だから
僕はこの借金話をすることに決めたんだ。

随分さかのぼるんだけれど、20代の頃、
僕はある女の子と同棲してたんだ。
年上の女の子だったんだけれどさ、
可愛くて少々エッチな女の子だったんだ。

そんな彼女の家に僕は入り浸っていてね。
当時僕は東京のわりかし西の方に住んでた
もんだから、都心に近い彼女の住むアパート
から会社に向かう方が都合良かったんだ。
勿論彼女とも終電を気にせず遊べるしね。

そんな暮らしを数ヶ月続けてるとだな、
いっそ最早同棲した方がよくね？ってなるのは
必然的なことなんだ。でまぁ僕らは物件探しを
始めたわけだけれど、わりかし綺麗で安価な
アパートを運良く見つけてね。2LDKで9万円
だったかな。駅からは随分と遠かったけれど、
バスの便も良かったし、自転車も買うことに
したんでね、その部屋に決めたんだ。

そいでその女の子としばらく暮らしてたわけなん
だけれど、お察しの通り別れてしまってね、2年と
経たずに。僕はいつもこんな感じなんだ。だいたい
1年くらいで別れるってのを繰り返してるんで、
これでも長かった方なんだぜ？

さてそうなるとだな、同棲中は折半でひとり
4万5,000円だった家賃も、ひとりで9万円払わなく
ちゃあいけなくなる。収入が少なかった僕には到底
無理な話だったので、選択肢はひとつ、これしか
なかったんだ。

引っ越し代を借金しよう！

まぁ家賃9万5,000円払いつつ引っ越し資金を
貯めてくってのが正攻法なのはわかるけどさ、
バイトだと夏休みやら正月やらはもろにダメージ
くらうわけだろう？いくら1,100円という当時
としては割と高時給だったといってもだね、
貯金なんてそんなに出来やしないんだ。

それでも多い時は25万円くらい入ってたんだぜ？
皮肉な事に今より随分といい給料をもらってた
ってわけ！当然、税金やら年金やらはバックレ
てたわけだけれどさ。

で結局僕は仕方なく借りたんだよ。それしか方法
ないだろう？きっと君でもそうするさ。賭けても
いいね。だからこの選択は間違ってはいなかった
とは今でも僕は思ってるんだ。選択自体は
間違っていなかった、ってね。

借りた金額は正確には覚えていないんだけどさ、
当時の僕はきっと多く見積もってたと思うんだ。
敷金礼金が各2ヶ月、前家賃が1ヶ月で、
合わせて5ヶ月分。それに引っ越し配送代や、
彼女が持ってった物なんかをあらためて買わなく
ちゃならないし、まぁ新居は何かと物入りだしね。
だから40万円は借りたはずなんだ。

家賃6万円程度の物件を探してたんで6ヶ月分
くらいは借りたことになるね。まぁでもどうせ
リボ払いだったもんで、30万借りようが40万
借りようが、月々の返済額はあんまし変わん
ないんだ。

で、その沼にまんまとハマっちゃったわけ
なんだな僕ときたらさ。全くやんなっちゃうよ。
こっから20年以上も、くそっ！借金地獄が
続いちゃうんだからさ！